ほとんどの社員が定時に帰る「ランクアップ」に学ぶ、女性が働きやすい職場を作るためのヒント

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「輝く女性の輪を社会に広げます」

株式会社ランクアップ代表取締役の岩崎裕美子さんは、起業するにあたり女性の働きやすさを企業理念に掲げ、数多くの結婚・出産後もママ社員がイキイキと働ける制度を導入。冒頭の企業理念を実現するカルチャーを育んできました。

今回は、ランクアップの取り組む様々な施策の中でも特に「女性が働きやすい職場」を実現するための仕組みについて、岩崎社長と同社人事部・瀧澤朋美さんにお話を伺いました。

株式会社ランクアップってどんな会社?

「効果が実感できる製品・サービスによって女性の悩みを解決し、輝く女性を増やします」をミッションとする株式会社ランクアップは、2018年に累計販売本数1000万本を突破した「ホットクレンジングゲル」などのヒット商品をはじめ、MANARA(マナラ)化粧品を展開しています。

また社員51名のうち47名が女性で、うち28名がワーキングマザーとのこと(2018年12月時点)。まさに女性が活躍している企業であることも、ランクアップの大きな特徴です。

さらに売上のほうも好調で、残業は少なく、17時には退社する社員が多いにも関わらず、13年連続増収を記録。2017年度は、売上103.5億円を達成しています。

創業以来、こうした最小限の労働時間の中で着実な成長を積み重ねながら女性が働きやすい環境はいかにして実現されているのでしょうか? 同社が取り組む施策について見ていくことにしましょう。

ランクアップが進める、女性のための働き方改革

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岩崎さんによれば、女性が働きやすい勤務体系を構築するために、以下の4つの方法を実践しているといいます。

①「業務棚卸」で社員のタスクを見える化

残業なしで生産性を高めるには、「業務棚卸」が効果を発揮。業務棚卸とは、「業務棚卸表」を使って自分がどの業務にどのくらいの時間が掛かっているか可視化するものです。実際の業務棚卸表は、以下の記事で紹介しています。

参考記事:残業ゼロで17時帰り!?女性が働きやすい環境をつくった、株式会社ランクアップを訪問

②社内資料はWord1枚

社内資料は、Excelの色付けやPowerPointの装飾など資料の作り込みを禁止。それは「社内資料は内容が分かれば十分」という考えから導入されています。実際、社内においてはどのような資料もWord1枚でOKだそうです。

③メールで「お疲れ様です。」は禁止

ランクアップでは、社内メールでは「お疲れ様です。」の一文を禁止。メールを入力する人の時間と、読む人の時間を削減しています。極端な例では、件名のみで伝わる場合は、本文が空でもOKというルールもあるそうです。

④会議は30分

会議は基本30分で終了。話し合いがまとまらない場合は、再度必要なメンバーで会議し直します。メールや口頭でリーダーが課題をメンバーに与え、後日リーダーがその回答を聞いて回り、結論を取りまとめるというスタイルを取ることで、プロジェクトの進行スピードを上げているのです。

上記4つの方針を徹底することで、仕事の最大限の効率化を図り、時短勤務社員が気兼ねなく働ける勤務体系を実現したのです。

岩崎さんは言います。「これらの施策を実行することで、従業員は早く帰れるようになります。早く帰れるようになると、体調管理もしやすくなるでしょう。それが、結果的に女性社員に『働きやすい職場だ』と思ってもらえることにつながっているのだと思います。」

女性社員を定着させる福利厚生の仕組み

ランクアップでは、さらに女性が働きやすい環境づくりを整えるべく、さまざまな福利厚生が用意されています。福利厚生の種類は、大きく分けて5つあります。

・健康支援

かつて広告代理店勤務だった岩崎さんは長時間労働によって身体を壊した経験から、社員の健康に特に力を入れています。

例えば、就業時間内に月1回「足つぼマッサージ」を受けられ、年に1~2回ほどスポーツトレーナーを呼んで社員にスクワットの仕方を習うようなこともできます。ランクアップで長く働いてもらうために、社員の健康を第一に考えているのです。

・ワークライフバランス支援

同社には「17時で帰っていいよ」と呼ばれるワークライフバランス支援制度のほか、有給休暇を時間単位で取得できる制度があります。一般的な会社では、午前もしくは午後のどちらかを休む半休が主流だと思いますが、同社では1時間単位で時間給を取ることが可能です。例えば2時間休を取って夕方美容室に行くようなこともできます。

