2025年6月26日文書管理

新リース会計基準とは?変更点や影響や対応についてわかりやすく解説

2027年4月1日以降に開始する事業年度から、新リース会計基準が強制適用されます。
この新基準では、リース取引の会計処理が大きく変更され、企業の財務諸表に直接的な影響を与えることが予想されます。特に、オペレーティング・リースも含むすべてのリース取引について、使用権資産とリース負債を計上することが求められます。これにより、貸借対照表や損益計算書の構造が変わり、財務指標にも影響を及ぼす可能性があります。

本記事では、新リース会計基準の概要、旧基準との主な違い、企業への影響、実務上の対応ポイントなどを、専門知識がなくても理解できるようにわかりやすく解説します。これから対応を進める方や、基礎からおさらいしたい方にも役立つ内容ですので、ぜひ最後までお読みください。

リース会計基準とは


リース会計基準とは、企業がリース取引をどのように会計処理するかを定めたルールです。これまでの基準では、リースを「ファイナンス・リース」と「オペレーティング・リース」に分類し、それぞれ異なる会計処理が行われてきました。特にオペレーティング・リースは、貸借対照表に計上されず“オフバランス”処理とされていたため、実態が財務諸表に反映されにくいという課題がありました。

新リース会計基準とは

新リース会計基準は、企業がリース取引を財務諸表上どのように処理するかを抜本的に見直す制度です。これまで日本基準では、一定のリース取引が貸借対照表に反映されない「オフバランス処理」が容認されてきましたが、新基準では、ほぼすべてのリース契約を「オンバランス」で処理することが原則となります。この変更は、企業の財務情報の透明性向上を目的としており、2027年4月以降に開始する事業年度からの適用が予定されています。

新リース会計基準の内容

企業会計基準第38号「リースに関する会計基準」などで定められた新リース会計基準では、借手である企業がすべてのリース取引について、原則として貸借対照表に計上する「オンバランス処理」を行うことが求められます。具体的には、企業はリース契約に基づき、使用権資産とリース負債を貸借対照表に計上し、これらの資産については減価償却費を、負債については利息費用を損益計算書にて認識します。このような処理により、企業のリース利用の実態が財務諸表により正確かつ明確に反映されるようになります。

現行基準との比較ポイントと注意点

新リース会計基準では、まず従来オフバランスとされていたオペレーティング・リースも、すべて使用権資産とリース負債として貸借対照表に計上する「オンバランス処理」へと変更されます。これにより、企業の実態に即した財務状況の開示が可能になります。

また、リース期間の見積もりにも注意が必要です。単に契約書に記載された期間だけでなく、契約更新オプションや早期解約条項などの要素を考慮し、実際に使用が見込まれる期間を合理的に見積もらなければなりません。

さらに、リース負債の計上にあたっては、適切な割引率の選定が求められます。社債発行金利や借入金利など、自社の資金調達実態に応じた判断が必要であり、実務上の会計ポリシー策定にも影響します。

特に、中小企業でも多数の小規模リース契約を管理する必要があり、実務対応においてシステム面・内部統制面での準備が必要です。

新リース会計基準の適用開始日

企業会計基準委員会(ASBJ)による公表では、2027年4月1日以降に開始する事業年度から強制適用となります。2025年4月1日以降開始の事業年度から早期適用も可能です。

新リース会計基準の対象事業者

新リース会計基準は、日本の会計ルール(日本基準)で決算書を作成している企業が対象になります。たとえば、多くの中小企業や、金融商品取引法の適用を受ける上場企業など、日本国内で活動し、国際会計基準(IFRS)や米国基準ではなく日本の会計基準を使っている会社がこれに当てはまります。つまり、一般的な日本企業のほとんどが対象と考えてよいでしょう。

新リース会計基準が導入された背景

新リース会計基準が導入された背景には、国際的な会計基準を策定しているIFRS財団や会計監査人、投資家などの専門家たちが、日本を含む各国の会計実務に対して、「リース契約の実態が財務諸表に十分に反映されていない」という指摘を行ってきた経緯があります。
とくに、オペレーティング・リースが貸借対照表に載らず、財務状態が過小に見えることが問題視されていました。これを受けて、日本の会計基準を策定する企業会計基準委員会(ASBJ)は、国際的な整合性を図るために、新しいリース会計基準を導入するに至ったのです。

新リース会計基準による企業への影響とリスク

新リース会計基準の導入は、単なる会計ルールの変更にとどまらず、企業の財務状況や経営判断にまで影響を及ぼす可能性があります。特に、これまで貸借対照表に現れていなかったリース契約が資産・負債として計上されることで、財務指標や外部評価に変化が生じることが避けられません。
ここでは、企業が直面する具体的な影響と、それに伴うリスクについて解説します。

財務指標への影響

新基準のもとでは、これまで表に現れていなかったリース取引も会計上の資産・負債に組み込まれるため、企業の財務構造に見た目の変化が生じます。特に、負債の増加によって自己資本比率や総資産利益率(ROA)といった健全性を示す指標が悪化する可能性があり、金融機関や投資家の評価に影響を与える場面も想定されます。

一方で、支払利息や減価償却の増加により、営業利益をベースとする指標EBITDA(利払い・税引前・償却前利益)は改善するケースもあります。
こうした指標の変化を踏まえた説明責任や分析体制の見直しが、今後は重要になるでしょう。

リース契約条件変更における会計処理

新リース会計基準の適用により、企業はリース契約の内容に変更があった場合、その影響を正確に財務諸表へ反映する必要があります。たとえば、契約期間の延長、リース料の改定、更新オプションの行使可能性の変化といった条件変更があれば、それに応じてリース負債と使用権資産を見直す「再測定」が求められます。

こうした処理を的確に行うためには、まず自社が保有するすべてのリース契約を洗い出し、契約書に記載された内容を詳細に確認しておくことが不可欠です。特に、契約更新条項や解約オプションの有無、変動リース料の条件など、会計処理に影響を与える要素は事前に把握しておかなければなりません。また、再測定時には割引率の見直しや、リース期間の再評価も必要となるため、財務部門だけでなく、契約管理や経理、現場部門との連携も重要になります。

このように、リース契約条件の変更は会計処理の観点だけでなく、企業の内部体制や情報管理のあり方にも影響を及ぼします。基準適用後も継続的に対応できるよう、契約情報の一元管理や処理ルールの明確化を含めた実務体制の整備が求められます。

新リース会計基準の対応のポイント

新リース会計基準に対応するためには、単に会計処理を見直すだけでなく、リース契約に関する情報を正確かつ効率的に把握・管理できる体制づくりが不可欠です。とりわけ、過去から継続中のリース契約や、拠点・部門ごとに分散している契約情報を把握し直す作業は、多くの企業にとって負荷の高い工程となります。
以下では、対応を進める上で重要となる2つの実務的なポイントを解説します。

契約書のデータ化

まず重要なのが、紙やPDFなどで保管されている契約書類をデータ化し、検索や集計が可能な形で整理することです。リース契約の内容を会計処理に反映させるためには、契約期間、更新・解約オプション、リース料の構造といった詳細な情報を確認する必要があります。紙ベースのままではこうした情報の抽出や再確認に膨大な手間がかかるため、文書のスキャンだけでなく、契約情報そのものを構造化データとして管理できるようにすることが理想です。

契約書の一元管理

データ化された契約書は、部署や拠点をまたいで一元的に管理されることが望ましいです。会計や経理部門がリース契約の情報に迅速にアクセスできない場合、再測定や開示対応などの会計実務に支障をきたすリスクがあります。また、契約変更時のトラッキングや履歴管理を行うためにも、バージョン管理やアラート機能を備えた一元管理体制の構築が重要です。

このような対応を効率よく実現するためには、契約書管理システムの導入が非常に効率的です。次の項目では、実務に適した契約書管理システムを選ぶ際のポイントについて解説します。

契約書管理システムの選び方のポイント

新リース会計基準に対応するための契約書管理には、多くの契約を正確かつ効率的に扱えるシステムの導入が欠かせません。特に重要なのは、契約書の作成から管理、リース契約の更新通知までを備えたサービスを選ぶことです。
ここでは、契約書管理システムを選ぶ際に重視すべきポイントを解説します。

電子契約サービスの有無

電子契約サービスと連携できるシステムは、契約書の作成から締結、保管までを一元管理できるため、紙やPDFの管理に伴う手間を大幅に削減します。
これにより契約締結のスピードが向上し、リース契約の変更なども迅速に反映可能です。
電子契約サービスとの連携に対応しており、契約締結後のデータを自動で取り込んで、スムーズに管理画面へ反映できるサービスを選ぶ事で、契約情報の最新化がスムーズにおこなえます。

管理機能が豊富か

契約書管理には、自動で契約内容の重要項目をAIが抽出する機能や、契約期間の満了・変更を事前に知らせるアラート機能があると非常に便利です。

例えば、AIによる項目抽出とアラート機能を備えているサービスの場合、契約変更通知の漏れを防ぎ、リース契約の会計対応も的確にサポートできます。また、契約書のデータ化やインポート作業などのBPO業務のサポートもしていると、導入時の負担軽減にもつながります。

セキュリティが高いか

契約書は企業の重要な資産、機密情報を含むため、厳格なセキュリティ体制を持つシステムを選ぶことが不可欠です。アクセス権限管理やデータ暗号化、バックアップ体制の充実はもちろん、社内外の監査にも対応できる信頼性が求められます。
アクセス権限の細かい設定やデータ暗号化など高度なセキュリティ対策を施しており、社内外の監査要件にも対応していて、安心して契約書を管理できるサービスを選びましょう。

一元管理できるか

契約書が複数部署や拠点に分散していると、情報の把握や管理が難しくなります。部署や拠点ごとに分散しがちな契約書を一元的に管理できる機能は、情報の抜け漏れを防ぐ上で重要です。
検索性に優れた契約データベースがあれば、必要な契約情報に迅速にアクセスでき、経理・法務・現場担当者間の情報共有もスムーズになります。リース契約の変更時期や更新タイミングも見逃しません。

まとめ


新リース会計基準の適用により、リース取引の会計処理が大きく見直され、企業の財務諸表や経営判断に与える影響も少なくありません。特に、貸借対照表へのリース資産・負債の計上により、財務指標の変化が避けられず、対応が求められます。
企業はリース契約の内容を正確に把握し、適切に会計処理を行うことがますます重要になります。
そのためには、契約書のデータ化や一元管理といった管理体制の見直しと強化が欠かせません。膨大な契約書類から必要な情報を効率的に抽出し、変更時の更新管理や期日アラートを適切に運用できることが、リース契約の漏れやミスを防ぐポイントです。

こうした対応を効率化するためには、AIによる自動抽出機能や検索性の高い契約データベース、契約書のバージョン管理やセキュリティ面が充実した契約書管理システムの導入が効果的です。契約書管理システムを活用することで、経理・法務・現場間での情報共有がスムーズになり、新リース会計基準への対応負荷を大幅に軽減できます。

結果として、正確かつスピーディな対応ができれば、財務指標の変動リスクをきちんと把握できるだけでなく、社内外の信頼をしっかりと維持することにもつながっていきます。
新しい基準に戸惑うこともあるかもしれませんが、ひとつずつ理解を深めていくことで、きっと着実に前に進めるはずです。焦らず、丁寧に対応を進めながら、安定した経営基盤の構築を目指していきましょう。

おすすめの契約書保管サービスはこちら

カテゴリー:文書管理