Pマークの教育は何をする?対象者・頻度・内容や実施方法を解説

「Pマークの教育は誰を対象に、年何回実施すればよいのか」「研修では何を教え、どのような記録を残せばよいのか」と迷っていないでしょうか。プライバシーマーク(以下、Pマーク)の運用では、従業者に対して少なくとも年1回、必要に応じて適宜教育を行い、理解度を確認する手順を内部規程として定めることが求められています。
教育の対象は正社員だけではありません。個人情報保護方針や従業者の役割・責任など、必要な内容を自社の業務に合わせて伝えることが大切です。
この記事では、Pマーク教育の対象者や頻度、教育内容、教材・研修方法、理解度の確認、残しておきたい記録まで解説します。社内教育を見直したい方や、これから研修を準備する担当者は、ぜひ参考にしてください。
この記事でわかること
- Pマーク教育の対象者と実施頻度
- Pマーク教育で扱う必要がある内容
- 研修に使える教材と実施方法
- 理解度の確認方法と残しておきたい記録
- 外部の教育サービスを利用する場合のポイント
Pマーク教育とは
本記事では、Pマークを取得・運用する事業者が従業者に対して行う個人情報保護の教育を「Pマーク教育」と呼びます。
Pマークでは、個人情報保護マネジメントシステム(PMS)を日常業務で適切に運用するため、従業者への教育が求められています。教育は取得時だけの対応ではなく、取得後も継続して行う運用の一つです。対象となる従業者を漏れなく把握し、決められた頻度で実施できる体制を整えることが出発点になります。
Pマーク教育の目的
Pマーク教育は、社内規程を作成しただけで終わらせず、個人情報保護に必要な考え方やルールを日常業務へ定着させるために行います。個人情報を扱う場面で、従業者一人ひとりが自分の役割を理解し、社内ルールに沿って判断・行動できる状態を目指します。
教育を継続することで、業務上の注意点を繰り返し確認する機会にもなります。個人情報の取扱いを一部の担当者だけの課題にせず、組織全体で共有することが重要です。
教育対象となる従業者の範囲
Pマーク教育の対象は正社員だけではありません。構築・運用指針では、従業者を「事業者の組織内にあって、直接若しくは間接に、組織の指揮監督を受けて組織の業務に従事している者など」とし、正社員、契約社員、嘱託社員、パート社員、アルバイト社員などの雇用関係にある従業者だけでなく、取締役、執行役、理事、監査役、監事、派遣社員なども含むとしています。
雇用形態だけで対象を決めると、教育から漏れる人が出るおそれがあります。自社で働く人の立場や業務内容を確認し、誰を教育対象とするのかをあらかじめ明確にしておきましょう。
少なくとも年1回の実施頻度
「プライバシーマークにおける個人情報保護マネジメントシステム構築・運用指針【JIS Q 15001:2023準拠 ver1.0】(以下、構築・運用指針)のJ.4.3(認識)では、従業者に対して「少なくとも年一回、及び必要に応じて適宜に」教育を実施する手順(教育の理解度を確認する手順を含む。)を内部規程として文書化することが求められています。
そのため、年次教育の実施時期をあらかじめ決め、対象者が受講できる方法を用意しておくことが大切です。年1回の定期教育だけを前提にせず、業務や体制に変化があったときに追加教育を行えるよう準備しておくと、実態に合った運用につながります。
必要に応じた追加教育のタイミング
定期教育とは別に、業務や体制に大きな変化があった場合は追加教育を検討します。たとえば、新入社員・中途社員の受け入れ、個人情報を扱う部署への異動、社内ルールやシステムの変更、事故・ヒヤリハットの発生などです。
追加教育が必要になる場面をあらかじめ社内で想定しておけば、年次研修を待たずに必要な情報を共有できます。すべてのケースで同じ教育を行うのではなく、変更内容や対象者に合わせてテーマを絞ると伝わりやすくなります。
Pマーク教育で扱う内容

Pマーク教育では、JIPDECの構築・運用指針に基づき、従業者に認識させるべき事項があります。そのうえで、自社で起こりやすい事故や情報の取扱い方を加えると、実務に結び付く教育になります。制度上求められる内容と、自社の業務に応じて追加するテーマを分けて考えましょう。
構築・運用指針(JIS Q 15001:2023準拠)が定める4つの認識事項
JIS Q 15001:2023に準拠したJIPDECの構築・運用指針では、従業者に次の4項目を認識させることが求められています。
| 教育に含める事項 | 教育内容の例 |
|---|---|
| 個人情報保護方針 | 自社が掲げる個人情報保護の基本的な考え方 |
