2025年11月26日情報セキュリティ
関連キーワード:

ChatGPTを企業が利用する危険性は?主なリスクや対策のポイント


2022年11月に米OpenAI社が公開したChatGPTは、登場からわずか数ヶ月で世界中に急速に普及し、企業や行政機関でも業務効率化や情報分析の手段として導入が進んでいます。現在ではMicrosoftやGoogleなどの主要企業が生成AI機能を自社サービスに統合し、ビジネスシーンにおける活用が一般化しつつあります。
一方で、ChatGPTをはじめとする生成AIの利用には、情報漏えい・著作権侵害・サイバーセキュリティなどの重大なリスクが潜んでいます。国内外ではこうしたリスクに対処するため、政府機関や大手企業が「生成AI利用ガイドライン」を策定するなど、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS/ISO27001)の観点から運用ルールを整備する動きが広がっています。
実際、生成AIが作成した虚偽の画像や文章がSNS上で拡散し、社会的混乱を招いた事例も複数報告されています。こうした背景から、ChatGPTを企業が安全に活用するためには、リスクを正しく理解し、適切な対策を講じることが不可欠となっています。

AIは、適切なルールのもとで活用すれば、企業のイノベーション促進や生産性向上、人材育成などに寄与する有望な技術です。
本記事では、企業がChatGPTを活用する際に注意すべき主なリスクと、ISMSの観点を踏まえた対策のポイントを解説します。ChatGPTをはじめとする生成AIの安全な利活用を検討する際の参考にしてください。

ChatGPTとは?注目を集める背景と企業での活用事例

ChatGPTをはじめとする生成AIは、今や企業活動のあらゆる領域に浸透しつつあります。
業務効率化や生産性向上といった直接的な効果だけでなく、データ分析・意思決定支援・顧客体験の向上など、ビジネスモデルそのものを変革し得る技術として注目されています。
本章では、ChatGPTの基本的な仕組みや普及の背景を整理しつつ、企業でどのように活用が進んでいるのかを具体的なシーンとともに紹介します。

ChatGPTの基本概要と普及のスピード

ChatGPTは、米OpenAI社が開発した大規模言語モデル(LLM:Large Language Model)「GPT」シリーズを基盤とする対話型AIです。人間のように自然な文章を生成できることから、質問応答、文章作成、要約、翻訳、プログラミング支援など、多様な用途で活用されています。
公開されたのは2022年11月ですが、わずか数か月で世界中に利用が拡大し、登録ユーザー数は史上最速のペースで1億人を突破しました。その後も継続的に機能がアップデートされ、音声入力・画像認識・マルチモーダル対応など、より実用的なAIツールへと進化を続けています。
2025年現在では、ChatGPTは単なるチャットボットの枠を超え、Microsoftの「Copilot」シリーズやOpenAIの「ChatGPT Enterprise」など、業務利用を前提としたサービス形態でも提供されています。こうした背景から、企業の生産性向上や情報分析の支援ツールとして、急速にビジネスインフラ化が進んでいます。

企業で進むChatGPTの活用シーン

企業におけるChatGPT活用の広がりは、業種や部門を問わず多岐にわたります。代表的な活用シーンとして、以下のような事例が挙げられます。

  • カスタマーサポートの自動化:問い合わせ対応やFAQ生成をChatGPTで補助し、オペレーターの負担を軽減。
  • マーケティング・広報分野:SNS投稿文や広告コピー、コンテンツの構想段階でのアイデア創出に活用。
  • 社内文書・報告書の作成支援:議事録の要約や文案のたたき台作成により、業務効率を大幅に改善。
  • プログラミング支援・技術文書生成:エンジニアがコードレビューやドキュメント作成を自動化し、開発スピードを向上。
  • 人材育成・教育研修:ChatGPTを対話型教材として利用し、自己学習を促進する仕組みづくり。

さらに、ChatGPTを自社専用のナレッジベースと連携させる「社内限定AIチャット」の導入も進んでおり、情報共有・ナレッジマネジメントを強化する企業も増えています。

企業がChatGPTを使う際の主なリスクと注意点


生成AIは業務効率化や生産性向上に寄与する一方で、利用方法を誤ると企業の情報資産や社会的信用を損なうリスクがあります。ここでは、企業利用において注意すべき主なリスクを4つの観点から整理します。

