お役立ち情報

業務の属人化を9日間の連続休暇で解消!?株式会社ロックオンを訪問。


DSC03691

「〇〇さんがお休み中だからお客さんからの問い合わせに答えられる人がいない…」
「社内に担当が私しかいないので、休みたくても休めない…」

こうした”業務の属人化”によるリスクを解消するために、2011年から「山ごもり休暇制度」という、全社員に会社との連絡を一切断つ9日間の連続休暇を取得してもらう制度を導入し、運用する会社があります。

果たして、”会社との連絡を一切断つ”という連続休暇制度の運用のコツとは?もたらされる効果とは?

今回は、「どんな会社さんで導入しても、うまく回せると思います」と言う株式会社ロックオンでコーポレートコミュニケーション課課長を務める金ナリさんと人事部の小川香保里さんに、「山ごもり休暇制度」の運用のコツと導入後の効果について伺いました。

※「まもりの種」は保護(まもる)くんの日本パープルが運営しております。

株式会社ロックオンってどんな会社?

株式会社ロックオンは、広告効果測定市場でトップクラスのシェアを誇るマーケティングプラットフォーム「AD EBiS(アドエビス)」を主力商品として提供するITベンチャー企業です。

同社は、ユニークな制度や働きがいのある会社としても定評があり、毎年世界約50カ国で「働きがい」に関する調査・分析を行い、発表しているGreat Place To Work(R) Institute(GPTW)からは、「従業員25~99人の企業の中でのベストカンパニー」として、2018年を含め、過去7回も選出されています。

今回はそんな同社に、業務の属人化解消について伺いました。

日程変更には社長承認が必要?ルールを徹底して浸透させた「山ごもり休暇制度」

DSC03670

まずは、山ごもり休暇制度の概要を教えてください。

小川:山ごもり休暇制度は、弊社が2011年に導入をした「全社員が1年に一度、会社との連絡を一切断つ9日間の連続休暇を取得する」という制度です。前後の土日4日間に加え、会社からの特別休暇が3日、通常の有給から2日間の休みを使用するという内訳となっています。

制度の目的は大きく二つあります。一つは定期的に引き継ぎを行うことで”業務の属人化”を排除すること。もう一つは、社員の心身をリフレッシュさせて新たな活力を持って業務に取り組めるようにすることです。

具体的な運用はどのように行なっているのでしょうか?

小川:弊社は期初が10月1日なので、10月1日から翌年の9月30日までの1年間の中で全社員必ず「山ごもり休暇」を取得してもらうようにしています。9月末までに、翌年度のどのタイミングで「山ごもり休暇」を取得するかを確定します。

一度確定した日程は基本的には変更はできないルールにしています。ご家族やパートナーとスケジュールが合わない場合など、どうしても変更せざるを得ない社員がいることもあります。その場合は、「社長承認」を得られれば、変更しても良いということにしています。以前は、「役員会の決済」が必要だったのですが、社員の数も増えてきたこともあり少しハードルを下げました。ただ、業務の調整がつかなくて日程を変更したい、というのは徹底して禁止しています。「社長承認」というあえて高めのハードルを設けているのはそのためです。

1年も前から翌年度の休暇の日程を決めることに大きな理由はあるのでしょうか?

小川:休みに合わせて業務を調整して欲しいのもありますし、直前に決めると言って取らなかったという事態を防ぐためでもあります。

金: 1年前に決めることで次の1年間に何があるかというのを”棚卸し”することができます。自分の業務を振り返って先の予定を立てておくことができるという意味ですごく有効だと感じています。

その他に、運用する上で重要なルールがあれば教えてください。

小川:9月末に決めた全社員の翌年度の山ごもり休暇日程は、グループウェアで共有し、みんなの休暇日程を確認できるようにしてあります。休暇に入る3日前にはリマインドの通知と、全社統一の引き継ぎフォーマットを全社内にメールで共有するルールがあります。

業務引き継ぎ書
※実際に使用されているフォーマット。フォーマットの仕様は、制度開始以来ほとんど変更されていないそうです。

引き継ぎってどれくらい前からどのようにするものなのでしょうか?

小川:部署によりますが、だいたい1〜2週間前くらいから始めるところが多いです。制度を導入したばかりの時は、ほとんどの社員が引き継ぎに対する不安があったので、業務を一から一緒にやってみたり、マニュアルもすごく細かく書いたりしていました。

ただ、制度が浸透するにつれて、社員同士が日頃から周りがどんな業務をしているか気を配るようになったり、業務に対する意識が変わってきたりしたので、次第にやりやすくなってきています。今は、引き継ぎのフォーマットをしっかり書いて共有しておくだけで、うまく回るようになりました。

過ごし方は十人十色!休暇後の報告によって、社内コミュニケーションが活性化することも。

kiriu1 (1)

山ごもり休暇を取得した後は、報告義務などはあるのでしょうか?