また、夏休みがない代わりに、有給休暇に加算されないリフレッシュ休暇が5日間付与されます。従業員のなかには、前後の休日と合わせて12連休を取得し、海外旅行に行った人もいます。この制度を使えば、あえて繁忙期を外して長期連休を取ることも可能です。

・社員にとっての目安箱「改善提案制度」

さらに、「改善提案制度」というものがあります。これは、給与に関することと悪口以外であれば、なんでも提案していいという制度です。しかも採用・不採用に関わらず1件につき500円が支給されます。パソコンの覗き見防止フィルタなどの導入提案のように、どんな小さな提案でも受け付けているのが特徴。社員にとっては、人事・総務に提言するきっかけが得られます。

・子育て支援

子育て支援制度については、「子連れ出勤制度」と「病児シッター制度」の2種類があります。前者は、夏休みなどの長期休暇のとき、お子さんの預け先のない人のために、子どもを連れての出社が可能な制度です。後者は、子どもの体調不良による急な休みで保育園に登園できない場合、専門の知識を持ったシッターが自宅に来て看護してくれるという病児シッター制度があります。利用料は約3万円ですが、自己負担は1日につき300円で利用することができます。

・成長支援

自ら成長したいという社員のために、研修費用や資格取得費用は会社が全額負担しています。同社は残業がほとんどないぶん、スキルアップに取り組んでいる人が多いようです。TOEICやライティング講座のほか、日本化粧品検定や通販エキスパート検定など化粧品会社独特の資格取得のフォローもしています。さらに、リーダー育成のビジネススクールとして有名なグロービス経営大学院と法人契約を行っており、ビジネス面でも成長できる制度が整っています。

うちのような会社が世の中に増えてほしいです(人事部 組織開発・能力開発担当 瀧澤朋美さん)

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では実際に働いている社員は、どのように感じているのでしょうか? 同社人事部の瀧澤朋美さんに伺いました。

・女性のライフステージの変化に柔軟な会社

現在の採用戦略のターゲットは、ママさんと結婚間際の20代後半の人たちだそうです。20代後半というのは、ちょうど10年ほどキャリアを積み重ねてきた頃。当人たちは、結婚・出産・子育て・介護など、各ライフステージにおいて「今の働き方では仕事を続けられないのではないか」と不安に思っているのではないでしょうか。実際、妊娠・休職・出産後に職場に復帰しても居場所を失い、退社せざるを得ない女性も少なくありません。瀧澤さんは、「ランクアップでは、そうしたライフステージの変化による働き方に柔軟な環境を整えることで、そのような悩みや不安は解決されるのではないか」と話しています。

・ダイバーシティの取り組み

弊社では、時短勤務になるママさんを数多く採用できる理由に、残業をしないことでフルタイムの社員と時短社員の働く時間に差がないということが挙げられます。差があったとしても、最大でおよそ1時間半程度。これは、「代表の岩崎自身が結婚と出産を経験してきたこともあり、子育てしながらでも働ける風土を作りたいという強い願いがあるから実現されています」と瀧澤さんは話します。

ランクアップは、ママであってもママでなくても、その人自身のキャリアがあれば能力を最大限に発揮できる環境です。上述の通り、ママが働きやすい施策を行っている会社ですが、瀧澤さんは「うちのように、女性が働きやすい会社がもっと増えると良いですね」と語っています。

ママのいる家庭にはパパがいるという家庭も多いですが、瀧澤さんは、パパの会社にも弊社のような制度、例えば子連れ出勤や病児シッターなどの制度が普及すれば、日本全体が変わっていくのではないかと話しています。

瀧澤さんは現在、ランクアップの人事部に所属していることもあり、人事部ができることはもっとたくさんあるのではないかと話していました。「世の中の多くの企業の人事部が協力して、女性が働きやすい環境を作っていく。そうすれば、企業も成長しつつ、ママがきちんと自分のキャリア・成果を追いながら仕事ができる国になると私は考えます」(瀧澤さん)

ランクアップのこれから

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岩崎さんは、今もなお業務改善に取り組んでいると話します。例えば事務作業のRPA(Robotic Process Automation)化によって、単純作業の自動化を目指しているそうです。一方社員に対しては、新しいものを生み出すようなクリエイティブな仕事に集中してもらうよう取り組んでいます。ランクアップは、今後も試行錯誤を繰り返しながら生産性の高い仕事をすることで、女性が働きやすい環境の実現を目指していくのです。