見積書の保管期間は?正しい保管期間・保管方法・注意点を解説
見積書を保管していない、あるいは保管の必要性について十分に認識していない企業や担当者は少なくありません。しかし、見積書は取引条件や契約内容の確認資料としてのみならず、税務調査や法的トラブルの際に重要な証拠資料となり得る文書です。
そのため、適切な期間の保管および管理体制の整備は、企業のリスクマネジメントにおいて欠かせない要素といえます。
この記事では、見積書の正しい保管期間や適切な保管方法、保管していない場合のリスクや対処法についてわかりやすく解説します。個人事業主や経理担当者はもちろん、書類管理に不安を感じている方は、ぜひご確認ください。
【結論】見積書は法人・個人事業主で保管期間が異なる
見積書の保管に関する法的なルールは、法人と個人事業主で異なります。これは、適用される法律や会計処理、税務申告の方法に違いがあるためです。見積書自体は法定帳簿ではないものの、税務署による調査時や取引先とのトラブル時に、根拠資料として提示を求められることがあります。
そのため、一定期間の保管が実務上求められており、正しく理解しておくことが重要です。
以下では、法人と個人事業主それぞれの保管期間について、詳細に解説します。
法人の場合は原則7年
法人においては、会社法および法人税法により、帳簿書類や証憑書類の保管が義務付けられています。見積書は証憑書類の一つと位置づけられ、契約や請求内容の裏付け資料として保存しておくことが推奨されます。
具体的には、法人税法第126条および施行規則に基づき、原則として7年間の保管が求められます。この期間は、決算期の翌日から起算されます。
赤字決算の場合は10年
ただし、赤字決算をした事業年度については、欠損金の繰越控除の適用期間に対応して、10年間の保管が推奨されるケースがあります。これは、将来的に利益が出た際に欠損金を適用する可能性があるため、過去の取引記録を証明できる状態にしておく必要があるからです。
見積書もこれに該当する証憑として取り扱われるため、赤字決算の場合には特に注意が必要です。
個人事業主の場合は原則5年
個人事業主においては、所得税法および関連規則に基づき、見積書などの証憑書類を原則5年間保管することが求められます。青色申告を行っている場合、帳簿書類のうち一部については7年間の保管義務もありますが、見積書については5年で足ります。
もっとも、税務調査は過去3〜5年分を対象とすることが多いため、少なくとも5年間は確実に保存しておくことが望ましいといえるでしょう。
見積書の保管方法
保管期間が定められていることに加え、どのような方法で保管すべきかを理解しておくことも、企業や個人事業主にとって重要です。保管方法には「紙での保管」と「電子での保管」があり、それぞれにメリット・デメリットや法的な要件があります。
以下では、それぞれの保管方法について解説します。
紙での保管
紙での保管は、最も一般的かつ従来型の方法です。見積書を印刷し、ファイリングして保管庫などに収納する運用が多くの企業で採用されています。
この方法の利点は、税務署などから求められた際に即座に原本を提示できる点にあります。ただし、年数が経過するごとに保管書類が増え、保管スペースの確保や管理コストの増加といった課題もあります。
また、紙媒体は劣化や紛失、災害による破損のリスクがあるため、バックアップ対策として電子化を併用する企業も増えています。
電子での保管
電子での保管は、クラウドサービスや社内サーバーを利用してPDFなどの形式で見積書を保存する方法です。省スペース・検索性の高さ・業務効率の向上といったメリットがあります。
ただし、電子保存を行う場合は「電子帳簿保存法」に基づき、改ざん防止措置やタイムスタンプの付与、検索機能の確保など、一定の要件を満たす必要があります。
特に令和6年度以降、電子取引に関する保存義務が厳格化されているため、電子保存を導入する場合は制度に準拠した運用ルールの整備が不可欠です。
見積書を紙で保管する際のポイント
紙で見積書を保管する場合、ただ保管しておくだけではなく、業務上の検索性や税務調査時の対応を意識した整理方法が求められます。
