2026年9月30日文書管理

新リース会計基準とは?変更点・影響と契約書の洗い出し・管理方法を解説


「新リース会計基準で何が変わるのか分からない」「自社が保有する契約書のうち、どこまでがリースに該当するのか判断できない」と悩んでいないでしょうか。新リース会計基準は、2027年4月1日以後に開始する事業年度から原則適用されます。借手は原則としてリースに該当する取引について使用権資産とリース負債を計上するため、会計処理の見直しだけでなく、社内にある契約書の洗い出しも必要です。
この記事では、新リース会計基準の主な変更点や企業への影響に加え、対象となる契約書の洗い出し方、会計処理に必要な情報、適用後も継続して契約を管理する方法を解説します。経理部門だけで対応を抱え込まず、法務・総務・現場部門と連携しながら準備を進めたい方は、ぜひ参考にしてください。

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この記事でわかること

  • 新リース会計基準の適用時期と主な変更点
  • 新リース会計基準が財務・実務に与える影響
  • リース契約の洗い出しから対応までの進め方
  • 新基準に備えた契約書管理のポイント

新リース会計基準とは


新リース会計基準は、企業会計基準委員会(ASBJ)が2024年9月に公表した企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」と、その適用指針を中心とする新しい会計ルールです。まずは制度が導入された背景や適用時期、対象となる企業、簡便的な取扱いについて押さえておきましょう。

新基準が導入された背景

新リース会計基準が導入された背景には、日本の会計基準と国際的な会計基準との整合性を高める目的があります。従来は、借手のオペレーティング・リースについて、貸借対照表に資産・負債を計上せず、支払リース料を費用として処理する取扱いがありました。
一方、国際会計基準ではリース取引を財務諸表へより明確に反映する方向で見直しが進み、2016年にはIFRS第16号「リース」が公表されています。こうした動きを踏まえ、ASBJでも借手のリースについて原則として資産と負債を認識する新基準が策定されました。企業のリース利用の実態を財務諸表へ反映するとともに、財務情報の比較可能性を高めることが大きな目的です。

適用時期と早期適用

新リース会計基準は、2027年4月1日以後に開始する連結会計年度および事業年度の期首から原則適用されます。たとえば3月決算の企業であれば、2028年3月期が原則適用の最初の年度です。
一方、準備が整っている企業は、2025年4月1日以後に開始する連結会計年度および事業年度の期首から早期適用することもできます。原則適用まで時間があるように見えても、対象となる契約書の収集やリース判定、影響額の試算には相応の時間がかかります。契約数や拠点数が多い企業ほど、適用直前に慌てないよう早めに準備へ着手することが大切です。

適用対象となる企業

新リース会計基準は、日本基準を適用する企業のうち、金融商品取引法に基づく財務諸表を作成する上場会社などや、会社法上、会計監査人による監査を受ける会社などが主な対象です。対象となる企業では、借手として締結しているリース取引について新基準への対応が求められます。
一方、中小企業では「中小企業の会計に関する基本要領」など、企業会計基準とは異なる会計ルールを利用している場合があります。そのため、中小企業だから一律に対象外、または必ず適用されるとは判断できません。自社がどの会計基準に基づいて財務諸表を作成しているかを確認し、適用可否について迷う場合は、公認会計士や税理士などの専門家へ相談しましょう。

短期・少額リースの取扱い

新リース会計基準では、借手のリースについて原則として使用権資産とリース負債を計上しますが、一定の短期リースや少額リースには簡便的な取扱いが設けられています。
短期リースとは、リース開始日における借手のリース期間が12か月以内で、購入オプションを含まないリースです。条件を満たす場合は、使用権資産とリース負債を計上せず、リース料を原則としてリース期間にわたって費用として処理できます。少額リースにも一定の要件があるため、金額だけで対象外と決めず、自社が採用する会計方針や契約内容に照らして判断する必要があります。

新リース会計基準の主な変更点

新リース会計基準では、借手の会計処理だけでなく、リースに該当する契約の考え方やリース期間の決定方法も重要になります。従来の契約分類だけを見直すのではなく、契約内容そのものを確認できる体制が必要です。主な変更点は次のとおりです。

項目主な変更・確認内容
資産・負債の計上借手は原則として使用権資産とリース負債を計上する
リースの識別契約名称ではなく、特定された資産を使用する権利の有無などから判断する
リース期間契約期間だけでなく、更新・解約オプションなども考慮する
契約条件の変更変更内容に応じて、独立したリースとしての処理やリース負債の見直しなどを行う

それぞれの変更点を押さえると、なぜ会計部門だけでなく契約書管理の見直しまで必要になるのかが見えてきます。

使用権資産とリース負債の計上

新リース会計基準では、借手は原則としてリースについて使用権資産とリース負債を貸借対照表に計上します。従来、借手のオペレーティング・リースではリース料を費用として処理し、資産・負債を貸借対照表に計上しない取扱いがありましたが、この点が大きく変わります。
使用権資産は、契約した資産を一定期間使用する権利を表します。リース負債は、将来支払うリース料を基礎として算定する負債です。これまで貸借対照表に表れていなかったリース取引も財務諸表へ反映されるため、短期・少額リースなどの簡便的な取扱いを除き、対象となる契約を適切に把握することが対応の前提になります。

リースの識別基準

新リース会計基準への対応で注意したいのが、契約書の名称だけではリースかどうかを判断できない点です。契約に「リース」と書かれていなくても、特定された資産の使用を支配する権利が一定期間にわたり対価と交換に移転していれば、リースを含む契約に該当する場合があります。
判断にあたっては、特定された資産があるか、使用から得られる経済的利益のほとんどすべてを享受する権利があるか、資産の使用方法を指図する権利があるかといった点を確認します。不動産賃貸借契約や設備利用を含むサービス契約なども、契約名称だけで最初から対象外にはできません。契約本文を確認し、取引の実態に基づいて判定することが必要です。

リース期間と割引率

借手のリース期間は、契約書に記載された期間だけで決まるとは限りません。解約不能期間に加え、借手が延長オプションを行使することが合理的に確実である場合の対象期間や、解約オプションを行使しないことが合理的に確実である場合の対象期間も考慮します。
また、リース負債は将来のリース料を現在価値に割り引いて算定するため、割引率の設定も必要です。貸手の計算利子率を知り得る場合はその利率を用い、知り得ない場合には借手の追加借入利子率を用います。契約書に含まれる期間、更新・解約条件、支払条件などを正確に取り出せる状態にしておくことが、適切な算定につながります。

契約変更時の再測定

リースの契約条件を変更した場合は、その内容に応じて会計処理を見直します。変更後の契約を独立したリースとして処理する場合がある一方、リース負債を見直して使用権資産を調整するケースもあります。
また、契約条件そのものを変更していなくても、リース期間やリース料などの見直しによってリース負債の再測定が必要になる場合があります。新基準への対応は、適用開始時に一度処理すれば終わるものではありません。会計上の判断に必要な変更情報を継続して把握できることが、その後の運用でも求められます。

新リース会計基準が企業に与える影響


新リース会計基準の影響は、貸借対照表の表示が変わることだけではありません。契約情報の収集や判定、決算業務、部門間の情報共有など、日常の業務にも関わります。自社への影響を考える際は、財務面と実務面を分けて見ていくと、準備すべき内容が明確になります。

財務諸表・財務指標への影響

これまでオフバランスで処理されていた借手のオペレーティング・リースが原則としてオンバランスになることで、総資産と負債が増加する企業があります。影響の程度は契約内容によって異なりますが、企業によっては自己資本比率やROAが低下することがあります。
また、従来リース料として計上していた費用の一部が減価償却費や利息費用として認識されるため、EBITDAが増加するケースもあります。一般的な影響だけを見て判断するのではなく、自社が保有するリース契約をもとに、財務諸表や主要な経営指標への影響額を試算しておくことが大切です。

会計処理・決算業務への影響

新基準では、対象となるリースごとに必要な情報をそろえ、使用権資産やリース負債を算定する作業が発生します。契約期間や支払条件が契約ごとに異なる企業では、対象契約が増えるほど経理部門の確認作業も増えていきます。
さらに、契約更新や条件変更があれば、登録済みの情報を見直さなければならない場面も出てきます。Excelや担当者ごとの管理表だけで契約情報を管理している場合、転記や更新の負担も無視できません。適用初年度だけを乗り切るのではなく、決算時に必要な情報を取り出せる状態を継続することが、安定した運用につながります。

契約管理・社内体制への影響

リースに関係する契約書は、経理部門だけが保有しているとは限りません。店舗やオフィスの賃貸借契約は総務部門、設備やシステムの利用契約は各事業部門など、複数の部署や拠点に分散している企業もあります。
そのため、新基準への対応では経理部門だけで契約情報を集めるのが難しいケースがあります。法務・総務・購買・現場部門など、それぞれが持つ情報を横断して扱える体制が求められます。具体的な役割分担や報告ルールについては、契約書の洗い出しや影響額の試算を進めた後、自社の業務フローに合わせて決めていきましょう。

