契約書の管理方法は?具体的な方法やメリット・デメリットを解説
企業活動や業務運営において欠かせない「契約書」
取引先との信頼関係を示す重要書類である一方、管理の手間やリスクもつきものです。
契約書がキャビネットに山積みになり、更新期限が迫っているのに該当書類が見つからず焦った経験はありませんか。
適切な管理方法を取らないと、紛失・改ざん・情報漏洩といった重大リスクや、検索・更新作業に費やす無駄な時間が雪だるま式に膨らみます。
この記事では、紙ファイルやExcel台帳といった従来型の管理から、データベース化や契約書管理システムまで具体的な手法を比較し、それぞれのメリット・デメリットと導入時のポイントを解説します。
自社に最適な管理体制を選び、コンプライアンス強化と業務効率化を同時に実現するヒントをつかんでください。
適切な管理を行い、トラブルや業務効率の低下を防ぎましょう。
契約書の管理とは
契約書の管理とは、企業や個人が締結した契約書を安全に保管し、必要なときにすぐに取り出せる状態にしておくことです。管理の対象には、雇用契約書、取引基本契約書、業務委託契約書、秘密保持契約書(NDA)など、さまざまな種類があります。
適切な管理は、法的リスクを回避するだけでなく、業務効率の向上にもつながります。
契約書の主な管理方法
契約書の管理方法には、従来から使われている紙ベースの手法から、近年導入が進むデジタル管理、さらには専用システムによる一元管理まで、さまざまな選択肢があります。
それぞれの方法には特徴があり、企業の規模や業務内容、管理体制によって最適な手法は異なります。以下では、代表的な契約書の管理方法を4つご紹介します。
紙の契約書をファイリング
従来から行われている一般的な方法です。契約書を紙で保存し、契約先や契約日ごとに分類してファイルやキャビネットに保管します。
エクセル台帳で管理
紙の契約書と併せて、契約情報(契約先・契約期間・更新日など)をExcel(エクセル)で一覧管理する方法です。管理情報の簡易的な検索や契約書の期限管理が可能です。
契約書をデータベースで管理
スキャンまたはPDF形式で契約書をデジタル化し、社内サーバーや共有フォルダなどに保存する管理方法です。キーワード検索などに対応しやすくなります。
契約書管理システムで管理
専用のクラウドサービスやシステムを利用して、契約書を一元的にデジタル管理します。台帳機能、検索機能、アクセス権設定、期限通知などの高度な機能を備えています。
ファイリングやExcelでの管理でのメリット
ファイリングやExcelを使った契約書の管理方法は、導入コストがほとんどかからず、すぐに始められるという点で多くの企業に採用されています。
特別なシステムやツールを導入する必要がなく、既存のファイルやExcelソフトを活用するだけで対応できるため、非常に手軽です。
また、これらの方法は長年多くの企業で使われてきたこともあり、操作に慣れている社員が多く、特別な研修や教育を行わなくても運用しやすいという利点があります。さらに、ITに苦手意識のある社員でも扱いやすく、社内のITリテラシーが高くない場合でも対応可能な点が大きな魅力です。
ファイリングやExcelでの管理でのリスク
紙のファイリングやExcel台帳による契約書管理は、手軽に導入できる一方で、いくつかのリスクも抱えています。
管理対象となる契約書の量が増えるにつれて手間がかかり、その限界が明確になり、トラブルや業務効率の低下につながる可能性も否定できません。
ここでは、代表的なリスクについて、具体的に解説します。
紛失や改ざん・破損
紙の契約書は物理的な媒体である以上、保管状態や取り扱いに大きく依存します。たとえば、火災や水害などの災害により一瞬で失われる可能性もありますし、書類の入れ間違いや誤って廃棄してしまうといったヒューマンエラーもめずらしくありません。
さらに、原本が1部しかない場合には、意図的な改ざんや内容の書き換えに気付きにくいという危険性もはらんでいます。
契約書は法的な証拠にもなり得る重要な書類であるため、万が一にもこのような事態が発生すると、企業にとって大きな損失になりかねません。
機密情報の漏洩
契約書には、取引条件、価格、業務内容、個人情報など、外部に漏れると深刻な影響を及ぼす情報が数多く含まれています。
紙の契約書をキャビネットや棚に保管している場合、物理的な鍵や管理体制が甘いと、社内の誰でも閲覧できてしまったり、外部の第三者に盗まれてしまったりする恐れがあります。また、Excel台帳をメールでやり取りしている場合、誤送信や外部漏洩のリスクも高まります。
こうしたセキュリティ面の脆弱性は、企業の信用を大きく損なうリスクにつながります。
契約書を探す時間・手間(業務効率の低下)
契約書が紙で大量に保管されていたり、Excel上の情報が整備されていなかったりすると、目的の契約書を探し出すのに時間がかかってしまいます。
ファイルの保管場所を把握している担当者が不在であったり、複数の台帳が併用されているケースでは、さらに混乱が生じます。その結果、確認業務や契約内容のチェックに無駄な時間がかかり、日常業務の効率を著しく下げてしまうのです。
属人化が進んでしまうと、引き継ぎや監査対応にも支障をきたします。
更新期限の把握・管理
契約には、更新日や終了日などの重要な期限が設定されていることが多く、それを適切に把握しておくことは非常に重要です。しかし、Excel台帳での管理では、契約書ごとの更新期限を通知するような機能はないため、担当者の目視やリマインダーに頼らざるを得ず、うっかり更新を見落としてしまうリスクがあります。
契約が自動更新されてしまって不利な条件が継続したり、逆に契約が切れてしまって取引が止まってしまったりするなど、ビジネスに重大な影響を及ぼす可能性もあるため、期限管理の仕組みには注意が必要です。
契約書管理システムを利用するメリット
近年、多くの企業で導入が進んでいるのが「契約書管理システム」です。
これは紙やExcelによる従来の管理方法の課題を解決し、契約書を一元的かつ効率的に管理できるクラウドベースまたはオンプレミスの専用ツールを指します。
契約書の電子化・デジタル管理が一般化する中で、業務効率化やセキュリティ強化の観点からも、導入を検討する企業が増加しています。
ここでは、契約書管理システムを導入することで得られる代表的なメリットについて詳しく解説します。
検索機能などによる業務効率化
契約書管理システムの大きな強みのひとつが、目的の契約書を瞬時に見つけ出せることです。契約先名や契約日、契約種別、担当者などの情報をもとに一覧化されているため、書類を1枚ずつ確認する必要がなくなります。また、PDFファイル内の全文検索に対応しているシステムも多く、必要な情報に即座にアクセスできます。これにより、契約書を探す手間が大幅に軽減され、確認やチェック作業のスピードが向上します。
人によって保管場所が異なる、担当者しか分からないといった属人化の課題も解消され、組織全体の業務効率が高まります。
細かな権限設定によるセキュリティの強化
契約書には企業機密や個人情報が多く含まれるため、誰がどの情報にアクセスできるかを厳密に管理する必要があります。
契約書管理システムでは、ユーザーごとに閲覧・編集・ダウンロード・削除といった権限を細かく設定することが可能です。たとえば、営業部門は自部門の契約書のみ閲覧可、法務部門は全契約書の編集・承認可など、役職や部門に応じた管理が行えます。アクセスログの記録機能が備わっているものも多く、不正アクセスや誤操作があった際にも原因を追跡でき、セキュリティリスクの最小化に貢献します。
情報漏洩のリスク軽減
クラウド型の契約書管理システムでは、通信や保存時にデータが暗号化されており、外部からの不正アクセスを防止する設計がなされています。パスワードポリシーの設定や多要素認証などを併用することで、より高いセキュリティレベルを維持することもできます。
紙のように盗難や紛失による物理的リスクもなく、メールの誤送信による漏洩も防止できます。災害時のバックアップ体制が整備されているサービスであれば、万が一のときもデータを安全に復旧可能です。セキュリティ対策が十分に施された環境で契約書を管理することで、企業の信用を守ることにもつながります。
契約期限通知で契約書の更新漏れを防止
契約書の中には、定期的に更新が必要なものや、自動更新を防ぐために解約手続きを要するものがあります。これらの更新期限を人の手だけで管理するのは限界がありますが、契約書管理システムであれば、更新日や満了日の事前通知が自動で行えるため、うっかり更新を忘れるといったリスクを減らすことができます。
通知のタイミングを数ヶ月前や数日前など自由に設定できるため、余裕を持った対応が可能です。これにより、契約条件の見直しや再交渉の機会を逃さず、不要な契約の継続や損失も防ぐことができます。
契約書管理システムを利用するデメリット
契約書管理システムは多くの利点を持つ一方で、導入時にはいくつか検討しておくべきポイントがあります。
まず、導入にあたっては一定の初期設定や運用ルールの整備が必要です。紙やExcelで管理していた契約書情報を整理・登録するには多少の手間がかかりますが、この初期対応をしっかり行うことで、運用後の効率化やトラブル防止につながります。
また、社内でシステムを活用してもらうには、基本的な操作方法の共有や、部門ごとの運用フローへのすり合わせが必要になります。ただし、多くの契約管理システムは直感的なUIやサポート体制が整っており、スムーズな定着をサポートしてくれる機能も充実しています。
導入コストについても、月額課金や契約数に応じたプラン設計がされているため、無理なくスモールスタートすることがおすすめです。自社の規模や契約件数に応じた適切なサービスを選ぶことで、無駄のない管理システム運用ができます。
契約書の適切な管理をするために必要なこと
契約書を適切に管理するには、単に保管方法を選ぶだけではなく、社内の運用ルールや体制も含めた総合的な見直しが欠かせません。とくに契約書の件数が多くなると、属人化や管理漏れのリスクが高まるため、一定の仕組みづくりが必要です。
ここでは、契約書管理を効率化・標準化するために企業が取り組むべきポイントを解説します。
契約書の管理ルールの見直し・策定
まず重要なのが、契約書をいつ・誰が・どのように登録し、どの段階でチェック・保管するかといった、社内でのルールづくりです。
契約書の名称や分類方法、ステータス管理(作成中/締結済み/終了など)を統一し、属人的な判断を排除することで、情報の一元管理と引き継ぎのしやすさが確保できます。すでに運用中のルールがある場合も、現場の声や実態に即して定期的に見直すことが大切です。
契約書の運用の管理体制の構築
次に、ルールを運用する体制づくりです。契約管理の責任者や管理部門を明確にし、他部署との連携体制を構築することで、契約書の登録ミスや管理漏れを防ぎやすくなります。また、情報セキュリティの観点からも、アクセス権限の設計や管理履歴の記録といった基本的な管理方針を共有しておくことが不可欠です。
こうした体制づくりをよりスムーズに進めるためにも、契約書管理システムの導入は大きな助けになります。ルールやフローをシステム上で可視化しやすくなるため、部門間の運用のばらつきが減り、契約情報の整理・検索・更新管理も効率化されます。システムを軸に据えたうえで、社内の運用ルールを固めていくことで、契約書管理の精度とスピードは大きく向上します。
契約書の管理方法のまとめ
契約書の管理は、企業の信頼や法的リスクに直結する重要業務です。
紙やExcelでの管理は手軽な反面、紛失や業務効率の低下といったリスクがあります。一方で、契約書管理システムは一定の費用は発生しますが、セキュリティや効率面で大きなメリットがあります。長期的な費用対効果を考えれば、業務時間の削減やリスク軽減のために必要な投資とも言えるでしょう。
企業の規模や契約件数、セキュリティ要件に応じて、自社に最適な契約書管理方法を選び、運用ルールを整備することが重要です。