契約書を破棄するタイミングは?法的リスクや保管・破棄方法も紹介
保管期間が終了した契約書を、念のため保管し続けているケースがあります。契約書の保管期間が過ぎた場合でも、基本的に罰則が科されることはありませんが、保管し続けることは実はリスクにもつながります。
本記事では、契約書を廃棄するタイミングや法的リスク、管理・保管方法などについて解説します。おすすめの契約書・機密文書処理サービスも紹介しますので、参考にしてみてください。
契約書を破棄できるタイミングとは?
契約書の保管期間が過ぎれば、破棄できるタイミングとなります。
保管期間は法律によって定められている物もあれば、契約書の種類によって異なるケースもあります。契約書の破棄のタイミングについて、以下で確認しましょう。
会社法に基づく契約書の保管期限
会社法では、契約書の保管期間は10年となっています。
「事業に関する重要な資料」の保管が会社法で義務付けられており、432条2項に記載されています。契約書は「事業に関する重要な資料」に該当するため、10年の保管が必要です。
電子契約書の場合の保管期間(電子帳簿保存法)
電子帳簿保存法では、国税関係の書類を電子データで保存することを定めています。具体的には、法人税法や所得税法に関する書類です。
2024年4月1日から、電子取引を行ったデータは全て電子的に行うことが義務になりました。業種や企業の規模に関わらず、原則として全ての事業者に適用されるルールです。
契約書の種類別に見る保管・破棄の目安
契約書の種類別に見ると、保管期間の違いに特徴があります。
同じ保険でも、健康保険・厚生年金保険・雇用保険に関する書類は2年、労災保険や労働保険に関する書類は3年です。また、雇用保険の被保険者に関する書類は4年となっています。
契約書を破棄しないほうがよいケース
トラブル防止や契約上の都合から、契約書を破棄しないほうがよいケースがあります。
どのようなケースが該当するのか、以下で具体的に解説します。
取引先とのトラブルが想定される契約
取引先とのトラブルが想定される契約の場合、契約書を破棄しない方が有効です。
契約書はトラブルになった場合、契約内容がどうだったかを証明するために重要な書類となります。口約束だけでは、問題が起きた時にお互いの主張が対立してしまい、話がまとまらない可能性もあります。書面で契約内容が明確になっていることで、トラブルの解決につながります。
知的財産・ライセンス契約など長期影響がある契約
知的財産の他者の使用を許諾する「知的財産・ライセンス契約」などは、長期的な取引になることが想定されます。
長期影響がある契約の場合は、過去の経緯の確認や取引条件の見直しのために、契約書を残しておきましょう。
再契約や監査対応で参照が必要なケース
再契約や契約内容の変更は、過去の契約書を基準にして行います。破棄すると以前の合意内容が確認できなくなるので、変更手続きや条件交渉に支障が生じる可能性があります。
監査対応においては、契約書は重要な監査証拠となります。契約書は、企業間の取引が合意に基づいた正当な物であることを証明する書類です。
契約書を破棄しないリスクとデメリット
契約書を破棄しない方がよいケースについて解説しましたが、その一方で破棄しないことによるリスクやデメリットも存在します。
どのようなリスクやデメリットがあるのか、以下で見ていきましょう。
誤った契約書を使用するリスク
契約締結後も、契約書を持ち出して活用する機会があります。保管期間が切れていない契約書の中に、破棄すべき契約書が残っていると、誤った契約書を使用してしまうリスクがあります。
常に最新の契約書を使用できるように、適切な保管・管理が必要です。
情報漏洩リスクの増大
契約書には機密情報や個人情報など、重要な情報が含まれています。契約書を破棄しないままにしておくと、保管する契約書が増えることになります。
保管する契約書が多いと、管理が行き届かない部分が出てくるため、その分情報漏洩リスクが増大します。廃棄の過程で情報が漏洩するリスクもあるため、保管期間を定期的に確認することが重要です。
管理コスト・生産性の低下
管理する契約書の数が増えると、その分コストがかかるという問題に直面します。
また、契約書の管理件数が増えることで、必要なデータやファイルを探すのに時間がかかってしまい、生産性の低下にもつながります。前述した通り、誤った契約書を使用するリスクもあります。
契約書を安全に廃棄・破棄する方法
契約書を安全に廃棄・破棄する方法は、紙の契約書か電子契約書かで異なります。
以下で、それぞれの方法について確認しましょう。
紙の契約書を破棄する方法
紙の契約書を破棄する場合、シュレッダー処理か専門業者で溶解処理をしてもらう方法のどちらかがメインです。
それぞれの方法について、以下で見ていきましょう。
シュレッダー処理を行う場合の注意点
シュレッダーは手軽に契約書を破棄することができますが、大量の書類を破棄するには時間がかかります。事前にクリップやホチキスの芯などを外す必要もあるため、場合によっては業務効率が悪いと感じるケースがあるかも知れません。
また、断裁があまり細かくない場合は復元される可能性があるため、情報漏洩のリスクが高まります。
専門業者に依頼する溶解処理の流れ
溶解処理を専門業者に依頼する場合は、電話かインターネットで申し込んだ後に、段ボールに処分する書類を梱包します。業者によっては、専用の回収箱が送付されることがあります。指定された日時に担当者が書類を回収し、専門の施設に運ばれ、そこで溶解処理が行われます。
溶解された紙の原料は、トイレットペーパーや段ボールなどにリサイクルされ、ホチキスなどの金属類もリサイクルが行われます。
処理が行われた後は、業者から「溶解証明書」が発行され、社内監査対応にも有効な書類となります。
電子契約書・PDFデータの削除方法
電子契約書やPDFデータを削除する場合は、セキュリティ対策の観点から、削除後の対応も重要になります。
以下で、手順と対策について確認しましょう。
クラウド・バックアップの削除手順
クラウド・バックアップサービスには、サービスごとに管理画面やアプリケーションなどから、不要なバックアップサービスを削除する方法が存在します。サービスの「ストレージ管理」や「設定」から、削除を行うことが一般的です。
サービスの解約を予定している場合は、解約前に、必要なデータが削除されないように、必ずバックアップを行いましょう。
データ削除は原則として元に戻せないため、誤操作や設定ミスなどによるデータ紛失を防ぐために、削除手順の確認は念入りに行いましょう。
削除ログの記録と復元防止対策
電子データとしての契約書を削除する場合、真実性の確保の観点から、削除ログ(履歴)の保存が必要になります。
電子帳簿保存法では、改ざんされていないことを証明するために、削除を行った際にその内容や事実を確認できる状態にする必要があります。
復元防止対策としては、データ消去専用のソフトウェアを使用するという方法があります。データを無関係な情報で複数回上書きすることで、復元不可能な状態にすることができます。
契約書破棄の運用ルールとエビデンス管理
契約書の破棄にあたっては、社内で運用ルールを設ける、エビデンス管理(証拠管理)を行うなどの工夫が必要になります。
運用ルールの整備やエビデンス管理の方法などについて、以下で解説します。
社内ルールや運用マニュアルの整備
保管期間を過ぎた契約書に関しては、明確にいつまでに破棄しなければいけないといったルールはありません。しかし、破棄しないことによるリスクやデメリットもあります。
保管期間を過ぎた契約書を処分する日は、社内でルールや運用マニュアルに定めておくことで、スムーズで適切な廃棄を行うことができます。
ただし、マイナンバーが記載されている契約書は、保管期間が過ぎて利用する必要がなくなった場合は、速やかに廃棄する義務があります。
契約書管理台帳・クラウドシステムの活用
契約書の作成、保管、更新、廃棄までの一連の流れを法的な証拠として管理するためには、契約書管理台帳やクラウドシステムを活用するのが効果的です。
上記のようなエビデンス管理によって、法的根拠の確保やリスク管理、コンプライアンス順守などにつながります。
廃棄証明書・削除ログの保存と監査対応
廃棄証明書は、専門の廃棄業者において、廃棄が正しく行われたことを証明する書類です。削除ログは、削除された事実や内容を示しており、削除の真実性を担保する物として重要です。廃棄が適切な方法で行われ、透明性があることを証明できれば、監査対応において重要な証拠となります。
おすすめの契約書・機密文書処理サービス
契約書・機密文書処理サービスを選ぶ場合は、コストに加えセキュリティが重要になります。たとえば、引取後の運搬方法や運搬に要する人数、処理方法、証明書発行の有無、過去実績、認証取得などを軸に判断すると良いでしょう。
本記事では、株式会社日本パープルが展開する「保護(まもる)くん」を、おすすめの機密抹消処理サービスとして紹介します。
保護(まもる)くんの特徴と安全性
保護くんは、専用のボックスに機密文書を投入するだけで機密処理を行ってくれるサービスです。専用のボックスには鍵が付いており、一度投入した書類は取り出すことができません。シュレッダーの場合はバインダーやクリップなどを外す必要がありますが、保護くんなら一緒に投入することができるので、時間の短縮になります。
専任のセキュリティスタッフが回収し、厳しい入退出管理により運用されている施設で処理されます。
運搬車にはGPSが搭載されており、処理完了後には証明書も発行されます。また、処理された書類はリサイクルされるので、環境への貢献も可能です。
まとめ|契約書は「捨てないリスク」も意識して適切に廃棄を
保管期限が切れた契約書の保管には情報漏洩などのリスクが伴います。また、管理する契約書が多ければ多いほど管理が煩雑になるため、契約書は然るべきタイミングで適切に廃棄することが企業の安全性を高めることに繋がります。捨てることによるリスクもあるので、判断が難しい部分もありますが、捨てないリスクも意識しておくことが重要です。
本記事では、主に契約書管理・適切な廃棄処理について解説してきました。そして、廃棄処理については、日本パープルの「保護くん」をおすすめサービスとして紹介しました。契約書の適切な管理対象は、契約書の処理も含まれることを念頭に置き、最適な体制を整えましょう。