2023年12月6日お役立ち情報
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企業における防災備蓄を考える。オフィスで何を備えるべきか?

例年全国で大災害が頻発する中、万が一に備えて企業は従業員を守るための防災対策を行う必要があります。基本的な防災対策として防災備蓄品の準備が挙げられますが、どの程度必要なのかイメージすることは難しいのではないでしょうか。

そこで今回は、企業の防災備蓄についてその目的を再確認し、社内に備えておきたい備蓄品の選定ポイントと目安数量を解説します。

なぜ防災備蓄が必要か、再確認

地震大国と呼ばれ常に災害と隣り合わせの日本では、個人だけでなく法人においても防災対策が不可欠です。2011年に発生した東日本大震災では、首都圏において鉄道の多くが運行を停止し大規模な道路渋滞が発生するなど、多大な帰宅困難者が発生しました。

この事態を受けて東京都は2013年に「東京都帰宅困難者対策条例」を施行しました。災害発生時、公共交通機関の復旧の目途が立たないうちに帰宅困難者がむやみに一斉移動してしまうと、混乱や事故といった二次災害が発生するリスクが生じます。本条例ではそれらの被害を防ぐため、災害発生時は従業員を施設内待機させ、保護することを求めています。本条例は「努力義務」となっていますが、持続可能な事業の継続を目指す企業にとっては真摯に取り組むべき課題であり、また、東京都以外の企業にとっても有益な内容になっています。

※参考:東京都「東京都帰宅困難者対策条例」

そして、帰宅困難者が待機している間に必要となるのが水や食料といった防災備蓄です。災害時はライフラインが寸断してしまうことが多く、何日も外出できないケースを想定しておかなければなりません。社内の従業員を安全に守るためには、防災備蓄を確保しておきましょう。

防災備蓄選定のポイント

ここでは、一般的な防災備蓄の知識に加え、企業が考えておきたい選定ポイントを含めて解説します。

長期間必要な食料や水

備蓄品といえばまずペットボトルの水を思い浮かべる人が多いでしょう。水は飲料用としてはもちろん、水道が使用できない場合の衛生用として必要な場合があります。一般的なペットボトルの水は賞味期限が1〜2年ですが、5〜10年間長期保存が可能な防災用のものを準備しておくと良いでしょう。直射日光を避け、暗所で保管しておきます。

長期保存が可能な非常食には乾パンやアルファ米、缶詰などがあります。非常食はガスや電気が使えないケースを想定して、非加熱・調理不要の商品を選ぶことがポイントです。また、栄養が偏ると体調不良やストレスの増加が懸念されます。主食に加えて、タンパク質の多い肉・魚の缶詰やビタミン類や食物繊維を含む野菜ジュースなどを選ぶと良いでしょう。

余分に用意する

備蓄品は社内にいる正社員だけでなく、パートやアルバイト、そして派遣社員などの委託スタッフを含めた全従業員分を用意しておく必要があります。さらに、災害時に来客がいる可能性や地域住民を受け入れるケースを考慮すると、余分に用意しておくことが望ましいといえます。テレワークで従業員の出社人数が流動的な場合は、最大出社人数をもとに備蓄量を計算します。東京都の条例では10%を余分の目安としています。

食品ロスへの観点ももつ

一般家庭なら賞味期限の近くなった備蓄食料は家庭で消費することができますが、企業の場合はどうでしょうか。役目を終えた備蓄食料は廃棄となることが多いかもしれません。しかし昨今、食品ロスは社会的問題として大きな関心を集めており、企業はサステナブルな災害備蓄に取り組む姿勢が求められています。

一つには、「ローリングストック法」という考え方があります。これは、従来から消費・賞味期限や使用期限が古いものから定期的に消費し、新たに買い足して備蓄分を補充する方法です。普段からストックを循環させることで、備蓄品を使用しなかった場合も食品ロスにならずに済みます。ペットボトルの飲料などは、この方法で循環させやすいのではないでしょうか。

他に、役割を終えた備蓄食料はフードバンクへ寄付するという方法があります。フードバンクとは、子どもの貧困対策、生活困窮者支援など生活に困難を抱えている方々に対し食料・食事の支援を行っている団体のことです。フードバンクへの寄付は食品ロスの防止になるほか社会貢献にも繋がります。実際に政府主導で実施されているので、下記サイトを参考にしてください。

※参考:農林水産省「国の災害用備蓄食品の提供ポータルサイト」

具体的な備蓄品とその目安数量

「72時間の壁」という言葉をご存じでしょうか。これは、人命救助のタイムリミットのことで、被災して4日以降に生存率が著しく低下するという阪神大震災のデータから生まれた言葉です。

前述の東京都の条例や内閣府のガイドラインでは必要な備蓄量は「3日分」が目安となっています。なお、3日分はあくまで目安であり、それ以上を確保することは問題ありません。

※参考:内閣府「大規模地震の発生に伴う帰宅困難者対策のガイドライン」

東京都の条例を例に、具体的な備蓄品と数量を見ていきましょう。

<備蓄品目の例>

  • ・水:ペットボトル入り飲料水
  • ・主食:アルファ化米、クラッカー、乾パン、カップ麺
    ※水や食料の選択に当たっては、賞味期限に留意する必要がある。
  • ・毛布やそれに類する保温シート
  • ・簡易トイレ、衛生用品(トイレットペーパ等)
  • ・敷物(ビニールシート等)
  • ・携帯ラジオ、懐中電灯、乾電池
  • ・救急医療薬品類

<主な備蓄量の1人当たりの目安>

1人当たりの備蓄量の目安 1日分3日分
 水3リットル/人9リットル/人
主食 3食/人9食/人
毛布1枚/人1枚/人

企業は上記に加えて事業継続の要素を加味した備えを検討する必要があります。災害時の被害を最小限に抑えるため、そして被災後に少しでも早く事業を開始させるためには、BCP(事業継続計画)の策定が重要です。これから防災対策に着手する企業は、備蓄品の確保と合わせてBCPについても検討していきましょう。

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