2019年9月25日働き方改革
関連キーワード:

ダイバーシティ経営とは?経済産業省の推進背景や事例を紹介‼︎

ダイバーシティ経営
少子高齢化による人口減少の影響から、各業界では労働人口不足が課題となっています。そのため従業員一人当たりの生産性向上を目的に、デジタル技術を導入する企業は少なくないでしょう。しかし他社との差別化を図るには、機械では代替できない、ユニークで革新的な「ヒト」のアイデアが必要です。そこで注目されているのが「ダイバーシティ」という概念。経済産業省が推進することでも注目を浴びた、ダイバーシティ経営について解説します。

ダイバーシティ経営とは

ダイバーシティ経営は、新たな価値創造のために多様な人材を集め、能力を最大限に活かす人材活用戦略を指します。ダイバーシティは「多様性」を意味しますが、ダイバーシティ経営における多様性とは人種・性別・年齢・身体障害・宗教・価値観・職歴などが含まれます。少子高齢化の影響で今後さらに労働人口が減少するとなれば、企業は能力や経験などの「目には見えない価値」を持つ多様な人材を受け入れ、経営力を上げる必要があるのです。

経済産業省がダイバーシティ経営を推進する背景

経済産業省の推進理由
労働人口の減少はもちろん、経済産業省はグローバル化に伴った市場環境・顧客ニーズの変化を危惧しています。グローバル化による影響は経営の不確実性を増加させ、利害関係者の多様化をもたらすため、経済産業省では企業に以下のような対応を求めています。

●多様化する顧客ニーズを的確に捉え、新たな収益機会を取り込むためのイノベーションを生み出すこと。
●急激な環境変化に柔軟かつ能動的に対応し、リスクをビジネス上の機会として捉え機動的に対処すること。
●国内外の投資家からも、「持続可能性」(サステナビリティ)のある投資先として信頼されることなど。

 
経済産業省:「価値創造のためのダイバーシティー経営に向けて」より引用)

これらの要請に対応する経営戦略として、経済産業省ではダイバーシティ経営を、今後企業が自社の競争力を高めるための「標準装備」と位置づけ推進しています。
ダイバーシティ経営の推進を経営成果に結びつけている企業の先進的な取り組みを紹介・表彰する「ダイバーシティ経営企業100選」事業。女性活躍推進に優れた企業を「なでしこ銘柄」として選定し発表するなど、各企業の先進事例を発信することで、ダイバーシティ経営の浸透を図っています。

ダイバーシティ経営のメリット

ダイバーシティのメリット

上述した、今後企業に求められる対応や課題を踏まえ、ダイバーシティ経営の導入で企業が得られるメリットを紹介します。

人材の確保と多様なイノベーションの創出

四大経営資源(ヒト・カネ・モノ・情報)の中でも、ヒトは最も重要な経営資源です。ダイバーシティ経営の導入で採用の母集団が増えるのはもちろん、今までにない多様な価値観をもつ人材の確保が期待できます。多様な人材が持つアイデアや発想、スキルが統合されコミュニケーションも活性化されれば、新たなイノベーションの創出につながり、多様化する顧客ニーズのビジネスチャンスを逃すことなく獲得できるでしょう。

働き方改革の推進

多様な人材の確保は、「多様な働き方」の採用が欠かせません。女性社員・外国人が活躍できる環境づくりが、子育てや介護を支援するライフワークバランスの実現、テレワークや時短勤務の検討材料となり、働き方改革を後押しするのです。多様な働き方の実現は、従業員満足度の向上、離職率の低下につながり、企業は優秀な人材の定着が可能となります。労働力の長期的な確保、企業価値の向上が見込めるのです。

ダイバーシティ経営の最新事例

ダイバーシティ 事例
ここでは、上記で紹介した経済産業省による平成30年度「新・ダイバーシティ経営企業100選」にて見事受賞した企業の中から、2社の取り組みを紹介します。

創造性・革新性に向けた風土改革:日本ユニシス株式会社

【背景】
コンピューターシステム関連サービスを提供する日本ユニシス株式会社は、複雑化する顧客ニーズやグローバル企業の参入を背景に、従来の「Sler(システムインテグレーター)」から「社会課題を解決する企業」への変革を目指していました。そのために「安定性・確実性」を重視していた企業風土から、多様な企業や組織と連携しイノベーションを生み出すような「創造性・革新性」を持つ企業への変革に向けた取り組みを始めたのです。

【取組内容】
・多様な視点を取り入れるために、経営層の多様化や組織間の兼務・ローテーションによる組織改革を実施。
・テレワークや残業ゼロを目指す「残業メリハリ活動」など、生産性向上への取り組みや、創造性・革新性をリードする人材の育成を目的とした「変革リーダーシッププログラム」を実施。

【成果】
風土改革に向けた取り組みによって、2015年〜2017年で生産性が3割以上向上し、平均残業時間の削減や年次有給休暇の取得にもつながっています。変革リーダーシッププログラムの成果として、社員意識調査エンゲージメントスコアが向上し、イノベーションを意識して行動する社員の割合が半数以上に上昇。これらの成果から、新事業領域の売上は2015年と比較して170%と大幅に向上するなど、業績向上にも寄与しているようです。

参考サイト:新・ダイバーシティ経営企業100選

キャリアを諦めずに働ける環境へ:アデコ株式会社

【背景】
人材サービスを提供するアデコ株式会社は、労働人口減少等による同業他社との差別化を図り、派遣社員のキャリア開発意識を高めることが課題でした。その中で「キャリア開発が当たりまえの世の中をつくる」というビジョンを掲げ、柔軟な働き方を実現する制度や、キャリア開発の支援制度を進めました。

【取組内容】
・ビジョン推進のために、経営トップと社員が直接対話。
・多様な人材が、自らのキャリアを諦めないようにフリーアドレスやフレックス制度などの多様な働き方を支援する環境づくり。
・登録派遣社員のキャリア支援のために、職務レベルを一覧化されたツール「キャリアマップ」の活用や、個人の志向をより深く理解するための専属担当者「キャリアコーチ」を導入。

【成果】
社員が自身のキャリアと真剣に向き合い、柔軟な働き方も可能になったことから、働きがいを感じている社員の割合が2013年の24%から、2018年には60%に到達しました。派遣登録社員においても、キャリアコーチが担当する方の、契約終了後1ヶ月以内のサービス再利用率の平均が2016年の結果よりも20ポイント以上向上した46.6%に。業界内にこれまでない新サービス「ハケン2.5」の開始など、イノベーションの創出を実現しています。

参考サイト:新・ダイバーシティ経営企業100選

ダイバーシティ経営には従業員の理解が欠かせない

ダイバーシティ経営は、目に見える具体的な「取り組み」ではなく、従業員の理解が必要な「概念」です。まずは事例にもあるように、ダイバーシティ経営を従業員が受け入れられるような風土づくりや、ビジョンの浸透が必要です。
また多様な人材の確保は、それぞれの価値観を認めることでもあるため、明確な評価制度の構築や人事制度を整備し、「全社的」な実行体制で進めましょう。

カテゴリー:働き方改革
関連キーワード: