2022年10月19日お役立ち情報
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契約書等文書のスキャナ保存の扱いとは?改正電子帳簿保存法の対応ポイント

2022年1月に施行された電子帳簿保存法の改正により、契約書等文書のスキャナ保存の要件が緩和されました。電子保存にまつわる企業の負担が軽減され導入しやすくなったものの、適用するためには各種要件を把握する必要があります。そこで本記事では、スキャナ保存に関する電子帳簿保存法の対応ポイントについて解説します。

2022年1月電子帳簿保存法改正について

デジタル化や経理の電子化による生産性向上のため、2022年1月に電子帳簿保存法の改正が行われました。電子帳簿保存法は、1998年の施行以来定期的な改正が重ねられてきましたが、要件が厳格だったため適用する企業が多くありませんでした。

2022年1月の改正では、国税関係帳簿書類の特例の要件緩和、そしてスキャナ保存制度の要件緩和など、導入へのハードルが大幅に下がったことから、ペーパーレス化に着手する企業が増えています。

スキャナ保存制度

電子帳簿保存法において、電子データの保存方法は「電子帳簿等保存」「スキャナ保存」「電子取引データ保存」の3種類に区分されます。そのうちの一つであるスキャナ保存は、紙で受信あるいは作成した書類をスキャンして、画像データとして保存する方法です。対象となるのは、取引相手から受け取った書類や自己が作成して取引相手に交付する書類の写し(例:契約書、見積書、注文書、納品書、請求書、領収書など)で、スマホやデジカメによる撮影データも含みます。適用には、以下のような要件を満たす必要があります。

<要件の例>

  • ・解像度が200dpi以上(A4サイズで約387万画素相当)による読み取りができること
  • ・色調:カラー画像(赤・緑・青それぞれ256階調(約1677万色)以上)による読み取りができること(※ただし、資金や物の流れに直結しない「一般書類」を保存する場合には、グレースケール画像でも可)

(※参考:国税庁「はじめませんか、書類のスキャナ保存!」(令和3年11月)

2022年1月電子帳簿保存法改正におけるスキャナ保存変更点

本改正法にともなうスキャナ保存制度の主な変更点を、規制緩和・強化の観点からご紹介します。

規制緩和された点

・事前申請の廃止

これまで郵送等により紙で受け取った書類のスキャナ保存には管轄の税務署長へ事前申請が必要でしたが、改正法では不要となりました。任意のタイミングで適用を開始することが可能です。

・タイムスタンプ要件

スキャナ保存は、これまで受領者が「自署」したうえで「3営業日以内にタイムスタンプ付与」となっていましたが、今後は「自署不要」で「最長2か月とおおむね7営業日以内のタイムスタンプ付与」に緩和されました。また、システムが電子帳簿保存法に対応している場合、タイムスタンプも不要となっています。

・検索性の要件が3つに

保存の際に必要な検索項目が、取引年月日その他の日付、取引金額及び取引先に限定され、作業負担が軽減されました。

・適正事務処理要件(相互けん制、定期検査等)の廃止

これまでスキャナ保存においては、不正防止のため社内規程の整備や相互けん制、定期的な検査などが求められていましたが、改正法ではこれらが廃止となりました。また、2名以上で行っていた事務処理も実質1名で行うことが認められています。

・原本保存の不要

これまでは原本とスキャナ保存したデータが合致しているかを確認するため、原本書類の一時保管が義務付けられていました。しかし、改正後は一定要件の下で適切にスキャンが行われていれば、スキャン後に原本書類の廃棄が可能となっています。

規制強化となった点

一方で規制強化となったのは、スキャナ保存や電子データの改ざんなどで不正が発覚した際の罰則です。隠ぺい又は仮装により所得税・法人税又は消費税に係る修正申告又は更正があった場合、重加算税が10%加算されることになりました。

過去の重要書類もスキャナ保存が可能に

事前申請が不要となったことから、過去分の重要書類についても一定要件を満たせばスキャナ保存を行うことが認められました。なお、入力期間の制限はなく、数ヵ月間にわたってスキャナ保存の作業を行うことも可能とされています。

(※参考:国税庁「電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】」

スキャナ保存における課題点

このようにスキャナ保存の要件は緩和され、多くの企業で適用しやすくなっていますが、以下のような課題も残っています。

証拠としては弱い

前述の通り「一定要件の下スキャナ保存した書類は破棄しても良い」とされていますが、裁判などで法的証拠として提出する場合は、原本が必要になります。たとえ適切に改正電子帳簿保存法を遵守していたとしても、スキャナ保存したデータは民事訴訟法においてはただのコピー扱いとなってしまうのです。裁判所がスキャナ保存をしたデータを原本と同等の証拠として扱うかについては不明なため、証拠としては弱いと言わざるを得ません。

印紙税法上は原本が必要

紙で契約書を締結した場合、収入印紙を貼付・消印することで印紙税を納付する義務が発生します。しかし、その契約書原本をスキャナ保存しても、そのデータはコピー扱いとなり、印紙税法上は納税義務を果たしていないことになってしまいます。そのため、スキャナ保存後も原本の保存が必要となっています。

手間がかかる

スキャナ保存は、電子化といえども人の手で行う必要があります。特に契約書の取り扱いには細心の注意を払う必要があり、作業にはまとまった時間を要します。スキャナ保存を進めたくても、人件費や作業量を考慮してなかなか一歩を踏み出せずにいる企業は少なくないでしょう。

昨今では、こうした課題を包括的に解決するために、電子契約の導入に踏み切るケースも増えてきています。

スキャナ保存制度の適用には要件把握が重要

電子帳簿保存法は定期的に改正が行われているため、スキャナ保存においても最新の要件を確認して、適切な対応を講じる必要があります。まずは要件を十分に理解し、メリットや課題点を把握したうえで、適用するかどうかを決定しましょう。また、当初から電子化にしておくのが効率的だという観点もあります。

いずれにしても、社内での判断が難しい場合や契約書等文書の電子化全般についてお困りの担当者は、正しい判断を下すためにも専門のサービスへ相談すると良いでしょう。株式会社日本パープルの電子化サービスでは、上記のほかスキャナ保存作業代行も含むあらゆる支援を行っており、おすすめのサービスと言えます。

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