契約書のOCRとは?AIで管理項目を抽出し台帳を作成する方法を解説
大量の契約書から契約先や契約日、契約期間などを調べ、Excelの管理台帳へ1件ずつ入力する作業に時間がかかっていませんか。書類ごとに形式が異なったり、自動更新の条件が本文に埋もれていたりすると、転記漏れや入力ミスも起こりがちです。
こうした作業には、契約書の文字を読み取るOCRと、必要な情報を抽出するAIの活用が役立ちます。ただし、文字をデータ化することと、契約先や更新条件を判断して台帳へ反映することは別の処理です。抽出した情報を原本と照合し、Excelや契約書管理システムへ登録する仕組みまで考える必要があります。
この記事では、OCRとAIの違いを押さえたうえで、紙やPDFの契約書から管理項目を抽出し、台帳を作成・更新する手順を解説します。読み取りミスを防ぐポイントや、Excelで管理を続ける場合とシステムへ移行する場合の違い、代表的なサービスの選び方も紹介します。契約書の手入力を減らしたい方は、ぜひ参考にしてください。
この記事でわかること
- OCRとAIによる契約書情報の抽出の違い
- 紙・PDF契約書から管理台帳を作成・更新する手順
- 読み取りミスや更新条件の誤解釈を防ぐ方法
- Excelと契約書管理システムの使い分け
- 代表的な契約書OCRサービスと選び方
契約書のOCRとAIによる情報抽出の違い
OCRは、紙をスキャンした画像や画像形式のPDFに含まれる文字を認識し、テキストデータに変換する技術です。一方、契約書管理で使われるAIによる情報抽出は、契約書の文章から契約先や契約日、契約期間などの必要な項目を探し出し、管理台帳に登録できる形にまとめる処理を指します。
両者は役割が異なり、OCRで文字を読み取っただけでは契約書管理台帳は完成しません。AIを用いて文字を認識するAI-OCRや、文字認識から管理項目の抽出まで行うサービスもありますが、利用できる機能は製品ごとに異なります。
それぞれの役割をまとめると、次のようになります。
| 処理 | 主な役割 | 得られる結果 |
|---|---|---|
| OCR | 画像内の文字を認識する | 契約書のテキストデータ |
| AIによる項目抽出 | 契約内容から管理に必要な情報を取り出す | 契約先・日付・期間などの項目 |
| 管理台帳への反映 | 抽出した情報を決められた項目に登録する | 検索や期限管理に使える台帳 |
手入力を減らすには、文字を認識する機能だけでなく、必要な情報を取り出し、管理台帳に反映するまでの仕組みを考えることが大切です。
OCR・AIを使った管理台帳の作成手順
大量の契約書を効率よく処理するには、PDF化から台帳登録までの手順を決めておく必要があります。処理の進め方が担当者によって異なると、同じ書類を何度も読み取ったり、登録されていない契約書を見落としたりする原因になります。
基本的な流れは、契約書の取り込み、管理項目の抽出、内容の照合、台帳への登録・更新という4つの工程です。各作業の進め方を順番に解説します。
紙・PDF契約書の準備と取り込み
まず、対象となる契約書を集め、紙とPDFに分けます。紙の契約書はページの順序や抜けを確かめてからスキャンし、1つの契約書を1つのPDFにまとめると、ほかの契約書との取り違えを防げます。原契約と覚書など、異なる契約文書を誤って結合しないよう注意しましょう。
PDFには、スキャン画像を保存したものと、文字情報を含むものがあります。前者はOCRによる文字認識が必要ですが、後者は既存の文字情報を利用できるため、必ずしもOCR処理は必要ありません。
締結済み契約書を管理する場合は、所定の締結手続きを終えた最終版を取り込みます。契約書案も対象にするなら、未締結であることを区別してください。
なお、紙の契約書をPDF化しただけで、すべての紙原本を廃棄できるわけではありません。適用される保存要件や社内規程を踏まえ、原本の取り扱いも決めておきましょう。
契約先・契約日などの項目抽出
契約書を取り込んだら、AIを使って管理台帳に必要な情報を抽出します。代表的な項目は、契約書名、契約先、契約締結日、契約開始日・終了日、契約金額、自動更新の有無などです。ただし、実際に抽出できる項目は利用するサービスによって異なります。
台帳に「担当部署」や「紙原本の保管場所」といった列があっても、契約書に記載されているとは限りません。契約書から得られない情報は、社内の担当者が入力するか、別の管理情報と組み合わせて登録する必要があります。
また、契約書では当事者を「甲・乙」「発注者・受注者」などと表記する場合があります。抽出した会社名を台帳の取引先名と正しく対応させるため、表記を統一するルールも決めておきましょう。
抽出結果の原本照合と修正
AIによる項目抽出が終わったら、担当者が契約書の記載内容と照らし合わせます。すべてを最初から手入力し直すのではなく、AIが抽出した情報を確かめ、誤っている項目を修正する方法が効率的です。
契約先名や契約日などの基本情報に加え、期限管理に関わる項目は特に注意して照合しましょう。紙の契約書をスキャンした場合は、画像だけで判断できない箇所を紙の原本で確かめることも大切です。
読み取れなかった項目や判断が難しい項目を、推測で埋めるのは避けてください。「要確認」などの状態で残し、確認できてから登録する運用が適切です。
また、誰が照合し、どの項目を修正したのか記録しておけば、後から管理情報の正確性を調べる際にも役立ちます。
既存台帳への登録・更新と重複防止
抽出結果を確定したら、既存の管理台帳に登録します。利用するサービスがCSV出力に対応していれば、Excelへデータを取り込む方法もあります。ただし、CSVを出力しただけで、既存のExcelファイルが自動更新されるわけではありません。
CSVを取り込む際は、列の対応関係に加え、日付や契約IDの表示形式も確かめましょう。Excelの自動変換によって契約IDの先頭の「0」が消える場合があるため、識別番号を文字列として取り込むなどの対策が必要です。
既存データの更新では、取引先名だけで契約書を判別せず、契約IDなどで照合します。変更契約書や覚書については元の契約との関係も記録し、新規登録と既存情報の更新を区別しましょう。
契約書の読み取り・項目抽出の注意点
OCRやAIを使っても、すべての契約書から正しい情報を自動で取り出せるわけではありません。画像の状態や契約条項の書き方によって、文字認識や項目抽出に誤りが生じることがあります。
また、契約書には取引先の機密情報が含まれるため、外部サービスの利用にも配慮が必要です。台帳に誤った情報が登録されないよう、文字認識、契約条件の解釈、情報管理の3つの面から注意点を押さえておきましょう。
画像品質による文字の認識ミス
OCRによる文字認識は、元になる画像の品質に影響されます。文字がかすれている契約書や、斜めにスキャンしたPDF、ページの端が切れている画像では、数字や漢字を誤って読み取る場合があります。手書きの追記や複雑な表組みにも注意が必要です。
紙の契約書は折り目を伸ばし、傾きを補正してからスキャンしましょう。一般的には300dpi程度が解像度の目安ですが、適切な設定は使用する機器やOCRサービスによって異なります。
一部のページだけ文字がつぶれている場合は、そのページを再スキャンする方法も有効です。一方、紙の原本自体が判読しにくいときは、OCRを繰り返すのではなく、契約担当部署などに記載内容を問い合わせましょう。
更新・解約条件の解釈ミス
契約書の期限管理では、文字を正しく認識できても、条項の意味を取り違える場合があります。例えば「満了日の1か月前までに更新しない旨の通知がなければ、さらに1年間更新する」という条項では、契約終了日と更新を拒絶する期限は異なります。
また、契約締結日と契約開始日が異なる場合や、途中解約に限って通知期限が設けられている場合もあります。更新拒絶期限と途中解約の通知期限を混同すると、必要な手続きを行う時期を誤りかねません。
自動更新の有無だけでなく、更新後の期間や通知条件も契約条項に沿って判断しましょう。複雑な内容は法務担当者などに相談し、判断の根拠となる条項番号を記録しておくと、後から確認する際にも役立ちます。
外部サービス利用時の機密情報管理
契約書には取引条件や契約金額、取引先の担当者名など、機密性の高い情報が含まれています。外部のOCRやAIサービスを利用する前に、社内の情報管理規程や取引先との秘密保持義務を確かめましょう。
サービスの利用規約や契約条件では、次の項目を重点的に確認することが大切です。
- アップロードしたデータの保存期間と削除方法
- 入力した情報がAIの学習に利用されるかどうか
- データの取り扱いを委託する事業者の有無
- 通信・保存時の暗号化や閲覧権限の管理
無料のOCRツールや汎用AIを使う場合も、機密情報の入力が認められているか慎重に判断してください。作業用に複製した契約書の保存先や削除時期も決めておくと、不要なデータが社内に残ることを防げます。
Excel台帳と契約書管理システムの使い分け
AIで契約情報を抽出できても、最終的にどこで管理するかによって日々の作業負担は変わります。既存のExcel台帳を使い続ける方法もあれば、契約書と管理情報をまとめて扱える専用システムへ移行する方法もあります。
どちらを選ぶかは、契約書の件数だけでなく、管理する担当者の人数や更新頻度、部署間での情報共有の必要性によって変わるものです。それぞれが向いている状況を見ていきましょう。
Excel台帳が向いている場合
契約書の件数が比較的少なく、管理を担当する人も限られている場合は、Excel台帳を使い続ける方法が考えられます。慣れた書式や集計方法を変えずに、OCR・AIによる入力支援を取り入れられる点が利点です。
