2025年10月30日情報セキュリティ

クラウドサービスのセキュリティとは?対策方法やチェック基準を紹介

クラウドサービスが普及するにつれて、情報漏えいや不正アクセスといったセキュリティリスクへの対策「クラウドセキュリティ」の重要性が高まっています。

本記事では、クラウドサービスのセキュリティ対策方法やリスクを解説します。クラウドサービスを利用している企業やクラウド移行を検討している企業の担当者は必見です。

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クラウドセキュリティとは

クラウドサービスの基本的な仕組み

クラウドの種類とセキュリティへの影響

クラウドサービスプロバイダとクラウドサービスカスタマ

クラウドサービスにおける主なセキュリティリスク

情報漏えいリスク

設定ミスによるリスク

サイバー攻撃・マルウェア感染によるリスク

データ消失リスク

サービス停止リスク

クラウドサービスのセキュリティ対策方法

多要素認証

アクセス制御

データ暗号化

ログ管理と監視体制の構築

バックアップの保存

設定の見直し

仮想マシンのセキュリティ強化(要塞化)

クラウドサービスの選定/評価

セキュリティポリシーの策定

従業員教育

クラウドセキュリティに関する認証

ISO27017

CSマーク

CSA STAR

SOC2(SOC2+)

FedRAMP

クラウドサービスのセキュリティを強化しよう

クラウドセキュリティとは

クラウドサービスを利用する上で不可欠なのが、想定されるリスクに対するセキュリティ対策、すなわち「クラウドセキュリティ」です。これを強化するためには、以下の3つの観点への理解が不可欠です。

  • クラウドサービスの基本的な仕組み
  • クラウドの種類とセキュリティへの影響
  • クラウドサービスプロバイダとクラウドサービスカスタマ

それぞれについて解説しますので、確認しましょう。

クラウドサービスの基本的な仕組み

クラウドサービスとは、インターネット経由で必要なITリソースを提供する仕組みです。自社でサーバーやソフトウェアを持たずに、必要な時に必要な分だけ利用できるのが特徴です。

サービスの提供はクラウド事業者が行い、ユーザーは契約やログインを通じてアクセスします。これにより、ユーザーはコスト削減や柔軟な運用が可能になります。

クラウドの種類とセキュリティへの影響

クラウドは主にIaaS、PaaS、SaaSの3種類に分かれます。

  • IaaS︰インフラ全体を提供する形式。ユーザーの管理範囲が広くセキュリティ対策の責任が大きい点が特徴。
  • PaaS︰アプリ開発用の環境を提供。セキュリティ対策の一部は事業者が担う。
  • SaaS︰アプリケーションをそのまま利用可能。セキュリティの多くをプロバイダに依存。

サービスごとに対策の重要度が異なるため、それぞれの種類を理解することが大切です。

クラウドサービスプロバイダとクラウドサービスカスタマ

クラウドの運用では、プロバイダとカスタマ(ユーザー)の役割分担が重要です。プロバイダはインフラや基本的なセキュリティを提供しますが、ユーザーもアクセス管理やデータ保護の責任を負います。

このように、クラウド環境ではセキュリティの責任共有モデルが採用されており、双方が適切な管理を行わなければなりません。

クラウドサービスにおける主なセキュリティリスク

クラウドサービスにおける主なセキュリティリスクとして、以下の5つが挙げられます。

  • 情報漏えいリスク
  • 設定ミスによるリスク
  • サイバー攻撃・マルウェア感染によるリスク
  • データ消失リスク
  • サービス停止リスク

クラウドサービスを安全に利用するためには、これらのリスクを事前に把握し、対策を講じることが不可欠です。

情報漏えいリスク

クラウドサービスではインターネットを介してデータを管理・共有するため、第三者に情報が漏えいするリスクが常に存在します。特に、アクセス権限の設定ミスや、データの暗号化不足が原因となりやすく、機密情報や個人情報の漏えいに発展するケースもあります。

情報漏えいが発生すると企業が信用を失ったり法的責任に発展したりするおそれがあるため、適切なアクセス管理や暗号化対策が重要です。

情報漏えい時のリスクについては「情報漏えい時の損害について学ぼう!罰則や影響・事前の対策も解説」の記事で詳しく解説していますので、併せてご参照ください。

設定ミスによるリスク

クラウドの設定ミスは、セキュリティ事故の原因となります。

例えば、ストレージの公開設定を誤って「誰でもアクセス可」にしてしまうと、外部からの不正アクセスにつながるのです。特に管理画面が複雑なクラウド環境では、設定ミスに気づきにくい場合もあります。