特に保管期間が長期にわたることを考慮すると、体系的に整理・分類することが業務効率やリスク回避に直結します。
また、最近では、紙の見積書であっても内容をスキャンし、書類管理システムに取り込んで電子データとして一元管理するハイブリッド型の運用も普及しています。
以下では、紙で保管する場合の基本的な分類方法と併せて、業務効率化の観点も踏まえて解説します。
事業年度ごとに保管する
見積書は、発行日を基準として事業年度単位で分類・保管することが基本です。これは、税務申告や会計監査等で特定の年度の書類を提示する必要が生じた際に、迅速に該当資料を抽出できるようにするためです。
保管用のファイルやキャビネットを年度単位で整理し、背表紙やインデックスに年度を明記しておくと、後からの検索性が大幅に向上します。
また最近では、紙の見積書もスキャンして電子化し、クラウド型の書類管理サービスで一元的に管理する方法も普及しています。紙と電子の両方を組み合わせることで、保管スペースの削減や検索性の向上につながり、より実務に適した管理体制を整えることができます。
取引先ごとに保管する
事業年度と並んで有効なのが、取引先別の分類方法です。特に、同一年度内で複数回の取引がある顧客や仕入先が多い場合、この分類方法により、取引履歴の把握や請求対応がスムーズになります。
顧客コードや取引先名をインデックス化し、見積書の控えを紐づけて保管することで、取引内容の照会や異議申立てへの対応が迅速に行える体制を整備することができます。
また、こうした取引先別の分類は、書類管理サービス上でのラベリング機能や検索機能を活用することで、紙資料の電子化と連携させた効率的な運用が可能となります。必要に応じてOCR(文字認識)機能を活用し、書類内容をデータベース化しておくと、将来的なDX(デジタルトランスフォーメーション)対応にも柔軟に移行できる基盤となります。
見積書を保管する際の注意点
見積書は、法人税法や所得税法などの関連法令に基づき、一定期間の保存が義務付けられている重要な証憑書類です。適切な保管を怠ると、税務調査や法的トラブルの際に不利な立場に立たされる可能性があります。
以下に、自社で発行した見積書、受け取った見積書、および見積書番号に関する注意点を詳しく説明します。
自社で発行した見積書について
自社で発行した見積書は、法人税法に基づき、原則として7年間の保存が求められます。欠損金が生じた事業年度については、10年間の保存が必要となります。保存期間は、確定申告期限の翌日から起算される点に留意してください。
また、見積書の内容に変更が生じた場合、訂正後の見積書のみを保存すればよいとされていますが、取引先との交渉の上で再発行となる場合は、それぞれが「過程における確定データ」とみなされるため、全ての見積書を保存することが適切とされています。
受け取った見積書について
受け取った見積書も、保存義務の対象となります。電子データで受け取った場合、電子帳簿保存法の要件を満たす必要があります。具体的には、電子データの改ざん防止措置や検索機能の確保、タイムスタンプの付与などが求められます。
契約に至らなかった見積書については、法律上の保存義務は明文化されていませんが、将来的なトラブル対応や業務上の参考資料として活用できるため、社内ルールに基づき一定期間保存しておくことが実務上望ましいとされています。
例えば、契約に至らなかった見積書は、「作成日から3年間」保管し、その後は定期的に廃棄処理を行うなど、保管期間の起算日や廃棄ルールについても、マニュアルに明記し、運用責任者を明確にすることで、社内の書類管理の透明性・一貫性が高まり、将来的な監査やトラブル時にも対応しやすくなります。
見積書番号について
見積書番号は、見積書を識別するための重要な情報です。番号付けを一貫して行うことで、後からの検索や照会が容易になります。番号の付与方法については、社内で統一したルールを設け、管理することで作成や更新の履歴を追跡でき、不正の防止にも役立ちます。
見積書の保管は保管サービスがおすすめ