新リース会計基準への対応の進め方

新リース会計基準への対応では、最初から会計システムの設定を始めるのではなく、社内にある契約書を集め、対象となる可能性がある契約を把握することが出発点です。一般的には、次の流れで準備を進めます。

  1. ➀契約書を収集して候補契約を一覧化する
  2. ➁会計処理に必要な契約情報を整理する
  3. ➂対象契約による影響額を試算する
  4. ➃会計方針と社内ルールを整備する

契約件数や保管場所によって準備に必要な期間は変わります。自社の状況に合わせ、余裕を持ったスケジュールで進めましょう。

契約書の収集と候補契約の一覧化

最初に行うのは、社内に存在する契約書の収集です。紙のファイルだけでなく、共有フォルダ、電子契約サービス、各部署が保管しているPDFなども対象にし、どこにどの契約があるのかを一覧にします。
候補契約の範囲は、前述したリースの識別基準をもとに設定します。最初の段階で対象を絞り込みすぎると確認漏れにつながるため、不動産や設備、車両、機器、特定資産の利用を含むサービス契約なども含めて候補を抽出するとよいでしょう。契約名、契約先、保管場所、担当部署などを一覧にしておくと、次の判定作業へ進められます。

会計処理に必要な契約情報の整理

候補となる契約を集めた後は、会計処理に必要な項目を契約書から取り出します。部署ごとに異なる項目で管理すると後の確認に時間がかかるため、あらかじめ共通の管理項目を決めておくことがポイントです。

管理項目主な確認内容
契約期間開始日・終了日・解約不能期間など
更新・解約条件延長オプションや解約オプションの内容
支払条件リース料、支払時期、変動する支払額の有無など
購入オプション契約終了時などに資産を購入できる条件の有無
契約書情報契約先、担当部署、契約書の保管場所など

必要な項目と契約書本体を紐付けておけば、後から条件を確認するときにも元の契約へ戻れます。台帳だけを作るのではなく、契約書の内容と管理データを行き来できる状態を目指しましょう。

対象契約の影響額の試算

リースに該当する契約が見えてきたら、新基準を適用した場合に財務諸表へどの程度の影響が出るかを試算します。対象契約のリース期間やリース料などをもとに、使用権資産やリース負債の計上額を算定し、総資産・負債や財務指標への影響を見ていきます。
影響額の試算は、経営層への説明や会計方針を検討する際の材料になります。また、対象契約が数件なのか、複数拠点をまたいで数百件あるのかによって、その後の管理方法も変わります。金額だけでなく、契約件数や更新頻度なども合わせて確認し、適用後に発生する管理業務の規模も見積もっておくとよいでしょう。

会計方針と社内ルールの整備

対象契約と影響額が把握できたら、実際の運用に向けて会計方針と社内ルールを決めます。短期・少額リースの簡便的な取扱いをどのように適用するかといった会計上の方針に加え、契約情報をどの部署が登録・更新するのかも決めておきます。
たとえば、契約締結を現場部門が行い、会計処理を経理部門が担当する企業では、新規契約や更新、条件変更が発生した際の報告ルートを明確にしておくことが欠かせません。管理台帳やシステムへ反映する期限や担当者まで定めておけば、担当者の記憶だけに頼らない運用へ切り替えられます。

新リース会計基準に備える契約書管理のポイント


新リース会計基準への初期対応後も、新規契約や更新、条件変更は継続して発生します。適用初年度だけ契約書を集めるのではなく、必要な情報を更新し続けられる契約管理の仕組みが必要です。管理体制を整える際は、次のポイントを押さえておきましょう。

  • ・紙・電子契約を一元管理する
  • ・AIでリース契約候補の抽出を効率化する
  • ・契約期間・更新・変更情報を継続して管理する
  • ・紙契約書を検索できる状態へデータ化する

契約件数が多い企業では、人の目だけですべての契約を探し続けると負担が大きくなります。現在の管理方法や契約件数に合わせ、継続して運用できる仕組みを検討しましょう。

紙・電子契約の一元管理

契約書が紙、共有フォルダ、電子契約サービスなどに分散していると、必要な契約を探すたびに複数の保管場所を確認しなければなりません。最初の棚卸しだけでなく、適用後の更新や変更管理にも同じ負担が続きます。
契約書管理では、紙と電子の契約を同じ管理基盤で検索できる状態を目指しましょう。契約相手、契約期間、契約種別などの情報と契約書本体を紐付ければ、経理や法務など必要な担当者が同じ情報を参照できます。複数の電子契約サービスを利用している企業でも、締結方法ごとに分けるのではなく、締結後の契約情報を軸にまとめて管理する考え方が有効です。

