電子契約を相手方に求められたら?対処法や導入を求める際のポイント
生産性向上の機運の高まりやテレワークの普及などに伴い、電子契約サービスを用いた契約締結を求められるケースが増えています。しかし、自社が未導入の場合、電子契約を利用して良いかどうか不安を感じる企業も少なくありません。そこで本記事では、取引先から電子契約を求められた場合の対処法や、導入を求める際のポイントなどについて解説します。
電子契約を導入する際におすすめのサービスもご紹介していますので、これから利用を検討している担当者は参考にしてください。
電子契約を求められるケースが増えている背景
ここ数年で「紙の契約書に押印して郵送する」という従来の流れは急速に変化しています。テレワークやDXの進展により、電子契約の導入を求める企業が増えているためです。自社がまだ導入していない場合、取引先から突然電子契約を求められるケースも珍しくありません。
ここでは、こうした変化の背景や、導入に踏み切れない企業が抱える不安を整理します。
テレワークやDX推進で契約の電子化が加速
テレワークやDX推進により、契約の電子化が加速しました。コストの削減、業務効率の向上などのメリットが大きいため、電子契約を導入する企業が増加しています。
他にも、経済産業省が策定した「DX推進ガイドライン」による影響も大きいとされています。
取引先から電子契約を求められる理由
取引先から電子契約を求められる理由としては、コスト削減、業務効率の向上、コンプライアンス強化の3点が挙げられます。
印刷や郵送など必要としないため、紙にかかるコストを削減できます。オンラインで即時締結できることから、業務効率が向上します。また、電子署名により内容の改ざんの防止や安全な保管が可能になるので、コンプライアンスの強化につながります。
まだ導入していない企業が感じる不安
電子契約が未導入の場合、契約相手方から電子契約を求められた際に、どのように対応すべきか悩む企業は多いです。また、実際に導入した後には、未導入の契約相手方にどう説明するかという課題もあります。
電子契約を相手方に求められたときの対処法
電子契約の利用を求められた際、慌てて対応してしまうと、社内規定や法的リスクを見落とす可能性があります。まずは、電子契約の法的有効性や社内ルールとの整合性を確認し、適切な手順で対応することが大切です。
ここでは、電子契約を求められたときに取るべき具体的なステップを解説します。
1. 法的に電子契約が有効か確認する
電子契約を求められた場合、当該契約書が法的に電子契約に対応しているかどうかを確認する必要があります。取引先においてもチェックしているはずですが、契約は双方が当事者となるため、求められる側も再確認しておきましょう。
なお、電子契約可能な契約書が増えている一方で、一部不可となっている契約書も存在するので注意が必要です。電子契約ができる契約とできない契約については、以下で解説します。
電子契約が認められる契約・認められない契約
現在では、企業が取り交わす契約書のほとんどが電子契約で締結可能です。例を挙げると、取引基本契約書、秘密保持契約書、雇用契約書などがあります。
不動産売買・賃貸契約に関する契約書や重要事項説明書は長らく電子化が認められていませんでしたが、2022年5月18日以降は電子契約による電子化が可能になりました。
特定商取引においても、以前は紙媒体での契約書面等を交付する義務がありましたが、2023年6月1日からは、消費者から事前の承諾を得ることを前提として、電子化が可能になりました。
その一方で、事業用定期借地契約、企業担保権の設定又は変更を目的とする契約、任意後見契約書に関しては、2025年現在も電子契約を利用できません。
理由としては、公正証書によって契約を締結すべきことが法律で定められているからです。
法的リスクを避けるためのチェックポイント
電子契約は便利な反面、法的効力の否定や改ざん、情報漏洩といったリスクを伴います。これらを防ぐには、電子署名やタイムスタンプ、アクセス権の設定などを組み合わせて運用することが重要です。電子署名は契約当事者の意思を証明し、契約の成立に「推定効」を持たせる仕組みです。
タイムスタンプを付与することで、その時点以降に改ざんが行われていないことを客観的に証明できます。さらにアクセス権を適切に設定すれば、社内で閲覧・編集できる範囲を制限でき、内部漏洩のリスクも低減します。これらを併用することで、電子契約の信頼性と安全性を確保できます。
2. 社内規定や承認フローを確認する
次に、社内規定について担当部署に確認します。電子契約を進めるにあたって社内の承認は必要不可欠ですが、「電子契約になった場合、契約書の保管はどうするのか」といった具体的な対処法の検討が必要です。
電子契約に関する社内ルールの整備
電子契約をスムーズに運用するためには、法務・経理・情報システムなど関係部署と連携しながら社内ルールを整備することが欠かせません。たとえば、電子署名管理規定や文書管理規定を改訂し、電子データの保管方法やアクセス権限を明文化します。
また、契約の締結・承認・保管の各プロセスにおける責任者を明確にし、操作ログを保存する体制を整えることも大切です。ルールを社内ポータルなどで共有し、従業員向けの教育を行うことで、運用のばらつきを防げます。
電子契約締結後の保管・管理方法