Excelは管理項目を自由に追加しやすく、部署別の契約件数や契約金額の集計にも利用できます。一方、担当者ごとに別のファイルを持っていると、どれが最新の台帳なのか分からなくなるおそれがあります。
そのため、編集対象となるファイルと保存場所を統一し、誰が情報を更新するのか決めておきましょう。更新期限は数式や条件付き書式で表示できますが、期限が近づいた際に誰が対応するのかは、別途運用ルールを設ける必要があります。
契約書管理システムが向いている場合
契約書の件数が多く、複数の部署で閲覧・更新する場合は、専用の契約書管理システムが選択肢になります。契約書と管理項目を紐付けて保存できるため、取引先や契約期間などの条件から必要な文書を検索できます。
製品によっては、更新期限の通知や閲覧権限の設定、原契約と変更契約書の関連付けなども可能です。部門ごとに情報が分散している企業や、契約書を探す作業に時間がかかっている企業に向いています。
ただし、導入時には既存台帳の移行範囲や管理項目、利用者ごとの権限を決める必要があります。担当者への操作説明も行い、社内で統一した方法で契約書を管理できる体制を整えましょう。
契約書OCRサービスの選び方と代表例
契約書の管理項目を自動抽出するサービスを選ぶ際は、OCRによる文字認識だけで判断しないことが大切です。必要な契約情報を取り出せるか、抽出結果を修正できるか、現在の台帳と連携できるかによって使い勝手が変わります。
また、Excelで管理を続ける場合と専用システムへ移行する場合では、必要な機能も異なります。自社の契約書を使った精度の評価方法と、代表的なサービスの特徴を紹介します。
抽出精度・対応項目・連携方法の比較
OCRによる文字認識の精度と、AIによる管理項目の抽出精度は異なります。製品が公表している認識率や抽出精度については、何を対象に、どのような条件で測定した数値なのかを確かめましょう。
特に、次の項目が比較のポイントになります。
- 画像形式のPDFや文字情報を含むPDFへの対応
- 契約期間・自動更新などの抽出対象項目
- 抽出結果の修正方法と独自項目への対応
- CSV・Excelへの出力や既存システムとの連携方法
- 大量登録時の件数制限、費用、サポート体制
無料のOCRツールでも文字のテキスト化はできますが、契約条件の抽出や台帳への登録まで対応するとは限りません。
導入前には自社の契約書を何件か試しに取り込み、項目ごとの抽出結果と修正にかかる時間を比較すると、実際の業務に合うか判断できます。
代表的な契約書OCR・管理サービス
契約書の文字認識や管理項目の自動抽出に対応する、代表的な3サービスを紹介します。自動抽出できる項目や台帳との連携方法はサービスによって異なるため、利用目的に合わせて選びましょう。
| サービス名 | 主な特徴 | 導入時の確認事項 |
|---|---|---|
| 契約書管理システム コンパス(ConPass) | AIによる13項目の自動抽出、管理項目の自由設定、CSVでのデータ入出力 | 標準の自動抽出項目と自由項目の違い、電子化・データ補正サービスの利用条件 |
| LegalOn | コントラクトマネジメント機能で契約情報をAI抽出。 | 対象機能の契約条件 |
| マネーフォワード クラウド契約 | AI-OCRによる契約情報の自動入力、紙・電子契約書の一元管理 | AI-OCRを利用できるプランと対象機能 |
各サービスの抽出対象や料金、利用できる機能は契約内容によって異なります。特に、AIによる自動抽出と人による補正サービスは区別し、自社でどこまで作業する必要があるのか確かめておきましょう。
契約書管理システム コンパス(ConPass)の活用
当社が提供する契約書管理システム コンパスは、締結済みの契約書をアップロードすると、契約書名や相手先、契約日など全13項目をAIで自動抽出し、管理台帳を作成できるサービスです。
AIが抽出した情報は必要に応じて修正できます。また、標準の自動抽出項目とは別に、自社の管理方法に合わせた自由項目も設定可能です。
CSV形式でのインポート・エクスポートに対応しており、既存のExcel台帳からのデータ移行や、コンパス内の管理情報の一括更新にも活用できます。
大量の紙契約書については、スキャニングや抽出データの補正、原本保管などのBPOサービスもご利用いただけます。手入力の負担を減らし、紙と電子の契約書をまとめて管理したい方は、ぜひコンパスをご検討ください。
契約書のOCRに関するよくある質問
契約書のOCRを始める際は、PDFの処理方法や手書き文字への対応、原本の扱いについて迷うこともあるでしょう。よくある5つの質問に回答します。
PDFをOCR化するにはどうすればよいですか?
