法人向けPC(パソコン)の正しい廃棄方法は?処分のポイント・注意点
企業におけるパソコンの処分は、機密情報や顧客データの漏えいリスクを伴うため、慎重かつ適切に行う必要があります。さらに、法人の場合は廃棄に関する社内ルールや契約上の制約、環境負荷への配慮なども欠かせません。
本記事では、法人向けパソコンの正しい廃棄方法と、処分時に押さえておくべきポイント・注意点を分かりやすく解説します。安全かつ適切なPC処分のための参考にしてください。
法人向けPC(パソコン)を廃棄する際のルール
法人が所有するパソコンを廃棄する際には、単なる不用品処分とは異なる特有のルールが存在します。これらのルールを理解し遵守することは、法令違反の防止や環境負荷の軽減につながります。
産業廃棄物扱いになる
一般家庭用パソコンと異なり、法人で使用したパソコンは産業廃棄物に分類されるため、一般家庭の廃棄物とは異なり専門の処理が義務付けられています。適切な処理を怠ると、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)」に違反することとなり罰則が科される場合があります。
再資源化(リサイクル)する必要がある
パソコンにはレアメタルをはじめリサイクル可能な貴重な金属や資源が含まれているため、廃棄の際には再資源化を行い環境への負荷を抑えることが求められます。これは企業の社会的責任としても重要なポイントです。
産業廃棄物管理票(マニフェスト)に沿った手続きが必要
廃棄処理の過程は産業廃棄物管理票(マニフェスト)で管理され、処理の適正さを証明します。企業はこの書類を適切に管理し、処分が確実に行われたことを把握しなければなりません。
法人向けPC(パソコン)の廃棄方法
法人のパソコン処分では、法的な要件を満たしつつ、安全にデータを管理できる信頼性の高い方法を選ぶことが重要です。ここでは、代表的な廃棄手段とその特徴を見ていきましょう。
メーカー(システムベンダー)に依頼
パソコンを購入したメーカーやシステムベンダーに廃棄を依頼する方法です。
保証期間内やリース契約終了時に合わせて引き取りが可能なことも多く、廃棄証明書の発行など正式な書類も整うため、信頼性の高い処分が期待できます。
ただし、処分申請が1台ずつ必要になることが多いため、大量の台数を処分する際は手間や時間がかかる点は留意しましょう。なお、一部のメーカーでは、一般社団法人パソコン3R協会を通じて回収を代行している場合もあります。
【費用の目安】1台あたり3,000~4,000円程度(廃棄証明書発行時は別途費用がかかることがあります)
産業廃棄物処理業者に依頼
産業廃棄物の処理に特化した業者に依頼する方法で、複数メーカーのパソコンや、パソコン以外の産業廃棄物をまとめて処分したい場合に適しています。
専門の業者は法令を遵守した適正処理を行い、廃棄物管理票(マニフェスト)発行などの手続きも代行してくれるため、処理の透明性が確保され、安心して廃棄できます。
一方で、多くの業者はデータ消去サービスを標準提供していない場合が多いので、別途対応が必要な場合があります。業者を選ぶ際には複数の業者を比較検討するとよいでしょう。
【費用の目安】1台あたり1,000~4,000円程度(廃棄証明書の発行には追加料金がかかることがあります)
パソコンリサイクル業者に依頼
パソコンの資源回収やリサイクルを専門とする業者を利用することで、使用可能な部品の再利用や金属の回収により、費用を抑えられる場合があります。また、多くの業者が確実なデータ消去やセキュリティ対策に対応しており、情報漏えいリスクの軽減に役立ちます。
ただし、料金体系の明確さや実際の事業所の有無、環境配慮への取り組みなど、信頼できる業者かどうかをしっかり確認することが重要です。
【費用の目安】業者によって異なりますが、メーカー回収より安価なケースが多いです。
法人向けPC(パソコン)の廃棄する際の注意点
法人がパソコンを廃棄する際は、法令遵守だけでなく情報セキュリティや資産管理の観点からも細心の注意が必要です。
ここでは特に押さえておきたいポイントを解説します。
マニフェストの作成
法人パソコンの廃棄を外部業者へ委託する際には、必ず行わなければならない重要な作業があります。それが「産業廃棄物管理票(マニフェスト)」の作成です。マニフェストは、産業廃棄物が適正に処理されるまでの流れを記録・確認するための管理票で、不法投棄や不適切な処理を防ぐ目的で旧厚生省(現・環境省)によって制度化されました。広域認定制度に基づき認定処理業者へ処理を委託する場合はマニフェスト作成が免除されていますが、基本的には全ての法人に法律で義務付けられていると考えるべきです。
また、マニフェストには、紙のマニフェストと電子マニフェストの2種類があります。
複写式紙マニフェスト
公益社団法人全国産業廃棄物連合会が発行しており、各都道府県の産業廃棄物協会で購入可能です。複写式のため控えを自社に保管できます。
電子マニフェスト
公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センター(JWNET)が運営するシステムで、「排出事業者」「収集運搬業者」「処分業者」の三者すべてが加入していれば利用可能です。データは同情報処理センターが保存してくれるため、保管の手間が軽減され、検索や集計も容易になるというメリットがあります。
外部委託時には、どちらの形式を使うのか事前に確認し、必ず正確に作成・保管しましょう。
機密データの消去
パソコン内のデータは、ファイルを単純に削除しただけでは完全に消滅したとは言えず、実はHDD(ハードディスク)やSSD(ソリッドステートドライブ)上に残っています。特殊なソフトウェアを使えばデータを復元できることがあるため、経理情報・顧客情報・新製品の設計図・契約書データなどの機密情報が悪意ある第三者の手に渡ってしまうわないよう、廃棄前に確実に消去しなければなりません。
パソコン内のデータを完全に消去する方法としては、データ消去ソフトを使用する方法、物理的に記憶媒体を破壊する方法、または専門業者へ委託する方法があります。
- ・データ消去ソフト:上書き消去(複数回ランダムデータを書き込む方式)や米国国防総省規格(DoD 5220.22-M)に準拠した方式を採用すると、安全性が高まります。
- ・物理破壊:HDDやSSDを専用機器で粉砕・穴あけすることで、データを物理的に復元不可能にします。
- ・専門業者への委託:証明書の発行や作業の立ち合いが可能な業者を選ぶことで、コンプライアンス面でも安心です。
特に法人の場合、情報漏洩は信用問題や法的責任に直結するため、社内規定やISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)に沿った消去方法を徹底しましょう。
管理シールや資産台帳の記載を削除
企業のパソコンには資産管理用のシールやタグが貼られていることが多いですが、処分前にこれらを剥がし、資産台帳からも削除または廃棄済みの記録を行う必要があります。これにより、管理ミスや誤認を防ぎ、正確な資産管理が可能になります。
悪質業者に注意
パソコン廃棄には高い専門性が求められるため、信頼性の低い業者に依頼すると、不適切な処理や情報漏えいなど企業の信用失墜や法的責任につながる深刻なリスクがあります。業者を選定する際は、産業廃棄物処理の許可証を持っているか、セキュリティ対策が万全か、評判や実績を事前に確認しましょう。
特にメーカー以外の業者を利用する場合は、会社の規模や運営実態、過去の取引実績などを見極めることが不可欠です。実際に、極端に安い料金プランを提示する業者や、事業所を持たない個人業者の中には、回収後に不法投棄や不適切なデータ処理を行う悪質業者も存在します。
また、契約内容や料金体系が明確であるかどうかも重要な判断基準です。廃棄証明書の発行条件や追加費用の有無なども事前に確認し、信頼できる業者に依頼しましょう。