| PMSに適合する重要性と利点 | 社内ルールを守る理由や適切な運用の意味 |
| PMSに適合するための役割と責任 | 従業者が守るべきルールや担当する業務上の責任 |
| PMSに違反した際に予想される結果 | 情報漏えいなどの事故や、組織・本人に生じ得る影響 |
4項目を言葉だけで覚えてもらうのではなく、自社の規程や実際の業務と結び付けて伝えることが重要です。
情報漏えい時の対応ルール
教育では、個人情報の漏えい・紛失などに気付いた場合の社内報告ルールも伝えておきましょう。従業者が自己判断で処理すると、必要な初動や事実確認が遅れるおそれがあります。
個人情報保護法では、個人データの漏えい等が発生し、個人の権利利益を害するおそれがある一定の事態に該当する場合、個人情報保護委員会への報告及び本人への通知が必要です。従業者に法的な手続きを細かく覚えてもらうことよりも、異常に気付いたら誰へ報告するのかを明確にし、社内の責任者へ速やかにつなげられる状態をつくることが大切です。
メール・フィッシングの注意事項
メールを使う業務では、宛先や添付ファイルの確認、BCCの使い方、不審なURLや添付ファイルを開かないことなど、自社のルールに沿った注意点を教育内容に加えます。
一般論だけで終わらせず、「送信前に何を確認するか」「不審なメールを受信した場合にどう行動するか」まで具体化すると、実務へ落とし込めます。JIPDECも社内教育用動画として「個人情報の取扱いに関する事故を起こさないために② ーメール誤送信に気をつけようー」を公開しており、教材作成の参考にできます。
SNS・テレワークの注意事項
SNSでは、業務上知り得た情報や社内の様子を不用意に投稿すると、個人情報や機密情報の漏えいにつながるおそれがあります。個人アカウントを含め、自社で定めるSNS利用ルールを共有しておきましょう。
テレワークでは、画面ののぞき見、端末や書類の置き忘れ、公共の場での会話など、オフィス外ならではのリスクがあります。JIPDECが公開する「個人情報の取扱いに関する事故を起こさないために③ ーテレワーク時の注意点ー」なども参考にしながら、自社の勤務環境に合う内容を加えることが大切です。
参考:JIPDEC「プライバシーマーク 社内教育用動画『テレワーク時の注意点』を公開!」
Pマーク教育の進め方と実施方法

Pマーク教育を形だけの年次行事にしないためには、対象者と実施時期を決め、必要な教材を用意したうえで、自社に合う方法で教育することが大切です。集合研修だけでなく、eラーニングや動画、自主学習も選択できます。受講者の働き方や拠点数を踏まえ、無理なく続けられる方法を選びましょう。
| 実施方法 | 向いているケース | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 集合研修 | 質疑応答や事例検討を重視したい場合 | その場で質問や意見交換ができる |
| eラーニング・動画 | 拠点や勤務時間が分かれている場合 | 受講時期を分散しやすい |
| テキストによる自主学習 | 基礎事項を各自のペースで学ぶ場合 | 準備しやすいが理解度確認が別途必要 |
教育計画と教材の準備
教育前に、対象者、実施時期、教育内容、担当者、実施方法、理解度の確認方法を決めます。JIPDECの構築・運用指針では、教育実施計画を作成し、文書化することが求められています。
教材には、前述の4項目に加え、自社の規程や業務上の注意点を反映します。前年の教材を使う場合も、そのまま流用するのではなく、法令や社内ルール、事業内容などに変更がないかを確認してから使用しましょう。
JIPDECが公開する教育資料
JIPDECでは、教育担当者向けの社内教育用参考資料を公開しています。新入社員を含む全従業者向けの基本的な内容になっており、自社の個人情報取扱規程やルールを追記して利用できます。
さらに、社内教育用動画「個人情報の取扱いに関する事故を起こさないために」シリーズとして、「①個人情報保護の大切さ」「②メール誤送信に気をつけよう」「③テレワーク時の注意点」の3本も公開されています。教材を一から作るのではなく、公式資料を土台として自社独自の内容を加える方法も選択肢です。
参考:JIPDEC「お役立ちツール(社内教育用参考資料)のご案内」
集合研修による教育
集合研修は、講師から直接説明を受けながら、質問や意見交換ができる方法です。個人情報の取扱いで判断に迷いやすい場面や、事故・ヒヤリハットを題材にしたケーススタディを取り入れることで、受講者が自分の業務に置き換えて考えられます。
一方、勤務時間や拠点が分かれている企業では、全従業者を同時に集めることが難しい場合もあります。オンライン研修や自主学習との併用も含め、自社の勤務形態に合う方法を選びましょう。