こうしたリスクを避けるために、運用マニュアルの整備や設定内容の定期的な確認が大切です。

サイバー攻撃・マルウェア感染によるリスク

クラウドサービスも、標的型攻撃やランサムウェアなどのサイバー攻撃の対象になります。

特に、IDとパスワードのみで管理されている場合、不正アクセスによってマルウェアに感染したり、データが改ざんされたりするリスクが高まります。マルウェアが侵入すると社内ネットワーク全体に被害が及ぶ可能性もあるため、多要素認証やファイアウォールの導入など多層的な対策が求められるのです。

マルウェア感染については「マルウェア感染とは?最新の被害例と対応についてわかりやすく解説」の記事で解説しています。気になった方は、参考にしてください。

データ消失リスク

クラウド上のデータは、誤操作やシステム障害・第三者による攻撃など、さまざまな原因で消失するリスクがあります。クラウドに保存しているからといって必ずしも安全とは限らず、誤って削除したデータを復旧できないケースもあるのです。

データ消失を防ぐためには、定期的なバックアップと復旧体制の整備が欠かせません。バックアップがあれば、万が一データが消失した際にも復旧が可能です。

サービス停止リスク

クラウドサービスはインフラ障害やシステムトラブルによって、サービスそのものが一時的に利用できなくなるリスクもあります。

クラウドは高い可用性が特徴ですが、災害やプロバイダ側の不具合などでサービスが停止する可能性はゼロではありません。また、サービス自体が終了してしまうケースもあるのです。

サービスが停止し業務を継続できなくなると、事業や取引先に大きな影響を及ぼします。

クラウドサービスのセキュリティ対策方法

それでは、具体的にどのような対策を行うべきか、対策方法を10個紹介します。

  • 多要素認証
  • アクセス制御
  • データ暗号化
  • ログ管理と監視体制の構築
  • バックアップの保存
  • 設定の見直し
  • 仮想マシンのセキュリティ強化(要塞化)
  • クラウドサービスの選定/評価
  • セキュリティポリシーの策定
  • 従業員教育

セキュリティ対策は網羅的に行うことが大切です。まずは実施できるものから順に導入していきましょう。

多要素認証

多要素認証(MFA)は、IDとパスワードのみならずスマートフォンの認証アプリやSMSなどを利用して本人確認を行います。これにより、より安全なセキュリティを実現します。そのため、パスワードが万が一漏えいした場合でも、不正ログインのリスクを大幅に軽減できるのです。

特に、クラウド環境はインターネット経由でアクセス可能なため、多要素認証は効果的なセキュリティ対策といえます。導入には手間がかかりますが、それ以上に高い安全性が期待できます。

アクセス制御

アクセス制御とは、ユーザーごとにアクセスできる情報や機能を制限する仕組みです。

クラウドサービスでは、必要最低限の権限のみを与える、最小権限の原則に基づく運用が推奨されています。これにより、万が一アカウントが乗っ取られた場合でも、被害を最小限に抑えられるようになります。

また、役職や業務内容に応じて権限設定を行ったり、定期的に権限を見直したりすることも重要です。

データ暗号化

クラウド上に保存・送信されるデータは、第三者からの不正アクセスに備えて暗号化を行うことが重要です。特に、個人情報や機密情報を扱う場合、通信経路と保存先の両方とも暗号化を実施すると、より安全性が高まります。

暗号化にはSSL/TLSなどの通信暗号化と、ストレージレベルでの暗号化があります。データが盗まれても内容が解読されにくくなるため、データの暗号化は基本的かつ有効な対策です。

ログ管理と監視体制の構築

クラウド環境では、ユーザーのアクセス状況や操作履歴を記録するログ管理が必要不可欠です。ログを活用することで、不正アクセスや内部不正の兆候を早期発見できるようになります。

また、ログは問題発生時の調査や原因特定にも役立ちます。さらに、監視体制を整えてリアルタイムで異常検知できる仕組みを導入すれば、インシデントへの迅速な対応も可能になるのです。

バックアップの保存

クラウドサービスによっては自動バックアップ機能が提供されている場合もありますが、万全を期すためには利用者側での定期的なバックアップが必要です。データ消失や障害、サイバー攻撃などのリスクに備えるため、定期的なデータのバックアップが不可欠です。

特に、業務に直結する重要データは、クラウド上だけでなく外部ストレージやオンプレミスなど、複数箇所に保存するようにしましょう。また、バックアップデータからスムーズに復元できるよう、復元テストも定期的に実施することが望ましいです。

設定の見直し

クラウド環境は柔軟性が高い一方、初期設定のまま運用を続けるとセキュリティ上のリスクが生じやすくなります。そのため、クラウドサービスの利用開始時や、定期的に設定を見直して、不必要なポートやユーザーアカウントの削除・アクセス権限の調整などを行わなければなりません。

また、設定変更履歴の管理や第三者による評価を取り入れることで、設定ミスの防止やセキュリティの向上が期待できます。

仮想マシンのセキュリティ強化(要塞化)

