会社の大掃除は義務?作業内容やオフィスの効率的な掃除方法を解説
年末が近づくと、会社やオフィスで「大掃除」を行う企業も多いのではないでしょうか。オフィスの整理整頓は日々の業務効率に直結するだけでなく、労働環境の安全性や衛生面の確保という観点からも重要です。
実はこの「会社の大掃除」、労働安全衛生法とも関係があり、作業内容によっては企業として対応が求められるケースもあります。
デスク周辺は日常的に片付けられていても、エントランスや窓、給湯室、OA機器周辺など、日々の業務では手が回らない場所が多く存在します。だからこそ、年末の大掃除はこうした普段は掃除できない箇所を徹底的に清掃し、職場環境を整える絶好のタイミングです。
本記事では、会社の大掃除は義務なのか?労働安全衛生法との関係性、具体的な清掃作業の内容、そして広いオフィスを効率よく掃除するためのコツやおすすめグッズまで、わかりやすく解説します。
会社の大掃除は義務?法律で定められている内容とは
オフィスや事業所の清掃は、実は「やったほうがいい」だけでなく、一定の基準においては法律でも義務づけられていることをご存じでしょうか?
ここでは、会社の大掃除に関わる法的なルールについて詳しく解説します。特に「労働安全衛生規則」に定められた内容は、すべての事業者にとって重要なポイントです。
労働安全衛生規則で定められた清掃義務
労働安全衛生法に基づく「労働安全衛生規則」では、職場の清掃や衛生管理について明確なルールが設けられています。
第619条には、「事業者は、労働者の健康保持のため、作業場、便所、休憩室、食堂などを清潔に保つよう努めなければならない」と明記されており、作業場所や共用スペースの定期的な清掃が企業の義務と位置づけられています。
さらに、オフィスでの大掃除についても規則に基づく記述があり、「日常行う清掃のほか、大掃除を6月以内ごとに1回、定期的に、統一的に行うこと」が求められています。これは、厚生労働省令により定められた正式なルールであり、単なる社内イベントではなく、法令遵守の観点からも計画的に実施すべきものであることが分かります。
定期的な大掃除を行う目的と企業の責任
オフィスで大掃除を行う目的は、散らかった状態によって業務効率が低下したり、安全リスクが高まったりするのを防ぐことです。ホコリやゴミの蓄積が火災・感染症・機械トラブルの原因となることから、企業にはこれを未然に防ぐための措置が求められます。
日常清掃では手が届きにくい部分も、定期的な大掃除によってリセットされるため、従業員の健康・安全を守るうえで非常に重要な役割を果たします。
清掃を通じて整理整頓の習慣が社内に浸透することで、生産性や業務効率の向上にもつながります。
企業には、労働者が安心して働ける環境を提供する責任があり、大掃除はその責任を果たすための実践的なアクションのひとつと言えるでしょう。清掃を通じて配線の劣化やカビ・害虫の発生などのリスクを早期に発見できるというメリットもあります。
罰則はある?知っておきたい注意点
では、もし清掃義務を怠った場合、企業にはどのようなペナルティがあるのでしょうか?
労働安全衛生規則に基づく違反行為が認められた場合、状況によっては行政指導や是正勧告、最悪の場合は罰則が科される可能性があります。
たとえば、定期的な清掃を怠ったことで、従業員がケガや健康被害を受けた場合、使用者責任や安全配慮義務違反として企業が責任を問われることもあります。
また、労働基準監督署の立ち入り調査の際には、職場の衛生状態もチェック項目の一つとなっているため、常に清潔な環境を維持する意識が重要です。
オフィスの大掃除を効率的に進めるための計画づくり
広いオフィスを無駄なく、効率よく掃除するには、事前の計画が欠かせません。行き当たりばったりで進めてしまうと、必要な道具が足りなかったり、作業が偏ったりして、かえって時間がかかることもあります。ここでは、大掃除をスムーズに実施するための計画づくりのポイントを4つのステップに分けて解説します。
1. 日程を早めに決めてスケジュールを共有
まず最初に取り組むべきなのは、大掃除を行う日程の決定です。年末の大掃除は、12月の最終週に実施されることが多く、比較的予定を立てやすいですが、労働安全衛生規則では「6カ月以内ごとに1回の大掃除」が定められているため、年末に加えて6月頃にも大掃除を行う必要があります。この中間時期は繁忙期と重なるケースもあり、スケジュールの調整が難しくなることがあるため、できるだけ早めに実施日を決め、社内全体に周知しておくことが大切です。
2. 掃除範囲と担当者・必要な道具をリスト化