情報漏えいリスク:入力データが学習に利用される可能性

ChatGPTをはじめとする生成AIサービスでは、ユーザーが入力した情報がモデルの学習や品質改善に利用される可能性があります。
そのため、業務で機密情報や個人情報を入力すると、意図せず外部のAI学習データとして蓄積・再利用されるリスクがあります。
実際、多くの企業や公的機関ではこの懸念から、ChatGPTなどの生成AIを業務利用禁止または限定的利用に設定しています。OpenAIが提供する「ChatGPT Enterprise」や法人向けAPIプランでは学習データとして利用しない仕組みが整備されていますが、無料版や一般公開版を業務で利用する場合には、情報漏えいリスクを十分に考慮する必要があります。

著作権・知的財産リスク:生成コンテンツの法的懸念

ChatGPTは、インターネット上の多様な情報をもとに学習しています。そのため、生成された文章や画像、プログラムコードの中には、既存の著作物や第三者の知的財産権を侵害する可能性が含まれます。
例えば、AIが生成した記事や資料が、特定の作家・研究者・企業のコンテンツと酷似している場合、著作権法や不正競争防止法などの法的問題が生じる恐れがあります。
また、生成物の権利帰属が不明確であることから、商用利用時に「誰の著作物か」を明確にできないケースもあります。

誤情報・信頼性リスク:間違った情報を信じる危険

ChatGPTはあくまで「確からしい文章」を生成する仕組みであり、その内容が事実であるとは限りません。学習データに誤った情報が含まれていた場合、AIはそれをもとに誤情報を生成し、あたかも正しい内容のように提示することがあります。
このような「AIハルシネーション(AI幻覚)」によって誤った判断を下すと、企業の信用や業務成果に悪影響を及ぼす可能性があります。特に、法務・医療・金融など、正確性が求められる分野での無検証な利用は大きなリスクです。

倫理・セキュリティリスク:社内利用ルールと管理体制の不備

生成AIの導入が進む中で、企業には倫理的配慮とセキュリティ統制の両立が求められています。
不適切なプロンプト入力やAIの誤用によって、機密情報や顧客情報が外部に流出する、あるいは差別的・偏見的な表現を生成してしまうリスクも存在します。
このような事態を防ぐためには、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)やISO/IEC 27001の枠組みに準じた運用ルールの整備が不可欠です。

ChatGPTのリスクを回避するための企業向け対策


ChatGPTの便利さと引き換えに生じるリスクを管理するためには、企業として明確なルールと教育体制を整備することが不可欠です。ここでは、情報漏えい・著作権・誤情報の各リスクに対応するポイントを整理します。

情報漏えいを防ぐための運用ルールと教育

生成AIを業務で利用する場合、最も注意すべきは機密情報や個人情報の流出リスクです。
まずは、扱う情報の分類を明確化し、ChatGPTに入力してよい情報と入力禁止の情報を定義した運用ルールを策定することが重要です。
また、ルールを策定するだけでは不十分で、社員への周知と教育も必要です。具体的には以下のような取り組みが考えられます。

  • 社員向けの社内ガイドラインやFAQの作成
  • 定期的な研修やハンズオンでの注意喚起
  • 利用ログの監査やアクセス権管理の導入

ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)やISO/IEC 27001の枠組みに沿った運用を組み込むことで、社内でのリスク管理を制度的に強化できます。

著作権トラブルを防ぐための法的リテラシー強化

生成AIは既存の著作物や知的財産権に基づく学習を行っている可能性があります。そのため、AIが生成した画像や文章、コードを業務で利用する際には法的リスクの把握が欠かせません。
企業としては、以下の対策が有効です。

  • 生成物の権利関係や出所を確認する
  • 法務部門や外部専門家の助言を受ける
  • 商用利用や社外公開前に内部チェックを行う

このように、法的リスクに対するリテラシーを組織全体で高めることが、著作権トラブルを未然に防ぐ第一歩となります。

誤情報への対策:社内チェックと検証体制の構築

ChatGPTによって生成される内容が必ずしも正確とは限りません。誤情報(AIハルシネーション)による判断ミスは、企業の信用や業務成果に直接影響します。
対策としては、以下のような仕組みが重要です。

