書類(法定保存文書)の保存期間!保管・保存が必要な理由や方法も解説
企業では、帳簿や契約書、請求書など、法律で一定期間の保存が義務付けられている「法定保存文書」が数多く存在します。しかし、保存期間は書類の種類によって異なり、関連する法律も多岐にわたるため、管理が非常に複雑です。どの書類を何年保存すべきか迷うことも多く、文書管理が大きな負担になっている企業も少なくありません。
そこで本記事では、書類(法定保存文書)の保存期間一覧をわかりやすく紹介するとともに、保存・保管が必要な理由や適切な管理方法についても解説します。効率的な文書管理の参考にぜひお役立てください。
書類(法定保存文書)の保存が必要な理由
企業が書類を一定期間保存する必要があるのには、大きく分けて3つの理由があります。
まず1つ目は、法律で義務づけられていることです。帳簿や契約書などの各種書類は、法人税法や会社法、労働基準法などによって保存期間が定められています。たとえば、法人税法では帳簿書類を原則7年間保存するように規定されています。こうした規定に違反すると、税務調査で指摘を受けたり、罰則を科される可能性もあります。法令遵守(コンプライアンス)の観点からも、正しく書類を保管することは企業にとって不可欠です。
2つ目の理由は、税務調査や監査への対応です。税務署の調査や監査法人によるチェックが入った際には、過去の会計帳簿や契約書などを提示する必要があります。書類が適切に保存されていなければ、取引の正当性を証明できず、不利な判断を下されることにもつながりかねません。スムーズな対応のためにも、必要なときにすぐ取り出せる状態でしっかりと保管しておくことが重要です。
そして3つ目は、トラブルや訴訟への備えとしてのリスク管理です。万が一、取引先や関係者との間でトラブルが発生した場合、過去の契約書ややり取りを記録した書類が重要な証拠になります。書類が残っていないと、自社の主張を裏付けることができません。
特に重要な取引に関する書類は、法定の保存期間を過ぎても、社内規定で保存を延長するケースもあります。
永久保存の書類
永久保存の対象となる書類は以下の通りです。
総務・庶務
会社の基本的な権利や存在を証明する書類は、法的にも永久保存が必要です。特に登記関係や規程類は、企業活動の根幹を支えるため、破棄してはいけません。
書類名 | 内容 | 保存理由 |
---|---|---|
定款 | 会社の基本規則 | 会社存続中は必須 |
株主総会議事録 | 株主総会での決議内容 | 会社の意思決定の証拠 |
取締役会議事録 | 取締役会の議事内容 | 経営判断の根拠 |
人事・労務
従業員に関わる権利義務の記録も、本人の退職後も長期間必要とされます。特に年金や雇用契約に関する資料は、法的トラブル防止のために永久保存が望ましいです。
書類名 | 内容 | 保存理由 |
---|---|---|
労働契約書 | 雇用条件の確認 | 将来の紛争予防 |
年金関係書類 | 加入・記録内容 | 老齢年金受給の根拠 |
退職金規程 | 支給条件 | 従業員の権利保護 |
保存期間が30年間の書類一覧
この保存期間の対象となる書類は以下の通りです。
労働安全衛生
労災や健康障害が後年に発覚する可能性を考慮し、特定の記録は30年保存が義務付けられています。
書類名 | 内容 | 保存理由 |
---|---|---|
作業環境測定結果(特定化学物質等) | 発がん性物質や有害化学物質の濃度測定結果 | 職業病発生時の証拠として30年間保存が義務 |
石綿使用記録 | アスベスト含有作業の履歴 | 健康被害発生時の証拠として必要 |
健康診断個人票(長期管理対象) | 定期健康診断や特殊健康診断の結果の一部 | 長期的な健康被害確認のため |
保存期間が10年間の書類一覧
この保存期間の対象となる書類は以下の通りです。
経理・税務
法人税法・商法により、会計帳簿や証憑書類は10年間の保存義務があります。
書類名 | 内容 | 保存理由 |
---|---|---|
法人税申告書 | 法人税の申告内容 | 税務調査対応 |
決算書類 | 貸借対照表・損益計算書 | 経営状況の把握 |
勘定帳簿 | 仕訳帳・総勘定元帳 | 法人税法で保存義務 |
総務・庶務
契約関係や重要な社内規程は、10年間を目安に保存します。
書類名 | 内容 | 保存理由 |
---|---|---|
契約書 | 業務委託・取引関係 | 紛争防止のために必要 |
社内規程(改訂版) | 就業規則などの改訂記録 | 規程変更の経緯を示すため |
保存期間が7年間の書類一覧
この保存期間の対象となる書類は以下の通りです。
労働安全衛生
労災補償や安全対策の検証のため、一部の記録は7年間保存が必要です。
書類名 | 内容 | 保存理由 |
---|---|---|
労災補償関係書類 | 労災発生時の報告や記録 | 補償請求や行政監査への対応 |
経理・税務
税務調査に備え、7年間の保存が義務付けられている証憑があります。
書類名 | 内容 | 保存理由 |
---|---|---|
請求書・領収書 | 取引証憑 | 税務調査に必要 |
納税証明関連書類 | 税務署への納税証拠 | 過去の納税確認に必要 |
保存期間が5年間の書類一覧
この保存期間の対象となる書類は以下の通りです。
労働安全衛生
労災防止に関する各種記録(安全衛生教育記録、健康診断結果の一部など)は、5年間の保存が求められます。
書類名 | 内容 | 保存理由 |
---|---|---|
安全衛生委員会議事録 | 安全衛生に関する協議内容 | 労働安全衛生法に基づく保存 |
安全衛生教育記録 | 新入社員教育や定期的な安全衛生教育の実施記録 | 労働安全衛生法に基づき教育の実施を証明するため |
健康診断個人票(一定の記録) | 定期健康診断や雇入時健診の結果の一部 | 労働者の健康管理に必要 |
経理・税務
比較的短期での確認が必要な経理書類が含まれます。
書類名 | 内容 | 保存理由 |
---|---|---|
給与台帳 | 従業員ごとの給与支払記録 | 所得税・住民税関連で必要 |
賃金台帳 | 給与支払いの詳細記録(法定帳簿) | 労基署対応のため |
源泉徴収簿 | 源泉徴収税額の記録 | 税務署の調査に備えるため |
総務・庶務
行政への届出関係の一部は5年間の保存対象です。
書類名 | 内容 | 保存理由 |
---|
人事・労務
従業員管理に関連する書類の一部は5年間の保存が求められます。
労働条件通知書 | 労働契約の内容を明示 | 労働基準法に基づき明示義務あり |
身元保証書 | 従業員の身元保証契約 | トラブル発生時の責任範囲確認 |
出勤簿 | 従業員の勤務記録 | 労務管理・労基署対応 |
社会保険関連書類 | 加入・喪失・変更届 | 年金事務所や監査対応のため |
雇用保険関連書類 | 資格取得・喪失・変更届 | 雇用保険法対応のため |
育児・介護休業取得記録 | 休業開始・終了・給付記録 | 労務管理と法令対応 |
労働時間管理表 / タイムカード原本 | 勤務時間や残業記録 | 労基署対応、出勤簿補完 |
保存期間が3年間の書類一覧
この保存期間の対象となる書類は以下の通りです。
労働安全衛生
日常的な安全衛生管理や報告に関する書類が含まれます。
書類名 | 内容 | 保存理由 |
---|---|---|
安全衛生巡視記録 | 職場巡視の結果や指摘事項 | 短期的な安全管理の確認用 |
安全点検表 | 設備や機械の定期点検記録 | 日常管理状況の証拠 |
総務・庶務
短期の事務管理で必要な書類が含まれます。
書類名 | 内容 | 保存理由 |
---|---|---|
出張報告書 | 従業員の出張記録 | 経費精算や業務報告に必要 |
経費精算書 | 日常経費の精算内容 | 内部監査や確認用 |
人事・労務
短期間での管理・確認が必要な書類が含まれます。
書類名 | 内容 | 保存理由 |
---|---|---|
休暇届 | 従業員の休暇申請記録 | 勤務管理や確認用 |
時間外勤務申請書 | 残業申請の記録 | 労務管理の確認用 |
保存期間が1〜2年間の書類一覧
この保存期間の対象となる書類は以下の通りです。
総務・庶務
日常業務の短期管理に必要な書類が含まれます。
書類名 | 内容 | 保存理由 |
---|---|---|
備品管理台帳 | 備品の購入・貸出・返却記録 | 日常管理や確認用 |