クラウド上で運用される仮想マシン(VM)には、OSやミドルウェアが含まれるため、適切なセキュリティ対策が欠かせません。

要塞化とは、仮想マシンをセキュリティの観点から強化する取り組みを指します。具体的には、不要なサービスの無効化やポート制限、ファイアウォールの設定などが挙げられます。また、定期的なパッチ適用も要塞化の一環です。

これにより、外部からの侵入を防ぎ攻撃対象を減らせるようになります。

クラウドサービスの選定/評価

クラウドセキュリティを確保するには、信頼できるクラウドサービスプロバイダ(CSP)を選ぶ必要があります。セキュリティ対策の内容や運用実績、各種認証の取得状況などを比較・評価して選定を行いましょう。

また、自社の業務内容やリスクに応じて必要なセキュリティ要件を明確にし、それを満たすサービスを選ぶことも重要です。クラウドサービス契約前に慎重に評価することが、リスク回避につながります。

セキュリティポリシーの策定

クラウドサービスを安全に利用するためには、社内全体で守るべきセキュリティポリシーの策定が欠かせません。セキュリティポリシーには利用ルールや禁止事項、管理責任の範囲などを明文化し、従業員がクラウドサービスを扱う際の認識をそろえるようにします。

また、セキュリティポリシー策定後は定期的に見直し、クラウド環境や脅威の変化へ柔軟に対応させる必要があります。セキュリティポリシーの策定により社内全体のセキュリティ意識を高め、統一した運用を実現しましょう。

従業員教育

セキュリティ対策はシステムのみならず、従業員の意識や行動にも大きく左右されます。

例えば、フィッシングメールの開封やパスワードの使い回しが原因で、重大なインシデントが発生するケースもあります。そのため、定期的なセキュリティ研修や教育を実施し、クラウドサービス利用時の注意点や対処法を周知することが重要です。

全従業員のセキュリティリテラシーを高めることが、組織全体の安全性向上につながります。

クラウドセキュリティに関する認証

クラウドサービス選定の際、プロバイダが取得しているセキュリティ認証は、その信頼性を測る重要な指標となります。ここでは、主要なクラウドセキュリティに関する認証制度について解説します。

  • ISO27017
  • CS(クラウドセキュリティ)マーク
  • CSA STAR
  • SOC2(SOC2+)
  • FedRAMP

認証取得済みのサービスは、一定のセキュリティ基準を満たしていると考えられます。選定時の判断基準として積極的に活用しましょう。

ISO27017

ISO27017は、クラウドサービスに特化した情報セキュリティ管理策の国際規格です。クラウドの利用者と提供者の両方に向けて、セキュリティ上の責任を明示しています。

認証を受けた企業はクラウドサービスに関する情報セキュリティ管理体制を構築しているため、導入時の信頼性指標として活用できます。

CS(クラウドセキュリティ)マーク

CSマークは、日本国内におけるクラウドサービスの安全性を可視化する認証制度です。特定非営利活動法人日本セキュリティ検査協会(JASA)による認証を受けた企業に付与されます。

提供されるクラウドサービスが一定のセキュリティ基準を満たしていることを証明するため、導入企業にとって選定の目安になります。利用者が信頼できるサービスかどうかを判断するための基準となるのです。

CSA STAR

CSA STARは、アメリカのセキュリティ団体が提供するクラウドサービス向けのセキュリティ認証制度です。認証取得には自己認証、第三者認証、継続審査をクリアしなければなりません。そのため、セキュリティ体制の透明性や評価の信頼性が高いといえます。

世界中のクラウド事業者がCSA STAR認証を取得しており、国際的な信頼性を重視する企業に適した認証です。

SOC2(SOC2+)

SOC2(SOC2+)は、監査機関によって、クラウドサービスの運用体制やセキュリティ管理が適切に実施されているかを評価する報告書です。米国公認会計士協会(AICPA)が、システムやサービスをセキュリティ・可用性・処理の完全性・機密保持・プライバシーの5つの観点から監査します。

個人情報や業務データを扱う企業にとって、SOC2(SOC2+)は重要な信頼性の指標となります。

FedRAMP

FedRAMPは、アメリカ政府が定めたクラウドサービスのセキュリティ認証制度です。政府機関がクラウドサービスを利用する際に求める厳格な要件を定めており、高いセキュリティ基準が求められます。

アメリカ国内の政府機関がクラウドサービスを利用する際に義務付けられている、非常に厳格なセキュリティ認証制度です。この認証は、米国の連邦政府機関が求める最高レベルのセキュリティ要件を満たしていることを示し、米国市場でのサービス展開を目指す企業にとって、競争力を高める上で重要な要素となります。

クラウドサービスのセキュリティを強化しよう

クラウドサービスを安全かつ効果的に活用するためには、本記事で解説した多角的なセキュリティ対策の実施が不可欠です。クラウドセキュリティは、情報漏えいやサイバー攻撃といったリスクから企業を守り、事業継続性を確保するための基盤となります。

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