小川:そうですね、基本的に社内のSNSで報告をしてもらうようにしています。ただ、中には詳しく報告をしたくない社員もいると思うので、分量や内容は個々に任せてあります。

社内に話題になった珍しい休暇を過ごした方もいらっしゃるのでしょうか?

金:それが、いるんです(笑)。タンザニアの村にマコンデ彫刻という彫刻技術を学びに行ったり、アフリカ最高峰のキリマンジャロを登ったりと、非日常な体験をたくさんしている社員がいます。社員によって過ごし方は本当にそれぞれで、「夫婦の愛を取り戻しに行ってきました」なんて男性社員もいました。彼は、素敵な宿泊先を予約したり、夫婦の思い出の地を巡ったりしていました。

最近、社内SNSで話題になっていたのは、極寒の山に滝行と瞑想をしに行った社員ですね。山ごもり休暇の後は、全員が社内SNSでどんな休暇を過ごしたかシェアするのですが、その社員の報告と感想が、びっくりする程長くて。しばらくはSNS上がその話題で持ちきりでしたね(笑)。

そうやって休暇の過ごし方をシェアすることで、普段の業務では気づかなかった一面が見られたり、話すきっかけになったりと、お互いのことを知るいい機会にもなっています

DSC03630

コミュニケーションの活性化にも役に立っているのですね。その他にも山ごもり休暇による副次的な効果ってあるのでしょうか?

金:山ごもり休暇が導入される前から在籍している社員で、導入前と導入後の有給取得日数にどれくらいの変化があったのかを比較をしてみたところ、年間で取得している有給の平均日数が3倍に増えていました

小川:有給もそうなのですが、育児休暇などの中長期休暇の制度も取りやすくなっています。弊社ではこれまでに10人が育児休暇をとっているのですが、そのうちの4人が男性なんです。育児休暇を取得している社員の約半数が男性だというのは、山ごもり休暇9日間休んで大丈夫なら、1ヶ月くらい休んでも大丈夫だよね、という安心感が生まれた結果だと思っています。

「どんな会社さんで導入しても、うまく回せると思います」 ー 導入の際に必ず抑えておくべきこととは?

「山ごもり休暇」によって業務の属人化は解消されたのでしょうか?

金:もちろん、山ごもり休暇を導入したからといって業務の属人化がゼロになるわけではありません。担当者に戻ってきてもらって行う業務もある。ただ、山ごもり休暇のおかげで8〜9割は記録を残して、毎回引き継ぎもできているので、「明日何かあっても大丈夫!」という安心感がありますね。

また、実際に山ごもり休暇を取得することになって感じるのは、業務の引き継ぎって「しなくてはならない」という状況にならないと、「マニュアルを作ろう!共有しよう!」という意識にまずならないということですね。山ごもり休暇は業務の引き継ぎを必ずしなくてはならないので、業務を見える化し、共有する良いきっかけになっています。

小川:誰にでもすることのできる作業とかは、どんどん共有すべきだと思うんです。でも、仕事ってやっぱりその人しかできない発想とか、クリエイティブもありますよね。だから、そういうところはその人にどんどん発揮してもらって、その人がその人にしかできない業務に使う時間を増やせるようになる。そういう働き方にシフトしていくきっかけになるのが山ごもり休暇だと思います。

どの企業でも同様の制度を導入して回すことは可能だと思いますか?

小川:可能だと思います。この制度には、重要なポイントが二つあるので、そこさえ抑えればどんな会社さんで導入しても、うまく回せると思います。

一つは、「会社との連絡を断つ、というルールを徹底して運営すること」。休暇に入ったら、絶対に連絡は取らない。なぜなら、連絡が取れてしまうと結局引き継ぎをしなくなってしまう。そうすると、制度の前提条件が崩れてしまいます。

二つ目は、「会社のトップが、全社員に必ず取ってもらうという強い意志を持って推し進めること」。この制度は、社員のリフレッシュのためにだけでなく、会社のリスクヘッジのために絶対に必要なことなんだ、ということを全社員に理解させる。そうすることで、不平等感が生まれずに「忙しいので休暇は取りません」なんて言い出す人も出てきません。

【山ごもり休暇を推進するための2つのポイント】
1. 会社との連絡を断つ、というルールを徹底して運営すること
2. 会社のトップが、”全社員に必ず取ってもらう”という強い意志を持って推し進めること

最後に、何か他社さんが導入する際のアドバイスがあれば、教えてください。

小川:最初は、「絶対に日程変更は禁止」「絶対に会社との連絡は禁止」などと徹底的に厳しく運営することが求められると思います。でも、何回もしているうちに文化としても根付いてくるので、皆さんの意識が「当然取るものなんだ」という風に変わってきます。なので、会社の文化として根付くまでは大変かもしれないですけど、「日程変更は絶対に禁止!」という風に厳しく運営するのが良いのではないかと思います。