  • 生成結果の事実確認プロセスを設ける
  • 信頼性の高い一次情報や公式資料と照合する
  • 社内での承認フローやレビュー体制を整備する

「AIの回答=正しい」と過信せず、検証プロセスを組み込むことが安全利用の基本です。

安全に使うための代替手段:ChatGPT Enterpriseの活用

無料版や一般公開版のChatGPTは、入力データが学習に利用される可能性があります。業務利用を安全に行うには、企業向けに設計されたプランの活用が有効です。
例えば、ChatGPT Enterpriseでは

  • 入力データがモデル学習に使用されない
  • 組織内でのアクセス制御やログ管理が可能
  • SLAやサポート体制が整備されている

これにより、情報漏えいや法的リスクを最小化しつつ、業務効率化のメリットを享受できます。

生成AIに関する法規制とガイドラインの最新動向

生成AIの活用が広がる中、国内外で法規制やガイドラインが整備されつつあります。企業が安全かつ適法にAIを活用するためには、最新動向を把握した上で自社ルールや倫理・コンプライアンス体制を整備することが重要です。

国内外で進むAIガイドライン・法規制の流れ

国内では総務省や経産省などが中心となり、生成AIの安全利用に関するガイドラインを策定しています。2023年には統合的な指針が示され、個人情報保護や機密情報の取り扱い、著作権や知的財産の遵守などが整理されました。
その後も、個別省庁や業界団体による追加のガイドラインや見直しが進んでおり、企業は最新の指針に基づいた対応が求められています。
海外でも、EUのAI規制(AI Act)やアメリカの国家AI戦略など、企業の利用ルールやリスク管理を義務付ける動きが進んでいます。グローバルに事業展開する企業はこれらを踏まえ、国内外の規制動向を同時にチェックする必要があります。

企業が自社ルールを作成する際のポイント

自社ルールやガイドラインを策定する際には、以下の点を押さえることが重要です。

  1. 既存規程との整合性:ISMS(ISO/IEC 27001)やプライバシーマークなどの認証規程、社内規定と整合性を取ることで、ルールの遵守が容易になります。
  2. 利用対象情報の明確化:ChatGPTや生成AIに入力してよい情報、禁止すべき情報を明確化します。機密情報や個人情報の取り扱いを定義することは、情報漏えいリスク低減に直結します。
  3. 運用ガイダンスと教育の整備:社員がルールを理解・遵守できるよう、社内マニュアル、FAQ、ハンズオン研修などを用意します。シャドーITの防止策としても効果的です。

AI倫理とコンプライアンスの整備

生成AIの利用には、法規制だけでなく倫理・社会的責任も考慮する必要があります。企業としては以下の観点が重要です。

  • 倫理規範の明文化:差別や偏見の助長、誤情報拡散を防ぐための行動規範を策定します。
  • コンプライアンス体制の構築:法務部門や情報セキュリティ部門と連携し、AI利用の審査・承認フローを設定します。
  • モニタリングと改善:利用状況や生成結果を定期的に監査・レビューし、リスクや運用ルールの改善を継続します。

これにより、生成AIの導入による効率化とイノベーションの推進を実現しつつ、法令遵守や社会的責任を果たすことができます。

安全にChatGPTを活用するためのステップ

生成AIを業務に取り入れる際は、便利さのみに着目せず、「どのように安全に使うか」を明確にすることが重要です。ここでは、ChatGPTをはじめとした生成AIを社内で活用する際の基本ステップを解説します。

社内ポリシーの整備と教育

まず行うべきは、AI利用に関する社内ポリシーの整備です。
利用目的・禁止事項・情報の取り扱いルールを明文化し、全社員に周知します。ポリシーには以下の内容を含めると効果的です。

  • ChatGPTなど外部AIサービスを利用する際の承認フロー
  • 入力禁止情報(個人情報・社外秘・顧客データなど)の明確化
  • AIが生成した情報を利用・公開する際のチェック手順