日程が決まったら、次に大掃除を行う箇所を具体的に洗い出します。。どこを掃除するのかが明確になれば、それぞれにどのような清掃道具が必要になるのかも見えてきます。同時に、誰がどの場所を担当するのかも決めておくと、当日の混乱を避けられます。たとえば、エントランスや給湯室、会議室、OA機器周辺など、普段手が回らない箇所をリストアップし、担当を割り振っていくことで、作業の偏りを防ぎ、効率よく進めることができます。
また、必要な清掃用品(雑巾、モップ、ガラスクリーナー)やゴミ袋、手袋などは、当日までに漏れなく準備しておくことが重要です。
3. 前日までにできる準備を終わらせておく
大掃除をスムーズに進めるためには、当日を迎える前にできることを済ませておくこともポイントです。たとえば、不要になった備品や書類をあらかじめまとめておくことで、掃除当日に「捨てる・捨てない」の判断に時間を取られずに済みます。また、不用品の量が多い場合は、事前に不用品回収業者に依頼しておくと、当日の作業負担も軽くなります。デスク周りの整理整頓も前日のうちにある程度済ませておけば、当日はすぐに掃除に取りかかることができ、作業時間を大幅に短縮できます。
4. 当日の流れと進捗チェックのポイント
大掃除当日は、あらかじめ決めておいた掃除範囲や担当者に従って作業を進めていきますが、現場が混乱しないように全体の進行役を置いておくと安心です。開始前には、簡単に全体の流れや注意点を共有し、各自が自分の担当エリアに集中できるようにします。また、途中で状況を確認しながら、予定通りに進んでいるかをチェックすることで、遅れている箇所へのフォローや段取りの修正がしやすくなります。最後に全体の仕上がりを確認し、不足している部分がないかをチェックしたうえで、作業を完了させましょう。
進捗状況の把握と柔軟な対応ができる体制を整えることで、計画倒れを防ぎ、全体の満足度も高まります。
大掃除で気をつけたい基本ルール
大掃除は、普段行き届かない場所をきれいにできる貴重な機会です。しかし、無理な作業や準備不足のまま進めると、時間がかかりすぎたり、けがやトラブルにつながったりすることもあります。
ここでは、大掃除を安全かつ効率的に進めるために押さえておきたい基本的なルールを3つの視点から紹介します。
完璧を目指さず「全体をまんべんなくきれいに」
大掃除というと、完璧を目指して意気込んでしまいがちですが、時間にも人手にも限りがあるため、全体をまんべんなくきれいにすることを最優先に考えることが重要です。特定の場所に時間をかけすぎると、他のエリアが手つかずのまま終わってしまうことにもなりかねません。オフィス全体のバランスを見ながら、汚れが目立つ部分や優先度の高い場所から効率よく取り組みましょう。
細かい部分の掃除にこだわりすぎず、「今年の汚れは今年のうちに」という気持ちで、オフィス全体の清潔感を整えることをゴールに設定するとよいでしょう。
普段できる掃除は大掃除当日までに済ませる
大掃除当日にすべての清掃をこなそうとすると、作業が予定通りに終わらなかったり、肝心な場所の掃除に時間が回らなかったりすることがあります。そうならないためにも、普段から掃除できる場所は、大掃除当日を迎える前に済ませておくことが大切です。
たとえば、各自のデスク周りや書類の整理、不要品の処分などは、通常業務の合間に少しずつ進められます。事前にこうした作業を終わらせておくことで、大掃除当日は共有スペースや高所、機器周辺など、日頃手が届きにくい場所に集中できるようになります。
安全面の確認(感電・転倒・薬品の扱い)
掃除中の事故やケガを防ぐためには、安全面への配慮が何より重要です。特に注意したいのが、電源の入った状態での掃除による感電リスクや、床が濡れている状態での転倒事故です。電源コードがからまっていたり、足元に置いた備品につまずいたりしないよう、作業前には周囲の安全確認を徹底しましょう。
また、洗剤や薬品を使用する際は、取り扱い方法を必ず確認し、必要であれば手袋やマスクを着用します。オフィスでは高価な機器や精密機材も多いため、水や薬品の扱いには特に注意が必要です。万が一に備えて、消火器の場所や応急処置の方法も事前に確認しておくと安心です。
場所別:オフィスの掃除チェックリストとコツ
大掃除の準備が整ったら、いよいよ当日の作業に取りかかります。ここでは、オフィス内の各場所ごとに掃除のポイントや注意点をまとめました。場所ごとの特性に合った方法で効率よく進めることで、見た目の印象も働きやすさも大きく改善されます。
エントランス・共用スペースの掃除
オフィスの顔ともいえるエントランスは、来客が最初に目にする場所であり、会社全体の印象を左右する重要なスペースです。ここでは、ドアやガラス窓の汚れ、床のホコリやマットの洗浄に注目しましょう。
マットは、中性洗剤とブラシを使って、40℃程度のぬるま湯に浸して洗浄すると、泥やほこりがしっかり落ちます。ドアノブや窓ガラスは指紋や水滴汚れが目立ちやすいため、繊維の残らないクロスやスクイジーのようなガラス用ツールを使ってムラなく仕上げるのがコツです。共用のラウンジや打ち合わせスペースなども、イスやテーブルの脚元まで丁寧に掃除して清潔感を保ちましょう。
水回り(給湯室・洗面所)の掃除
水回りは汚れやすく、衛生面でも注意が必要な場所です。特に、ぬめりや水アカ、石鹸カス、カビといった頑固な汚れが溜まりやすいため、専用の洗剤やブラシを使ってしっかり落とすことが求められます。
滑りやすい床やシンク周辺は、次亜塩素酸ナトリウム系の洗剤を使用すると効率よく汚れを分解できます。細かい部分には、スポンジや歯ブラシを使って、排水口や蛇口の根本まで丁寧に掃除しましょう。衛生面を重視しつつ、ニオイ対策も兼ねて清掃することが大切です。
パソコン・OA機器の掃除
業務に欠かせないパソコンやコピー機などのOA機器には、日々の使用で細かなホコリが蓄積しがちです。そのままにしておくと、パフォーマンスの低下や故障の原因になるため、定期的なメンテナンスが必要です。
掃除の際は、必ず電源を落としてから行いましょう。静電気でホコリが付着しやすいため、静電気除去機能のあるブラシや、狭い隙間のホコリを吹き飛ばせるエアダスターなどを使うと効果的です。水の使用は厳禁なので、乾拭きでもしっかり汚れを落とせるマイクロファイバークロスなどを使用し、端子部分や画面などは特に丁寧に仕上げましょう。
照明・天井・空調フィルターの掃除
高所にある照明器具や空調フィルターは、日常的な掃除が難しいため、ほこりや汚れが溜まりやすい場所です。照明カバーに汚れがついたままだと、照度が落ちて職場全体が暗く感じられることもあります。
カバーを取り外す際には破損に注意しながら、水洗いや拭き掃除を行いましょう。手の届かない場所は、安全な脚立や専用の高所用モップを使用して作業してください。空調フィルターは取り外して中性洗剤で洗い、しっかり乾かしてから戻すようにします。カビやニオイ対策にもつながる重要な清掃ポイントです。
オフィスチェア・デスク周りの掃除
個人の作業環境として使われているデスクやチェア周辺も、大掃除では重点的に清掃したい箇所です。チェアは素材によって適切な掃除方法が異なります。
布張りのオフィスチェアは柔らかいブラシでホコリを浮かせたあと、ぬるま湯を含ませたタオルで丁寧に拭き取ります。革張りのは水拭きをすると変色してしまうことがあるため、革専用のクリーナーで表面を拭き取り、乾いた布で仕上げると風合いを損ねずに清潔に保てます。ビニールレザーの場合は中性洗剤で汚れを落とし、最後に水拭きをしてから乾かすとよいでしょう。
デスクの引き出し内やキーボード周辺など、細かい部分も忘れずに清掃しましょう。
ブラインド・カーテンの掃除
ブラインドやカーテンは見落とされがちですが、静電気によってホコリが付着しやすく、長期間放置するとアレルギーや空気の汚れの原因になることもあります。
ブラインドは乾いた布で軽くホコリを落としてから、洗剤を吹きかけ、水拭きします。細かい隙間に布が入りにくい場合は、薄手の素材や不要になったストッキングなどを活用すると、スムーズに掃除できます。カーテンは取り外して洗濯できるものが多いため、年に一度の大掃除のタイミングで洗ってしまうのがおすすめです。
大掃除で出た不用品の処分方法
オフィスの大掃除を行うと、古くなったOA機器や破損した家具、使わなくなった備品など、思いのほか多くの不用品が出てくるものです。これらは日常的なゴミとは違い、普段使用しているゴミ袋に入れて捨てることができないものも多いため、あらかじめ処分方法を決めておくことが大切です。
ここでは、オフィスから出る不用品の処分方法について、ケース別にわかりやすく解説します。
粗大ゴミや大型廃棄物は事前に業者手配
大掃除の際に出た大型家具や壊れた什器などは、普段の可燃ごみや不燃ごみと同様に処分することはできません。特にオフィスで出た大量の粗大ゴミは、自治体の回収対象外となっていることが多く、一般的には民間の粗大ゴミ回収業者に処分を依頼する必要があります。
業者によっては回収に日数がかかる場合もあるため、大掃除当日に処分できるよう、早めに手配しておくことが重要です。また、搬出経路やエレベーター使用の可否など、現場の状況についても事前に共有しておくと作業がスムーズになります。
リサイクル・買取サービスを活用する
すぐに処分するのではなく、リユース・リサイクルを前提に売却を検討するのも、コスト削減と環境配慮の観点から有効な選択肢です。中古のオフィス家具やOA機器は一定の需要があるため、オフィス用品買い取り専門店やリサイクルショップで買い取ってもらえる可能性があります。