eラーニング・動画による教育
eラーニングや動画は、複数拠点やシフト勤務がある企業でも受講機会を設けやすい方法です。受講履歴や理解度確認の結果を管理できる仕組みを利用すれば、教育記録を作成する際にも活用できます。
ただし、一般的な教材だけでは、自社の個人情報保護方針や事故発生時の報告先などを十分に伝えられないことがあります。共通教材と自社独自のルールを組み合わせて使うことがポイントです。
テキストを使った自主学習
テキストや社内資料を使った自主学習は、従業者が自分のペースで学べる方法です。通常業務と調整しやすいため、全員が同じ時間を確保しにくい企業でも導入できます。
一方、資料を配布しただけでは、内容を理解できたかを確認できません。Pマークでは教育の理解度を確認する手順が求められているため、確認テストや設問への回答などと組み合わせて実施しましょう。
Pマーク教育後の理解度確認と記録
Pマーク教育は、受講して終わりではありません。教育内容が従業者に伝わったかを確認し、理解が不十分な場合は必要なフォローを行います。また、教育の実施記録はPMSの運用上残しておく必要があります。理解度確認と記録を一連の流れとして扱い、次回の教育改善にもつなげましょう。
テストなどによる理解度確認
JIPDECの構築・運用指針では、教育の理解度を確認する手順を内部規程に含めることが求められています。テストは代表的な方法ですが、テストという形式だけが指定されているわけではありません。
○×問題や選択式の設問、ケーススタディなど、自社に合う方法で確認します。受講した事実だけを見るのではなく、業務で必要な内容を理解できているかを確かめることが重要です。
Pマーク教育テストの問題例
テストでは、制度用語の暗記だけでなく、実務上の判断を確認できる設問も入れると、教育内容の理解を確認できます。以下は問題例のため、実際に使用する際は自社の規程や教育内容に合わせて調整してください。
| 問題例 | 回答の考え方 |
|---|---|
| Pマーク教育の対象は正社員だけである。○か×か。 | ×。役員や契約社員、派遣社員なども対象になり得ます。 |
| Pマーク教育は年1回実施すれば、追加教育は不要である。○か×か。 | ×。少なくとも年1回に加え、必要に応じて適宜実施する手順が求められています。 |
| 個人情報を誤送信した場合、自分の判断だけで対応を終えてよい。○か×か。 | ×。自社で定めた報告・対応ルールに従います。 |
| 教育資料を配布すれば、理解度確認は不要である。○か×か。 | ×。教育の理解度を確認する手順が必要です。 |
理解が不十分な従業者へのフォロー
理解度確認で不足が見つかった場合は、再受講や個別説明、教材の再確認などを行い、必要な内容を改めて伝えます。テストを実施した場合も、点数だけを記録して終わらせず、間違えた内容を振り返る機会を設けることが大切です。
また、構築・運用指針のJ.4.2(力量)では、教育(J.4.3)とは別の要求として、事業者の個人情報保護に影響を与える業務をその管理下で遂行する者について、必要な能力が備わっていない場合は、必要な能力を身につけるための処置をとるとともに、とった処置の有効性を評価することが求められています。教育後のフォローも、自社の業務や役割に応じて行いましょう。
審査に備えて残す教育記録
JIPDECが公表する新規・更新申請の書類一覧では、教育の実施状況を記載するサマリー(新規は【申請様式7新規】教育実施サマリー、更新は【申請様式7更新】教育・内部監査・マネジメントレビュー実施サマリー)が必ず提出する書類に含まれています。一方、教育計画書や実施報告書、教材、理解度確認テストなどは、教育の実施状況を確認できる任意提出書類として示されています。
実施日、対象者、受講状況、教材、実施方法、理解度確認の結果などを、自社の内部規程に沿って記録しておきましょう。教育記録の保存期間は、構築・運用指針のJ.4.5.5(文書化した情報のうち、記録の管理)を踏まえ、自社で定めた記録管理のルールに従って管理します。
Pマーク教育を外部へ依頼する場合

社内だけで教材作成や講師対応まで担うことが難しい場合は、外部の教育サービスを利用する方法があります。外部へ依頼しても、Pマークの運用主体が自社であることは変わりません。自社の規程や業務内容を共有し、必要な教育内容を反映できるサービスかを確認しましょう。
外部サービスの利用が向くケース
教育担当者が他業務と兼任しており、教材更新や研修準備に十分な時間を確保できない場合は、外部サービスを利用する選択肢があります。情報セキュリティの新しい事例を取り入れたい場合や、社内講師だけでは扱いにくいテーマがある場合にも、外部支援を検討できます。
