エンプロイーエクスペリエンス(EX/従業員体験)とは?意味やメリットを解説

ex01_w1000
働き方改革が推進されるなか、日本企業では今、「エンプロイーエクスペリエンス(EX)」という考え方に注目が集まっています。「従業員体験」と訳されるエンプロイーエクスペリエンスとは、一体どんな概念なのでしょうか。また、企業がエンプロイーエクスペリエンスの向上に取り組むことでどんなメリットがあるのでしょうか。

今回は、成功事例も交えながら、エンプロイーエクスペリエンスの意味やメリットについて解説していきます。

エンプロイーエクスペリエンス(EX)とは?

ex02_w1000

エンプロイーエクスペリエンス(EX/Employee Experience)とは、働くことを通して従業員が得るあらゆる経験価値のことを言い、日本語では「従業員体験」と訳されます。

エンプロイーエクスペリエンスの要素となるもの

エンプロイーエクスペリエンスは、従業員と企業のあらゆる接点において生じうるものです。入社前の面接から入社時の研修、日々の業務、異動、退職まで、従業員がその企業で働くすべてのプロセスでエンプロイーエクスペリエンスが発生しています。

仕事から得られる充実感や、上司・同僚からの承認・評価、スキルアップや成長などの「働きがい」もエンプロイーエクスペリエンスですし、職場の環境や企業文化、労働時間、報酬や福利厚生などの待遇、ワークライフバランスの充実などの「働きやすさ」もエンプロイーエクスペリエンスとなります。

エンプロイーエクスペリエンスが求められている背景とメリット

ex03_w1000

なぜ今、日本企業でエンプロイーエクスペリエンスが注目されているのでしょうか? それを知ることで、エンプロイーエクスペリエンスの向上に取り組む意義も見えてきます。

人材不足の打開策として

日本企業が抱える人材不足の問題はますます深刻化しています。終身雇用ははるか昔に崩壊し、転職にネガティブなイメージを持たない「ミレニアル世代」は、転職を視野に入れながら働く人も少なくありません。企業にとっては、一人の従業員を獲得するにも苦労しますし、従業員に長く働いてもらうのも大変な時代になっています。

このような状況を打開できる可能性があるのが、エンプロイーエクスペリエンスです。エンプロイーエクスペリエンスを高めることは、働きがい・働きやすさを醸成することに他ならず、それは従業員の定着率向上、離職率低下へとつながっていきます。また、エンプロイーエクスペリエンス向上に努める企業は外からも魅力的に映るので、採用活動にも有利に働きます。

働き方改革の一環として

働き方改革が推進する一方で、その効果を実感できていない企業も少なくありません。働き方改革では生産性向上が大きな命題とされていますが、生産性向上に寄与する可能性があるのが、エンプロイーエクスペリエンスです。

エンプロイーエクスペリエンスが高い会社では、従業員が日々健康で、高いモチベーションを持って仕事に取り組んでいます。それは、組織力を向上させ、間違いなく生産性を引き上げる要因になってくれます。

収益向上のために

マーケティングの世界で「カスタマーエクスペリエンス(CX)」という用語があります。カスタマーエクスペリエンスは日本語で「顧客体験」と呼ばれるもので、顧客が商品・サービスを通してどんな体験をするのかを示す概念です。良質なカスタマーエクスペリエンスを提供することで顧客満足度が高まり収益がアップしていく、というのはイメージしやすいと思います。

これは、エンプロイーエクスペリエンスにも同様のことが言えます。エンプロイーエクスペリエンスの根底には、「顧客に満足してもらえる商品・サービスを提供するには、従業員が健康で生き生きと働いていることが不可欠である」という考え方があります。

→ 質の高いエンプロイーエクスペリエンスを提供する
→ 従業員満足度や従業員エンゲージメントが高まる
→ 必然的に商品力・サービス力が高まる
→ 顧客に還元される(=カスタマーエクスペリエンスの向上)

競合がひしめき合い、差別化が難しくなる昨今、エンプロイーエクスペリエンスの向上がカスタマーエクスペリエンスの向上につながることに多くの企業が気づき始めています。

エンプロイーエクスペリエンス向上に成功している企業事例

ex04_w1000

エンプロイーエクスペリエンスを向上させるために、これをしておけばOKという特効薬はありません。成功している企業からヒントを得て、自社に合わせた施策を取り入れるのが近道になるでしょう。

企業事例①Airbnb(エアビーアンドビー)

Airbnbは、世界規模の民泊仲介サイトを運営するユニコーン企業。企業のレビューサイトであるGlassdoor.comにおいて「Best Place to Work」を受賞するなど、従業員が働きやすい会社として有名です。

通常、エンプロイーエクスペリエンスの舵を取るのは人事部ですが、同社は「Employee Experience」という専門部署を設けて、エンプロイーエクスペリエンスの向上に取り組んでいます。この部署では、採用制度や人事制度の構築だけでなく、従業員のキャリア開発、オフィス環境やデジタル環境、マネジメントルールなどを整えています。また、成果各国の料理を提供する社員食堂も有名。「Global Head of Food」という社員食堂の総責任者を置き、戦略的に社食を運営しています。

企業事例②Starbucks(スターバックス)

スターバックスは、世界90ヶ国以上で展開するコーヒーチェーン。同社は、従業員に充実した学びの機会を提供することでエンプロイーエクスペリエンスの向上に取り組んでいます。

大学の学費支給に加え、アリゾナ州立大学と提携して80以上の授業のオンライン受講をサポート。日本においても通信教育の補助をおこない、従業員のスキル開発を支援しています。エンプロイーエクスペリエンスを高めると同時に、従業員の能力を伸ばすことにも成功している事例だと言えるでしょう。

エンプロイーエクスペリエンスの向上で、もっと魅力的な会社へ

エンプロイーエクスペリエンスを高めることで従業員の幸福度が向上し、一人ひとりが個性や能力を最大限に発揮して働けるようになります。それが結果として、会社や顧客に還元されていくのです。

労働力不足が叫ばれるなか、企業が優秀な人材を確保し、増収増益を図っていくには、エンプロイーエクスペリエンス向上への取り組みは不可欠なものになっていくでしょう。