より高く売却するためには、付属品がそろっているか、取扱説明書や未使用パーツが残っていないかを確認しておきましょう。また、見た目の印象が査定額に影響することもあるため、査定前に機器を掃除し、できるだけ清潔な状態にしておくのが理想的です。業者によってはオフィスに直接訪問して査定してくれるサービスもありますので、タイミングを合わせて周辺の掃除も済ませておくと印象が良くなり、査定額アップにつながることもあります。
機密書類・重要文書は専門サービスで処分
不要になった書類の中には、機密情報や個人情報を含むものもあるため、処分には十分な注意が必要です。書類も単にゴミとして破棄するのではなく、専門の文書処理サービスやシュレッダー処理業者など、安全に廃棄できる方法を選びましょう。これらのサービスでは、回収から溶解・廃棄までを一貫して行い、情報漏洩リスクを最小限に抑えてくれます。年末の大掃除で大量の紙資料を処分する場合などにも便利です。
大掃除を効率化する便利アイテム・サービス
オフィスの大掃除は、人手や時間だけでなく、作業効率にも大きく左右されます。作業負担を軽減し、より短時間でスムーズに進めるためには、便利な清掃アイテムや外部サービスの活用が効果的です。
ここでは、実際に役立つおすすめグッズや、状況に応じて検討したいサービスを紹介します。
オフィス清掃に役立つおすすめグッズ
掃除の効率を左右するのが、清掃用具の選び方です。特に、オフィスならではの設備や備品に対応したグッズを用意しておくことで、作業の手間を大幅に減らすことができます。
たとえば、パソコンやOA機器の清掃には、静電気防止ブラシやエアダスター、マイクロファイバークロスがあると便利です。細かなホコリを吸着しやすく、機器にダメージを与える心配もありません。
ガラス窓やエントランスの掃除には、スクイジーや水切りワイパーを活用すれば、ムラなく短時間で仕上げることが可能です。ブラインドなどの細かい部分には、専用ブラシや隙間用のハンディモップが重宝します。
そのほかにも、消臭・除菌効果のあるスプレーや、場所を取らない収納できるバケツ・モップなど、作業後の整理整頓にも役立つアイテムをそろえておくと、掃除がよりスムーズになります。
掃除代行・清掃サービスの活用
「人手が足りない」「時間内にすべての掃除が終わらない」といった場合は、清掃の一部または全体をプロの業者に依頼するのも有効な手段です。特に、高所の照明・空調設備の清掃や、専門機器の取り扱いが必要な場所など、安全性や仕上がりが求められる部分は、プロに任せることで確実かつ短時間で対応できます。
業者によっては、オフィス全体の大掃除をワンストップで請け負ってくれるパッケージプランや、家具の移動・不用品の回収を含めたサービスを展開している場合もあります。
コストとのバランスを見ながら、「自社で対応する部分」と「業者に任せる部分」をうまく分担することで、無理なく大掃除を終えることが可能です。
荷物保管サービスを併用してスペースを確保
大掃除を進めるうえで意外とネックになるのが、「掃除をしたくても、物が多すぎて作業スペースが確保できない」という問題です。そんなときに役立つのが、荷物一時保管サービスの利用です。
一時的にオフィス内の荷物を預けられるサービスを利用すれば、作業スペースが広がり、大掃除を効率よく進めることができます。特に、レイアウト変更やフロアの一部リフォームを予定している場合などには、一時保管が大きな助けになります。
また、保管後もWeb上で荷物の管理ができたり、必要なときだけ取り出せたりするサービスもあるため、単なる一時的な保管にとどまらず、業務効率の改善にもつながる可能性があります。
まとめ|計画的な大掃除で快適なオフィス環境を維持しよう
オフィスの大掃除は、単なる年末の習慣ではなく、労働安全衛生規則で定期的な実施が求められている業務の一環です。
効率的に進めるためには、事前のスケジュール設定や掃除範囲・担当の割り振り、必要な清掃道具の準備など、計画的な段取りが欠かせません。
また、掃除方法を場所ごとに明確にし、参加するすべての社員と共有しておくことで、作業のムラや手戻りを防ぐことができます。大掃除で出た不用品についても、粗大ゴミ・リサイクル・機密文書などの処分方法をあらかじめ決めておくと、当日の混乱を避けられるでしょう。
大掃除は、従業員全員で協力しながら、オフィスをリセットする大切な機会です。特に年末は、心機一転、気持ちよく新年を迎えるための節目としても意義があります。
総務の担当者を中心に、計画的かつ安全に進め、清潔で快適な職場環境を維持していきましょう。