主な方法は、OCR機能を備えたPDF編集ソフトを使う方法、OCR機能付きの複合機やスキャナでスキャン時に処理する方法、契約書管理システムなどにアップロードして自動で文字認識する方法の3つです。
OCR処理をすると、PDF内の文字を検索・コピーできるようになります。ただし、契約先や契約期間を台帳へ登録するには、本文で紹介した項目抽出と照合の工程が別途必要です。
手書きの契約書もOCRで読み取れますか?
手書き文字に対応したAI-OCRもありますが、印字された文字に比べると認識精度は下がる傾向があります。特に、手書きで追記された金額や日付、訂正箇所は誤認識が起きやすい部分です。
手書きの記載がある契約書は、抽出結果を必ず原本と照合しましょう。判読しにくい箇所は推測で登録せず、契約担当部署に記載内容を確かめることが大切です。
OCRとAI-OCRは何が違いますか?
従来のOCRは、あらかじめ設定した文字の形状パターンに基づいて文字を認識します。一方、AI-OCRはAIの学習結果をもとに認識するため、かすれ文字や手書きなど、ばらつきのある文字に対しても高い認識精度を発揮する傾向があります。ただし、どちらも文字をテキスト化する技術で、契約先や期間を取り出す項目抽出は別の処理です。
AIの抽出精度は100%ですか?
100%ではありません。スキャン画像の品質や契約条項の記述方法によっては、抽出漏れや誤りが生じる可能性があります。各サービスが公表している精度は、対象とする項目や測定条件によって異なるため、数値のみで判断せず、実際に自社の契約書を用いて確認することをお勧めします。抽出結果は原本と照らし合わせて確認することを前提に運用しましょう。
紙の契約書をPDF化したら、原本は廃棄できますか?
一律に廃棄できるわけではありません。契約書は、法人税法などで保存が義務付けられた書類に該当する場合があり、紙の原本を廃棄してスキャンデータで保存するには、電子帳簿保存法のスキャナ保存の要件を満たす必要があります。
また、契約上の取り決めや社内規程、紛争時の証拠としての必要性から、原本を残しておくべきケースもあります。廃棄の可否は法務・経理部門と相談して判断し、原本を保管する場合は保管場所も台帳に記録しておきましょう。
まとめ:OCRとAIで契約書管理台帳を効率化しよう
大量の契約書を管理台帳へ手入力している場合は、OCRとAIによる情報抽出を組み合わせることで、転記作業の負担を減らせます。OCRは文字をテキスト化する技術であり、AIによる項目抽出や台帳への登録とは役割が異なります。契約書の取り込みから抽出内容の照合、既存台帳の更新までを一連の作業として考えることが大切です。
特に、契約期間や自動更新の条件を誤って登録すると、期限管理にも影響します。契約書の記載内容と抽出結果を照らし合わせ、重複登録を防ぐ運用も整えましょう。契約件数や管理する担当者の人数によっては、Excelを使い続けるだけでなく、専用システムへの移行も選択肢になります。
当社のコンパスは、AIによる管理項目の自動抽出と、紙・電子契約書の一元管理に対応しています。契約書の台帳作成やデータ化でお困りの方は、ぜひお気軽にご相談ください。