AIによるリース契約候補の抽出

契約件数が多い企業では、人がすべての契約書を読み、リースに該当する可能性があるものを探すだけでも大きな負担になります。候補契約を効率よく見つける方法の一つが、AIを活用した契約書の抽出です。
契約書管理システム コンパス(ConPass)には、保存された契約書ファイルからリース契約の可能性があるものをAIで識別し、候補としてリストアップする機能があります。AIによる抽出は、人が確認すべき契約を絞り込む作業に活用できます。ただし、抽出された契約が必ず会計上のリースに該当するとは限りません。最終的な判定は、契約内容と自社の会計方針を踏まえて行います。

契約期間・更新・変更情報の管理

新リース会計基準への対応では、契約期間や更新期限、解約通知期限などの情報を、契約書と合わせて継続管理できることが大切です。契約が更新されたり条件が変わったりした際、古い情報が残ったままでは会計処理に必要な情報とのずれが生じます。
そのため、契約条件が変わった際に管理情報を更新し、変更履歴も確認できる状態を整えておきましょう。コンパスでは、契約終了日や解約通知期限に応じたアラート通知を利用できるため、契約更新の見落としリスクを抑える運用にも活用できます。経理部門と契約を担当する部署が同じ情報を参照できれば、確認の手間も減らせます。

紙契約書のデータ化

過去の契約書が紙のまま保管されている場合は、保管箱やキャビネットから必要な契約書を探し、内容を確認する作業が発生します。契約数が多い企業ほど、新リース会計基準への準備だけでも大きな負担になりかねません。
紙契約書はスキャンしてPDF化するだけでなく、契約相手、契約日、契約期間などの管理情報と合わせて登録すると検索性が高まります。コンパスでは、紙契約書の回収からスキャン、データ登録、原本保管まで相談できます。社内だけで大量の契約書を処理するのが難しい場合は、データ化作業を外部へ任せる方法も検討できます。

新リース会計基準に関するよくある質問

新リース会計基準では、対象となる契約の考え方や契約書管理システムの役割について疑問が生じやすいものです。本文で触れた内容のうち、特に質問されやすいポイントを簡潔にまとめます。

オフィス賃貸や、クラウド・サブスク契約もリースに該当しますか?

該当する可能性があります。「特定された資産」を使用する権利が移転しているかが分かれ目です。一般的なソフトウェア利用は原則対象外ですが、専用機器が伴う契約や、不動産の賃貸借契約などは、契約名に「リース」となくても対象になり得るため確認が必要です。

新基準への対応は、経理と法務のどちらが主導すべきですか?

最終的な判定や影響額の算定は「経理部門」が行いますが、契約書の収集や管理は「法務・総務部門」や「現場部門」の協力が不可欠です。法務・総務が契約情報を一元化し、経理が必要な情報をスムーズに参照できる役割分担をおすすめします。

AIが抽出した契約はそのままリースと判断できますか?

AIが抽出した契約が、必ず会計上のリースに該当するわけではありません。AIは候補契約の探索や分類を効率化する手段として活用し、最終的な判定は契約内容と会計基準、自社の会計方針に沿って行います。

契約書管理システムだけで新基準への対応は完了しますか?

契約書管理システムだけで、新リース会計基準への対応が完了するわけではありません。システムは契約書の一元管理や候補契約の抽出、期限管理などを支援する仕組みです。リースの判定、影響額の算定、会計方針の決定などは別途行う必要があります。

まとめ:新リース会計基準への対応は契約書の洗い出しから始める

新リース会計基準は、2027年4月1日以後に開始する事業年度から原則適用されます。借手は原則としてリースに該当する取引について使用権資産とリース負債を計上するため、まず社内の契約書を集め、対象となる可能性がある契約を洗い出すことが大切です。
対象契約を特定した後は、契約期間や更新・解約条件、リース料など会計処理に必要な情報をそろえ、影響額の試算や社内ルールの整備へ進みます。契約書が紙や複数の電子サービスに分散している企業では、契約書管理システムを活用して情報を一元化する方法もあります。
コンパスでは、AIによるリース契約候補の抽出や契約期限の管理、紙契約書のデータ化・原本保管まで相談できます。新基準への準備と今後の契約管理を合わせて見直したい場合は、ぜひご相談ください。

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