郵便物受領記録 | 重要郵便や宅配物の受領内容 | 管理証跡として必要 |
人事・労務
短期間で確認が必要な従業員関連の書類が含まれます。
書類名 | 保存理由・備考 |
---|---|
雇用保険関係届出書類 | 手続き後2年保存が義務づけられている書類もあり |
健康保険資格喪失届 | 退職等に伴う手続き記録。2年保存 |
保存期間を定められていない書類
保存期間を明確に定められていない書類は、業務上必要な期間を基準に社内規程で管理します。
書類名 | 内容 | 保存理由 |
---|---|---|
企画書・提案書 | 社内企画・提案の内容 | 業務上必要な期間だけ保管 |
参考資料・調査資料 | 市場調査や分析資料 | 必要に応じて参照 |
保存期間を決める際の基準
保存期間を定められていない書類は、以下の基準を参考にしてください。
- 業務利用の頻度・重要度: 日常的に参照される書類は長めに保管し、単発使用の書類は短期で破棄。
- 法的リスクや契約リスク: 契約関連は契約期間+紛争可能性期間を目安に保管。
- 会計・監査・税務上の参照可能性: 必要な期間、監査や税務調査で参照できるように保管。
- 社内規程・ガイドラインとの整合性: 社内基準に従い、必要に応じて部署ごとに例外を設定。
書類を適切に保存・管理する方法
書類の保存や管理は、単にファイルを置くだけでなく、法令遵守や業務効率、リスク管理を意識して体系的に行うことが重要です。以下の手順を参考に、社内ルールを整備しましょう。
自社独自の保存基準を決める
まず、自社の業務内容やリスクに応じて、保存期間や管理ルールを策定します。法律や規制で定められた保存期間を確認しつつ、業務上必要な参照期間や紛失・情報漏えいのリスクも考慮して定めましょう。
これらの基準を社内規程として文書化しておくことで、全社員が統一した判断で書類を扱うことができます。
基準に沿って書類を分類する
保存基準が決まったら、書類を種類別・部署別・保存期間別に分類します。 紙の書類はフォルダやキャビネット単位で分け、電子書類はフォルダ構成やタグ付けによって整理します。
保存期間ごとにラベルや色分けを行うと、必要な書類をすぐに見つけることができ、不要になった書類の廃棄も容易になります。
書類を保存する(社内倉庫・社外倉庫・電子化)
分類した書類は、安全で効率的な方法で保存します。日常的に参照する書類は社内倉庫で管理し、施錠やアクセス権限管理を徹底します。長期保存や災害対策としては社外倉庫が有効ですが、運搬や保管コストを考慮する必要があります。紙書類は電子化することで省スペース化や検索性の向上が可能ですが、バックアップやセキュリティ対策が欠かせません。
定期的に書類の点検や整理を行い、不要書類は適切に廃棄するルールを設けることで、管理負担を大幅に減らすことができます。
おすすめの書類保管サービス
本記事で紹介した契約書などの重要書類の保管は、企業として最低限取り組むべき管理業務の一つです。社内で定めた書類保存期間を過ぎたあとの廃棄においても、適切に管理することで文書の検索性やトレーサビリティが向上します。
一方で、該当書類が多いとその保管にはスペースを要します。そのため、社内で全てを管理するのではなく、専門の書類保管サービスを活用するのも有効な選択肢の一つです。その際は、セキュリティレベルが高いことを前提に、サービス内容を比較・検討しましょう。
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電子化を導入して法定保存文書をスマートに管理しよう
事業活動が続く限り、社内文書は日々増加していきます。これらの書類保存期間に沿った管理を効率化するためにも、保管にかかるスペースやコストを抑える「電子化」の導入が重要なカギとなります。ただし、電子化の進め方にはさまざまな方法があるため、自社に合った最適な導入方法を検討することが大切です。導入への不安や疑問がある場合、まずは文書管理の専門家へ相談してみることも一案です。
日本パープルは、電子化を含めた文書管理全般で豊富な実績を持つ企業です。これからの効率的な書類管理を検討する際には、ぜひ一度検討してみてはいかがでしょうか。