2020年1月1日働き方改革
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パワーナップ(積極的仮眠)の効果とは? 事例と共に紹介!

パワーナップ01
休憩時間に眠たくなり、ついデスクでうたたねをしてしまった……という経験は誰でもあるでしょう。確かに、昼食をとった後は眠気に襲われますよね。眠い状態で仕事を行なっても作業効率は上がらず、集中力が散漫になってしまいます。そんな中、改善策として「パワーナップ(積極的仮眠)」が大手企業で導入されるようになってきました。今回はこのパワーナップについて詳しく解説します。

パワーナップとは

パワーナップ02
「パワーナップ」とは、昼寝やうたたねを意味する「nap」と、「power up(パワーアップ)」を掛け合せて作られた造語です。日本語では「積極的仮眠」と呼ばれています。

NASAの研究結果でパワーナップが効果的であることが明らかに

NASAによる研究結果では、「パワーナップは効果的である」ということが明らかになっています。NASAの仕事、特に宇宙飛行士や航空機のパイロットには極度の集中力が求められます。そこでNASAは1994年に、集中力を維持させるための睡眠研究「Naps」を行ないました。

具体的には、航空機のパイロットを「パワーナップをとる人、とらない人」の2組に分け、その後の認知力や注意力を計りました。結果、認知力は34%、注意力は54%も向上したと報告されています。

昼食後14時~16時に眠気が来る原因は“血糖値”

昼食後に眠くなる原因として「満腹になって幸せホルモンが出ている説」「消化に血液が使われ、脳への血流が少なくなっている説」などが有名ですが、それらの医学的根拠はありません。そもそも、生命にかかわる脳への血流が少なくなってしまうのは、大変危険な状態です。

実は、食後の眠気に関する研究でこの謎が明らかになってきたのは1990年代のこと。ようやく脳内にある「オレキシン作動性ニューロン」と食後の眠気の関係が判明されました。オレキシン作動性ニューロンから分泌される物質をオレキシンといい、以下4つの特徴を持っています。

①人間の覚醒状態に関与する物質である
②オレキシンはニューロンがONのときに分泌される
③ニューロンがONの場合は覚醒状態、OFFの場合は次第に睡眠状態へと切り替わる
④ニューロンは身体の栄養状態によって活動が切り替わる

食事のあとは、血糖値が上がります。上昇幅は食べたものによりますが、血糖値が上がると脳脊髄液中にあるブドウ糖の濃度も変わり、ニューロンがスイッチをOFFに切り替えるのです。するとオレキシンが分泌されなくなり、身体は次第に睡眠状態へと誘われていきます。逆に、血糖値が低くなるとニューロンがONへと切り替わり覚醒状態へと誘われるのです。

さらに、暴飲暴食で血糖値を急に上げる行為も眠気を誘い集中力を低下させる原因になります。血糖値が急激に上がって急激に下がることを「血糖値スパイク(グルコーススパイク)」といいますが、この作用によって体は軽度の低血糖状態となります。低血糖状態になると、交感神経刺激症状(眠気や頭痛)が起こりやすくなってしまうのです。そして、低血糖状態が続くと身体はアドレナリンを分泌し、心拍数や血圧を上げようとします。このアドレナリンの作用により集中力が低下し、結果として負の循環を生んでしまうのです。

パワーナップの効果

パワーナップ03
上述したように、「パワーナップ(積極的仮眠)」は食後の眠気に大きく効果があるといわれており、そのメリットは以下の通りです。

● 疲れが取れる
● 認知力、注意力が上がる
● 作業効率の向上

現に日本でも、厚生労働省が2014年3月に公表した『健康づくりのための睡眠指針2014』において、午後の早い時刻に30分以内の短い昼寝をすることは眠気による作業能率の改善に効果的であると書かれています。

パワーナップの効果を最大限に引き出す方法

パワーナップの効果を最大限に出し、メリットを活かすにはいくつかルールがあります。
以下の項目を参考にしてみてください。

● 仮眠時間は20分~30分未満
● 体を横にして眠る、無理な場合は机に突っ伏す
● 光を遮断する
● 音は無音もしくはホワイトノイズを聞きながら
● 仮眠前にカフェインを摂取する

それぞれ詳しく見ていきましょう。

仮眠時間は20分~30分未満
眠りの深さには、浅めの「レム睡眠」と深めの「ノンレム睡眠」の2つがあります。普段眠るときはこれら2つの睡眠状態が90分周期で訪れるのですが、眠り始めだけノンレム睡眠に変わる時間が30分と短くなっています。そのため仮眠も最大でも30分未満にしておかないと、身体がノンレム睡眠に切り替わってしまい覚醒できなくなってしまうのです。パワーナップは「短時間で効果的な睡眠」を心掛けましょう。

体を横にして眠る、無理な場合は机に突っ伏す
30分未満でも、眠れば体も休めることができます。そのため本来は横になって寝た方が良いのですが、仕事場に仮眠室があるというところは少ないでしょう。もし横になって眠ることが難しい場合には、机に座って突っ伏して寝るようにしてください。

光を遮断する
光があるところで眠ろうとすると、眠気促進ホルモンと呼ばれている「メラトニン」の分泌が減ってしまい、眠りの質が悪くなります。普段の睡眠時に光を遮断するのと同様、パワーナップ時も光を遮断してください。

音は無音もしくはホワイノイズを聞きながら

ホワイトノイズとは、眠りの質を上げる音のことで「雨」「波」「風」などの音を指します。
これらを聞きながら寝ると効果的です。もちろん、無音でも構いません。

仮眠前にカフェインを摂取する
コーヒーや紅茶に含まれるカフェインには覚醒作用があるといわれており、これらは飲んでから効果が現れるまで約20~30分かかるのが特徴です。一方、パワーナップの適正時間も20~30分であるため、時間的にぴったり。パワーナップ前にはカフェインを取るようにしましょう。

パワーナップを導入している企業事例

ここからは、実際にパワーナップを導入している企業の事例とその効果を紹介します。

三菱地所株式会社の導入事例

不動産ディベロッパー大手の三菱地所株式会社では、2018年1月に仮眠制度を導入し、仮眠の有用性が明らかになっています。実際に12名の被験者に前半2週間を仮眠なしで過ごしてもらい、後半2週間を30分間仮眠ありの仕事環境で過ごしてもらいました。実験には、集中力を可視化するメガネ型ウェアラブルデバイス『JINS MEME』を使用しました。

その結果、30分の仮眠がある仕事環境のほうが約5ポイントの集中力のスコア向上が見られました。アンケート結果においても、80%の被験者が「これからも仮眠を継続したい」という項目に丸を付けています。

株式会社OKUTAの導入事例

住宅・マンションのリフォームを手掛ける株式会社OKUTAでも、パワーナップ制度を2012年から導入しています。この会社のパワーナップには以下4つのルールがあり、ルールを守ることで良い結果が出たと報告されています。

1 自分が眠いと感じたタイミングで仮眠OK
2 仮眠時間は、15〜20分程度まで
3 昼寝場所は各自デスクや社用車
4 パワーナップ中の社員に声は掛けない

制度導入から5年後、社員からは「午後の作業に集中できるようになった」「眠気によって起こるケアレスミスなどが大幅に減少した」「体調が優れない日にはとても助かる」など眠気以外の点にもメリットがあったという回答を得ています。

パワーナップ制度を導入して、仕事の効率を上げよう!

企業として成果や結果を出すためには、社員がいかにストレスや疲労を軽減させた状態で働けるかにかかっているでしょう。パワーナップの結果を出し続けている「グーグル」や「ナイキ」などの大手企業には仮眠室が導入されており、これらの企業ではパワーナップはもはや仕事の一環なのです。

日本でも徐々に浸透しつつありますが、「仕事中に寝るなんて」という声もあるようです。しかし、パワーナップは仕事の効率を上げ、企業の成果を底上げするための取り組みになります。まだ導入していない企業の総務担当者も、導入を検討してみてはいかがでしょうか?

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