法人向けPC(パソコン)の廃棄の手順
パソコンを処分する際の大まかな流れは、下記の通りです。
- ①メーカーまたは業者(以下、委託先)の担当窓口に連絡する
- ②委託先から費用の見積もりをもらい、処理委託契約を結ぶ
- ③委託先が指示する方法でパソコンを送付する
- ④委託先の再資源化施設に送られ、処理される
- ⑤委託先から「廃棄証明書」や「資産滅却報告書」などの証明書が送付されて完了
パソコン廃棄+データ消去が同時にできるサービス
法人で使用していたパソコンを廃棄する際、本体の処分だけでなく内部データの完全消去まで同時に行うことが理想的です。もし廃棄とデータ消去を別々に依頼すると、その分だけ手間やコストがかかるだけでなく、データ漏えいリスクも増えてしまいます。
特に顧客情報・経理データ・社内の技術情報などは、漏えいすると企業の信用失墜や法的トラブルに直結します。そのため、廃棄とデータ消去をワンストップで安全に行えるサービスを選ぶことは、コスト削減とリスク管理の両面で非常に有効です。
その代表的なサービスの一つが、日本パープルの「機密処理サービス」です。
日本パープルの機密処理サービス
日本パープルは、パソコンの廃棄とデータ消去を一括で安全に行うための専門サービスを提供しています。単なる回収業者とは異なり、回収から運搬、破壊、証明書発行までの全工程を自社で厳格に管理しているのが特徴です。これにより、輸送中や保管中の情報漏えいリスクを限りなくゼロに近づけることができます。以下では、その具体的な安全対策を順にご紹介します。
情報セキュリティの教育を受けた専門スタッフが回収
パソコン回収を担当するのは、情報セキュリティに関する専門教育を受けたスタッフです。彼らは産業廃棄物処理の知識だけでなく、個人情報保護法や不正競争防止法など関連法令にも精通しています。これにより、回収から運搬までの全工程で情報漏えいリスクを極限まで抑えられます。
現金輸送と同レベルのセキュリティを施した完全密封車で運搬
回収されたパソコンは、現金輸送で使われるセキュリティレベルと同等の完全密封車両で運搬されます。車内は施錠・封印され、GPSで常時追跡されているため、輸送中の盗難や第三者による不正アクセスを徹底的に防止します。
24時間完全警備体制の機密処理施設
パソコンは、24時間警備員が常駐する専用施設に搬入されます。施設内には監視カメラが常時稼働し、入退室はセキュリティゲートとID認証で管理されます。外部からの侵入や機器の持ち出しは物理的に不可能な環境です。
米国防総省の厳格な基準をクリアした高性能破壊機で安全・確実なデータ抹消処理
HDDやSSDは、米国防総省(DoD)の厳格なデータ消去基準を満たす高性能破壊機で物理的に破壊されます。磁気消去や上書き消去と異なり、記憶媒体そのものを破壊するため、データ復元は一切不可能です。これにより、企業の重要情報が第三者に渡る危険性を完全に排除できます。
機密性を証明する証明書を発行
処理が完了すると、廃棄・データ消去が適切に行われたことを証明する公式証明書が発行されます。この証明書は、社内監査・取引先や顧客への説明・コンプライアンス対応など、多方面で活用できます。
法人向けパソコンは正しい手順を踏んで適切な廃棄を
法人で使用したパソコンには、顧客情報・契約書データ・社内資料など、外部に漏れると深刻な被害を招く機密情報が多く保存されています。これらを適切に処理せず処分すると、情報漏えいやコンプライアンス違反による法的リスクが発生しかねません。
安全な法人向けパソコン廃棄のためには、産業廃棄物処理法に基づく手続きやマニフェストの作成、そして確実なデータ消去が欠かせません。そのためには、実績や信頼性のある廃棄業者を選定することが重要です。今回ご紹介したルール・廃棄方法・注意点を踏まえ、法律遵守とセキュリティ対策を両立した安全なパソコン廃棄を徹底しましょう。
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