2019年11月20日働き方改革
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健康経営とは?メリットや取り組み事例、ウェルビーイングの意味を含め解説‼︎

健康経営とは
あなたの会社では「働き方改革」をどのように位置付けていますか?
生産性の向上、組織活性化、これらは企業視点での働き方改革と言えます。すでに多くの企業で様々な取り組みが始まっていますが、働き方改革の本質は「従業員満足度の向上」です。つまり、多様な従業員のニーズに応えることが結果的に企業の生産性を高め、持続的な利益拡大につながるのです。
企業の持続的な成長に欠かせない従業員満足度とは?考え方や事例を紹介

そこで現在注目されているのが、経済産業省も進める従業員の健康に配慮した「健康経営」です。今回は健康経営が求められる背景や取り組み事例、健康経営を発展させる概念である「ウェルビーイング」の意味についても解説します。

健康経営とは?推進背景を紹介

健康経営の推進背景
健康経営とは、その名の通り従業員の「健康」を企業が管理・保持する経営戦略の1つです。企業が健康経営を進めるための取り組みは健康投資と呼ばれ、経営理念に基づいて従業員の健康を管理・保持します。従業員の健康が増進されれば、生産性の向上やモチベーションの維持につながり、結果的に企業の業績向上や組織活性化が期待されるのです。

では、健康経営の推進にはどのような背景があるのでしょうか。

超高齢化社会

昨今、少子高齢化による生産年齢人口の減少から、各業界で労働力の低下が叫ばれています。そのため、企業は限られた人材で高い生産性を産まなければなりません。
しかし労働生産性の向上には、単なる従業員任意の制度や取り組みの導入による柔軟な働き方の促進に限らず、従業員一人ひとりを対象にした全社的な支援が必要になります。健康経営は従業員の健康を心身ともに支援し、生産性の高い人材の土台作りとなる経営戦略として注目されているのです。

労働市場との関係性

就職先に望む勤務条件
経済産業省「健康経営の推進について」を基に図を作成)
平成28年、経済産業省が就活生および就職を控えた学生をもつ親に対し「就職先に望む勤務条件についてのアンケート」を行いました。その結果、上図のように「従業員の健康や働き方への配慮」が就活生・親双方で特に高い回答率となりました。この結果から、健康管理や保持といった従業員への配慮が企業の求職率を高め、企業ブランディングの構築から離職率の低下、人材確保につながると言えます。

健康経営を進める「ウェルビーイング」とは

ウェルビーイングとは
健康経営が求められるようになった今、従業員の健康管理への重要度を後押しするような概念「ウェルビーイング」にも注目が集まっています。
ウェルビーイング(Well-being)とは、日本語で「幸福・健康」を意味します。1946年の世界保健機関(WHO)憲章では、この健康について「健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいいます」と定義されています。ウェルビーイングは、もともと社会福祉の分野で利用されていた言葉ですが、健康経営の推進や多種多様な人材の活躍が社会的に求められるようになったことから、現在は多くのビジネスシーンでも使用されるようになりました。
健康経営は従業員の健康を身体的に支援すると認識されている方も少なくないでしょう。しかし「健康の定義」から分かる通り、本当の意味での健康とは、精神的・社会的にも満たされている状態を指します。そのため企業は従業員のメンタル面への配慮によるモチベーションの向上(精神的)や、正当な評価による昇進・昇給(社会的)も意識する必要があるのです。また「幸福」を構築する要素には社外の私的環境も含まれるため、従業員のライフワークバランスの実現が求められます。これら対象となる健康の領域が広義なため、ウェルビーイングは健康経営を発展させた概念として位置付けられることが多いです。健康経営を導入する際には、ウェルビーイングの概念を取り入れた施策や制度を検討するといいでしょう。

健康経営のメリット

健康経営のメリット
従業員の健康状態を保つことで、企業にはどのようなメリットがあるのかみていきましょう。

医療費の削減

医療給付費の見通し
厚生労働省「社会保障給付費の推移」を基に図を作成)
厚生労働省が発表した「社会保障給付費の推移」によれば、2015年の医療給付費は37.7兆円であり、2025年には約54.0兆円に達すると見込まれています。今後さらなる増加が予想される医療給付費は、企業が負担する医療費の拡大を意味します。健康経営による人材への投資が、従業員の健康を保ち、病気へのリスク予防や欠勤率の低下につながります。

生産性の向上と離職率の低下

企業の健康投資は医療費だけでなく、労働生産性に関わるアブセンティーズム(病欠)やプレゼンティーズム(体調不良によって最大限の生産性を発揮できない状態)への配慮も検討する必要があります。東京大学政策ビジョン研究センター健康経営研究ユニットの研究資料によれば、企業の健康に関する総コストのうち、労働生産性の損失は4分の3を占めると言われています。中でもプレゼンティーズムによるコスト割合は大きく、その要因としてはメンタルからくる呼吸疾患やうつ病があげられます。つまり企業は従業員のメンタル面への配慮が必要であり、そこに健康投資を行うことで、労働生産性の向上が期待されるのです。
メンタル面での支援が充実すれば、従業員満足度の向上にもつながります。社内の働き方や環境整備が従業員の「働きやすさ」を支え、定着率の向上と離職率の低下が期待できるでしょう。

健康経営の取り組み事例

事例
経済産業省と東京証券取引所では、健康経営促進のために「健康経営銘柄」を選定しています。ここでは、2019年に実施された健康経営銘柄において、見事選定された企業の取り組みをいくつか紹介します。

味の素株式会社:「セルフ・ケア」を徹底サポート

味の素株式会社では、2018年5月に「味の素グループ健康宣言」を策定しており、「セルフ・ケア」を取り組みの核とした健康経営を行なっています。全従業員を対象にした、産業医・保健スタッフによる個別面談を毎年行うことで、従業員一人ひとりに合わせたセルフ・ケア指導、セルフ・ケア度の可視化・定量化を進めています。取り組みの結果、2017年度の売上高は前年比から5%増加、総実労働時間は74時間減を達成したのです。

キャノン株式会社:「健康第一主義」の理念

キャノン株式会社では「健康第一主義」を理念に掲げでおり、従業員が安心して働ける環境、従業員自身も健康状態を自覚できるような企業文化が根付いています。睡眠の重要性に着目しており、2007年からは「睡眠キャンペーン」を展開。短時間睡眠が原因のメタボ発症率が高いことから、食堂や売店の環境整備を進め、「睡眠による休養をとれている」社員が10%増加、メタボ該当者の割合が30%減少しました。

健康経営を進めるポイント

健康経営のメリットや各社の取り組みについて、理解していただけたかと思います。しかし実際に健康経営を一つの経営戦略として導入するには、経営陣による意思決定や全社的な健康への意識浸透が求められます。まずは従業員自身が健康を意識するよう企業が後押しし、長期的な目線での労働環境改善を目指しましょう。

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