これらのルールを策定するだけでなく、社員教育・研修の実施も不可欠です。
ガイドラインを配布するだけではなく、実際のプロンプト例や失敗事例を交えたワークショップを行うことで、理解度が高まり、誤用の防止につながります。
特に、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)やISO/IEC 27001を運用している企業では、AI利用ルールを既存の情報セキュリティ教育プログラムに組み込むことで、継続的なリスク管理が可能になります。

利用範囲の明確化と監査体制の構築

次のステップは、ChatGPTをどの業務領域で、どの範囲まで利用するかを明確にすることです。
無制限な利用はリスクを高めるため、業務プロセスごとに利用可否や承認基準を定義する必要があります。
具体的には以下のようなステップで整理します。

  1. 業務別に利用可否を定義する:例えば、文章要約や資料ドラフト作成は可とし、顧客データ分析や契約書作成は要承認など。
  2. 利用ツール・アカウントの管理:ChatGPT Enterpriseなどの公式サービスを用い、アカウント単位で利用範囲を制限・監査します。
  3. 利用ログ・生成結果の監査:利用履歴の記録と定期的なレビューを行い、不適切な利用がないかを確認します。監査記録はISMS文書として保存しておくと、監査対応にも役立ちます。

このように、ポリシー策定と利用範囲の明確化、そして定期的な監査を組み合わせることで、ChatGPTの利便性を保ちながらリスクを最小限に抑えることができます。

専門家に相談してリスク管理を強化しよう

生成AIの導入や活用においては、利便性の裏に潜むリスクを正確に把握し、適切に管理することが重要です。社内だけでルールを作り、社員教育や監査体制を整えることも可能ですが、外部の専門家の知見を取り入れることで、より精度の高いリスク管理やルール整備が可能になります。

情報セキュリティコンサルティング「Coach MAMORU」とは

「Coach MAMORU(コーチマモル)」は、ISMS(ISO27001)やプライバシーマーク取得支援など、情報セキュリティ分野で豊富なコンサルティング実績を持つ専門サービスです。
課題の把握から運用、定着まで一貫して支援することが可能で、企業の事情や規模に応じてサービス内容を柔軟にカスタマイズできます。生成AIを含めた新しい技術の導入に関しても、最新の知識やトレンドを踏まえた最適なアドバイスを提供し、組織文化の構築や事業の成長に貢献しています。
また、ChatGPTのような生成AIの利用だけでなく、従業員教育や機密情報の管理など、あらゆる情報リスクに対応できる点も特徴です。専門家による支援を受けることで、シャドーITの利用や規則違反といった潜在リスクを未然に防ぎ、社内の安全運用体制を効率的に整備できます。
生成AIに関するガイドラインは今後もアップデートが予測されるため、最新情報に基づいた運用ルールの見直しや改善を行う際にも、外部専門家の意見を取り入れることが有効です。
情報セキュリティや生成AI活用に関する課題や進め方にお困りの場合は、一度「Coach MAMORU」に相談してみてはいかがでしょうか。

おすすめサービスはこちら

まとめ:ChatGPTリスクを正しく理解し、安全に活用する

ChatGPTをはじめとした生成AIは、業務効率化やアイデア創出など、企業に多くのメリットをもたらす技術です。しかし、その利便性の裏には、情報漏えいリスクや著作権・知的財産に関わる法的リスク、誤情報による判断ミス、社内ルールや管理体制の不備など、多様なリスクも存在します。これらのリスクを正しく理解し、適切に管理することが、必要不可欠です。
社内ポリシーの整備や社員教育、利用範囲の明確化、監査体制の構築、国内外の最新ガイドラインや法規制を踏まえたルール作りや、倫理・コンプライアンスの整備も欠かせません。
外部専門家の支援を活用すれば、ルール策定から運用・教育まで一括でサポートを受けられ、実効性の高い体制構築が可能です。
リスクを正しく理解し、適切な管理策を講じながら、情報セキュリティや生成AI利用の専門家の意見も取り入れることで、安全で効果的な活用が可能になります。専門家の支援を受けながら、社内の運用体制や教育を継続的に整備していくことが、企業にとっての最善策と言えるでしょう。

おすすめサービスはこちら

カテゴリー:情報セキュリティ
関連キーワード: