新たな働き方を提案する『Chatwork』に聞く、チャットツールをうまく利用するコツ

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ChatworkやSlackのように、ビジネスの現場にチャットツールを導入する企業が増えてきました。それらは仕事上のやりとりを円滑にする一方、テキストだけの会話に終始してしまい、コミュニケーションがうまく取れていないという課題を抱える組織もあるようです。

そこで今回は、『Chatwork』を運営している、Chatwork株式会社の人事総務部広報ディレクターの山田葉月氏にインタビュー。チャットツールをうまく利用するコツを聞きました。

普通の会社でもできるオフィス改善方法

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――今のオフィスは東京タワーの目の前なんですね。オフィスの窓から東京タワーが見えます。こちらにオフィスを移転したのはいつ頃でしょうか?

山田葉月氏(以下・山田氏):2017年の10月31日です。それまでは入谷にオフィスがありました。社員が増えて手狭になったのと、会議室が足りなくなってしまったため、移転を決めたんです。

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――オフィスに入って驚いたのが「シアタールーム」です。この部屋はどのように使われているのですか?

山田氏:8人以上の会議や全社会議などはここで実施しています。その他、大阪オフィスや在宅のメンバーとリモートで会議をする時にも使っています。ただ、会議だけに使うのはもったいないので、例えば外部の方をお招きしたセミナーとかSEの勉強会など、ほかの利用用途にも使っています。

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――このシアタールーム以外に貴社オフィスで工夫しているところは何ですか?

山田氏:私たちがカフェスペースと呼んでいる共有スペース(上記写真)ですね。私たちは、なるべく部署をまたいで社員同士が交流できる場所にしたいと考えておりまして、バーカウンターと丸テーブルを設けています。ここではランチを食べる人もいますし、就業後に軽く1杯飲むという人もいます。これによってコミュニケーションの頻度が増えました。

――とはいえ、シアタールームやバーカウンターを作るのは、それなりのお金が掛かりますよね。ごく普通の中小企業さんでもできるオフィス環境の改善方法があれば教えてください。

山田:例えば、社員の共有スペースを設けることでしょうか。弊社も共有スペースを設置することで、圧倒的に対面のコミュニケーションが増えました。移転前のオフィスでも共有スペースはあったのですが、飲食できるスペースがあると社員が集まってきやすく、コミュニケーションが生まれやすくなるのではないかと思います。

face to faceのコミュニケーションが大事

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――ツールを提供している会社だからこそ、コミュニケーションを促進するための仕組みを考えていらっしゃるのですね。

山田氏:私たちももちろんChatworkを導入していますが、face to faceのコミュニケーションも同様に大事にしています。普段から面と向かって雑談をしていると、なんとなく人となりがわかりますよね。雑談は個性を知るという意味でも必要です。チャットには表れない言葉の行間とか、どういう表情でこの内容を話しているのかを察しやすくなると思います。

弊社の場合、なるべく皆がコミュニケーションを取れるように、いくつかの制度を設けたり、チャットの運用の仕方を工夫したりしています。前者については飲み会の金額を一部補助したり、他部署の社員とのランチ代を補助したりしています。その他、部活動を推進するような制度もあるんです。後者については、業務以外の話もできるような雑談専用のグループチャットを作り、仕事以外のコミュニケーションを取れるようにしています。これらの仕組みによって、弊社ではコミュニケーションが活発になりました。

――ところで、貴社のリモートワークの状況はいかがでしょうか?

山田氏:弊社には地方に住んでいるリモートワーカーもいますが、基本的にはオフィス出社推奨です。face to faceを重視している会社ですので。もちろん、子どもの事情によって自宅で仕事をしなければならない場合などには、在宅ワークを許可しています。私たちが目指すのは、働き方の多様性つまり「いつでもどこでも仕事ができる」という状態です。

――リモートワークを許可する際に気をつけていることは何でしょうか?

山田氏:会議でもなるべく積極的に意見をしてもらうということですね。会議の場では、どうしてもリモートワークの人は受け身になってしまい、発言しにくくなってしまいます。ですから、リモートワークの方が意見を言いやすいようにファシリテーターが会議を回すなどの配慮が必要になります。

そもそも、リモートワークはどうしても孤独になりがちです。ですから、半期に1回、「全社合宿」というものを実施しています。この合宿は1泊2日の日程で行われるもので、参加は必須です。その他、必要となればプロジェクトごとに地方から出張してオフィスに来てもらうようにしています。

また、弊社でも新入社員を迎え入れていますが、人によっては諸事情により地方で仕事をしなければならないという人もいます。そういう社員に対しては、入社後1~2カ月はオフィスに出社してもらって、社員の顔と名前を覚えてもらい、コミュニケーションを取ってもらった上でリモートワークに切り替えてもらうようにしています。

Chatworkをうまく機能させるためのコツ

――では、Chatworkをうまく社内に浸透させるコツはありますでしょうか?

山田氏:私たちが推奨しているのは、はじめにスモールチームで導入してみることです。そこでうまく機能する方法や仕組みを試しながら順次メンバーを増やしていく、という方法をオススメしています。一気にトップダウンで「明日からChatworkやります」と言っても、必ずハレーションが起きてうまくいきません。まずは部署単位やプロジェクト単位で始めて、うまく機能しそうであれば他の部署にも展開していくのが良いでしょう。

――それでもうまく機能していないという会社もあると思いますが……。

山田氏:うまく機能していないということは、何かしらツール以外のところに課題があるのかもしれません。例えば、上司と話しにくい環境だったり、そもそも会社の雰囲気が良くなかったりする可能性などです。せっかく飲み会制度のようなものを作っても、現場の状況を汲み取らないまま人事が一方的に作った制度だと、そのような課題が生まれてしまうのではないかなという気がしています。

弊社の場合、人事総務部が制度を作る際も社員の声をしっかりと聞きますし、使われない制度は見直しを行っています。制度がきちんと使われるような環境を、社員と一緒に作っています。

働き方を変えるだけではなく、採用をも変える

――チャットを導入することによる新たなメリットとは何でしょうか?

山田氏:実はチャットを導入すると、採用にも良い影響が出るんです。チャットを導入すれば、仕事をするにも時間と場所を選ばないので、多様な働き方を実現できます。人材不足と言われている今、「リモートワーク可能の会社」と打ち出すことで、なるべく転勤したくないとか、自由な働き方ができる会社が良いと考えている優秀な社員を集めることが可能です。これは採用に悩んでいる企業にとってはメリットになりますね。

まずはface to faceのコミュニケーション促進を

チャットツールをうまく機能させるためには、まずはface to faceのコミュニケーションを充実させることが必要だということがわかりました。もしチャットツールを導入してもうまく機能していないという場合は、そもそもface to faceのコミュニケーションが円滑にできていないのかもしれません。ツールの導入以前に、まずは面と向かったコミュニケーションを促進する仕組みを検討してみてはいかがでしょうか?