見積書を長期にわたり効率的かつ確実に保管・管理するには、電子化と保管サービスの活用が有効です。紙での保管には手間とスペースが必要ですが、電子データで一元管理することで、作業の簡素化・情報の可視化・コスト削減といった多くのメリットを得られます。
以下では、具体的なメリットについて解説します。
保管や管理がしやすい
紙の見積書は、保管スペースの確保やファイリング、定期的な整理といった手間が発生します。一方で、保管サービスを利用すれば、書類の検索・分類・アクセス管理がすべてオンラインで完結し、日常業務での取り扱いが大幅に簡素化されます。見積書をスキャンして保存すれば、複数の担当者がリアルタイムで共有・確認することも可能です。
検索機能も充実しており、取引先名や日付、金額といった条件で該当の見積書をすぐに見つけ出せるため、いつでもどこでも必要な書類にアクセスできる環境が整います。
業務の効率化につながる
保管サービスでは、見積書の一括アップロードや自動仕分け機能、キーワード検索などが利用できるため、過去の見積書の確認や再利用が迅速に行えます。また、見積から請求書への連携や承認ワークフローの自動化など、他の業務プロセスとの連動も可能となり、全体の業務効率が大きく向上します。
ヒューマンエラーの防止、業務全体のスピードと正確性を高めるうえで、電子保管は非常に有効です。
コストの削減につながる
紙の保管では、印刷代、ファイル購入費、キャビネットなどの備品、保管スペースの賃料、郵送作業にかかる封筒・切手・人件費など、多くの間接コストがかかります。近年は郵送費の値上げも進んでおり、今後のコスト増加に備える意味でも、電子化は現実的な対応策といえるでしょう。保管サービスを導入することで、これらの物理的・人的コストを削減できるだけでなく、情報漏えいのリスクも軽減されます。バックアップ体制が整ったサービスを選べば、災害や紛失にも強い管理体制を構築できます。結果としてトータルコストの大幅な削減が見込まれます。
見積書を保管していない場合のリスクと対処法
見積書を適切に保管していない場合、取引内容を証明できずに思わぬリスクを招くことがあります。
例えば、税務調査で証憑書類の提示を求められた際に見積書が見つからなければ、取引の正当性を説明できず、経費として認められない可能性があります。また、過去の見積内容が曖昧なままだと、取引先との認識の違いからトラブルにつながることもあります。
なお、見積書自体は帳簿書類としての保存義務が明確に規定されているわけではありませんが、見積書が契約や請求の根拠となるケースでは、間接的に税務調査や監査において重要な資料とみなされることがあります。そのため、見積書を適切に保管していなかったことで経費が否認され、結果的に追徴課税などの不利益につながる可能性がある点には注意が必要です。
また、インボイス制度や電子帳簿保存法など、書類保存に関する制度が強化される中で、見積書の取り扱いもより厳密に管理される傾向にあります。こうした制度に関連して保存義務が課されている場合に違反すると、罰則やペナルティの対象となる可能性も否定できません。
過去の見積書が手元に残っていない場合は、発注書や請求書、契約書などの関連資料で取引の実態を補完するしかありません。今後同じ事態を繰り返さないためにも、見積書の保管方法を見直し、紙・電子問わず確実に管理できる体制を整えることが重要です。
見積書は法定保存文書ではない場合もありますが、実務上は「残しておくべき重要書類」として認識されつつあります。必要なときに確実に取り出せるよう、保管期限の設定や分類方法を明文化し、社内ルールとして運用していくことが、トラブルの未然防止と業務の信頼性確保につながります。
まとめ
見積書は、税務調査への対応や取引履歴の記録など、法的にも実務的にも重要な書類です。法人・個人事業主ともに、定められた保存期間を守ったうえで、正確かつ効率的に管理することが求められます。
電子化や書類管理システムの活用により、保管の手間やスペースを削減しつつ、検索性や共有性の向上をはかることができます。特に近年では、紙の見積書を外部の保管サービスに預けるという選択肢も注目されています。
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