ただし、自社の個人情報保護方針や事故発生時の報告ルールなど、社内固有の内容まで外部事業者が把握しているとは限りません。研修前に必要な情報を共有し、自社の運用に合う内容へ調整することが大切です。
教材・研修内容と支援範囲の確認
サービスを選ぶ際は、一般的な情報セキュリティ研修だけでなく、Pマーク教育に必要な内容を自社向けに反映できるかを確認します。教材作成、講師派遣、オンライン研修、理解度確認、研修後のフォローなど、対応範囲も比較しましょう。
自社の事故・ヒヤリハットや社内ルールを教材へ反映できれば、受講者が日常業務に置き換えて考えられる内容になります。料金だけで決めず、教育の目的と必要な支援範囲が合っているかを見ることがポイントです。
コーチマモルの情報セキュリティ教育
情報セキュリティコンサルティング コーチマモル(Coach MAMORU)では、新入社員・全社員・中途社員など、対象者に合わせた情報セキュリティ教育を提供しています。企業の課題やセキュリティポリシーを踏まえたカスタマイズにも対応しています。
ケーススタディや情報セキュリティQuiz、グループディスカッションなどを組み合わせた実践型の研修も選べます。自社だけで教育内容を組み立てることが難しい場合は、研修方法を含めてご相談ください。
Pマーク教育に関するよくある質問
Pマーク教育では、毎年の教材更新や担当者の決め方、ISMS教育との兼ね合いなど、実際の運用で迷いやすい点があります。制度上求められている内容と、自社で決める運用ルールを切り分けて考えることが大切です。よくある3つの疑問に回答します。
Pマーク教育の内容は毎年同じでも問題ありませんか?
構築・運用指針【JIS Q 15001:2023準拠 ver1.0】では、教育教材を毎年一から作り直すことまでは求められていません。ただし、同じ教材を無条件に使い続けるのではなく、法令や社内ルール、業務内容、事故傾向などに変更がないかを確認する必要があります。なお、2026年7月17日に改正個人情報保護法が公布されており、JIPDECは構築・運用指針の改定について決まり次第公表するとしています。
変更があった場合は、該当箇所を更新して現在の業務に合う内容へ見直しましょう。前年の教材を活用する場合も、教育実施前の確認が大切です。
Pマーク教育の責任者は誰が担当しますか?
教育の担当や責任の所在は、自社のPMS運用体制に合わせて明確にしておきます。教育実施計画の作成、研修の実施、理解度確認、記録管理について、誰がどの役割を担うのかを内部で決めておくことが大切です。
担当者だけに業務が集中すると継続が難しくなるため、必要に応じて関係部署と役割を分担し、担当者が変わっても運用を引き継げる状態をつくりましょう。
PマークとISMSの教育はまとめて実施できますか?
実務上は、PマークとISMSで共通する情報セキュリティテーマを、同じ研修内で扱う方法が考えられます。ただし、両制度の要求事項は同一ではないため、一つの研修を実施すれば自動的に双方の要求を満たすとは限りません。たとえば、Pマークの構築・運用指針(J.4.3)は、個人情報保護方針、PMSに適合することの重要性及び利点、PMSに適合するための役割及び責任、PMSに違反した際に予想される結果の4項目を従業者に認識させることを求めています。一方、ISMSの要求事項を定めたJIS Q 27001:2023の箇条7.3は、情報セキュリティ方針、ISMSの有効性に対する自らの貢献、ISMS要求事項に適合しないことの意味の3項目について、組織の管理下で働く人々が認識をもつことを求めています。
それぞれで必要な教育・認識事項を確認したうえで、共通部分と制度ごとの内容を分けて設計しましょう。実施後も、双方の要求に沿った教育であることを説明できる記録を残しておくことが重要です。
まとめ:Pマーク教育を継続できる仕組みを整えよう
Pマーク教育では、従業者に対して少なくとも年1回、必要に応じて適宜教育を行い、理解度を確認する手順を定めることが求められています。対象は正社員だけではないため、自社の従業者を漏れなく把握し、教育を受けられる体制を整えておきましょう。
教育では、JIPDECの構築・運用指針で示される4つの事項を押さえ、自社の業務に応じてメールやSNS、テレワークなどのテーマを加えます。実施後は理解度を確認し、教育記録を残すことも必要です。社内だけで教材作成や研修運営を続けることが難しい場合は、外部サービスも活用しながら、自社で無理なく継続できる教育体制を整えましょう。





