電子契約を締結した後は、紙ではなく電子データとして保管・管理する必要があります。PDF形式などの汎用フォーマットで保存し、社内サーバーやクラウドサービスを用いてバックアップを確保しましょう。2024年1月以降は電子取引データの保存が義務化されており、紙のみでの保存は認められていません。
保存期間は法人税法に基づき7年間と定められており、いつでも検索・閲覧できる体制が求められます。データの「見読性(読み取れる状態)」を維持することも重要で、定期的な確認やシステム更新を行うと安心です。
3. 契約方式の違いを理解しておく
次に、取引先が利用する電子契約サービスの種類を確認します。電子契約には、署名者の本人性を担保する方法として「立会人型」と「当事者型」の2種類があり、それぞれコストと作業負担が異なります。
立会人型と当事者型の違い
電子契約には「立会人型」と「当事者型」の2種類があります。立会人型は、契約の第三者(サービス提供者)が立ち会う形で、メール認証などを通じて署名を行う方式です。電子証明書の発行が不要で、スピーディーかつ低コストで導入できる点が特徴です。
一方、当事者型は各契約者が電子証明書を取得し、自ら電子署名を行う方式で、本人確認の厳格さと高い法的効力が得られます。契約金額が大きい取引や長期的な契約では当事者型、社内申請や日常的な取引では立会人型を選ぶなど、契約の性質に応じて使い分けるのが理想です。
コスト・セキュリティ・導入難易度の比較
立会人型と当事者型は、コスト・セキュリティ・導入難易度のバランスが異なります。立会人型は初期費用がほとんどかからず、導入のハードルが低い点が魅力です。中小企業や取引頻度の少ない業種に適しています。
一方、当事者型は電子証明書の発行に手間と費用がかかりますが、本人確認が厳格なため法的効力が高く、金融業界や法務関連企業で多く採用されています。自社の契約件数や取引リスクの程度に応じて、どちらを採用するかを判断すると良いでしょう。
4. 契約書の文言を電子契約仕様に修正する
指定された電子契約サービスが対応可能と分かったら、次に契約書の文言が電子契約に対応しているかどうかを確認します。
元の状態のまま電子契約してしまうと規定違反となるため、電子契約使用に訂正する必要があります。
「押印」「書面」などの表記を確認
電子契約では、従来の「押印」や「書面」といった文言がそのまま残っていると誤解を招く可能性があります。契約書内の該当箇所を確認し、電子契約仕様に修正しましょう。
例えば、「本契約書は、双方の押印をもって有効とする」は、「本契約書は、双方の電子署名をもって有効とする」に変更します。文言の修正は些細に見えても、法的整合性を保つうえで非常に重要です。修正版は必ず取引先と共有し、認識をすり合わせるようにしましょう。
取引先と修正内容を共有してトラブルを防ぐ
修正内容に対する認識が取引先と異なっていると、トラブルに発展する可能性があります。
書面契約から電子契約に変更した箇所をまとめたものを取引先と共有すると、スムーズに確認することができるでしょう。
5. 契約期間と電子証明書の有効期限を確認
電子契約では、その契約がどのくらい存続するかを確認する必要があります。電子契約はセキュリティのため暗号化されたうえで保管されますが、数年後には技術が革新され、暗号が解読されるといった可能性があります。
長期契約では「長期署名」を検討
電子契約に用いる電子証明書の有効期限は、一般的に1〜3年程度です。そのため、5年や10年といった長期契約では、契約満了時まで証明書の有効性を保つために「長期署名」の仕組みを導入する必要があります。長期署名とは、電子署名データに定期的に新しいタイムスタンプを付与し、長期間にわたって「この文書が改ざんされていない」ことを証明し続ける技術です。
長期リース契約やライセンス契約など、長期保存が前提となる契約では特に重要です。導入時は、対応している電子契約サービスを選定し、証明書更新のタイミングを社内で管理できる体制を整えましょう。
セキュリティリスクと更新のポイント
電子契約においては、改ざんや情報漏洩などのリスクがあります。
改ざんが行われると、両者間の契約内容の合意に関するトラブルが起きる可能性があります。また、サイバー攻撃などによってデジタルファイルの情報が漏洩する可能性もあります。セキュリティ対策などによって、リスクを最小限に抑えましょう。
電子契約の更新は、更新期間のチェックや管理台帳の効率化がポイントです。自動更新される契約の場合は、期間に関する条項を定期的に確認しましょう。10年を超える契約の場合は、法的有効性を保つために「保管タイムスタンプ」などを再付与して、長期署名を利用しましょう。
電子契約を導入していない取引先に説明するポイント
取引先が電子契約を導入していない場合、こちらから導入を提案しても戸惑われることがあります。電子契約は双方の合意があって初めて成立するため、相手企業にも安心して利用してもらうための説明が欠かせません。
ここでは、導入をスムーズに進めるために押さえておきたい3つの説明ポイントを紹介します。
1. コスト削減を具体的に示す
電子契約は、コストを削減できる点が非常に大きなメリットです。
コスト削減が課題になっている企業も多いので、未導入の取引先に対して説明する際に、重要なポイントとなります。
印紙税・郵送費・紙コストの削減効果
電子契約を導入する最大のメリットのひとつが、契約にかかるコストの削減です。書面契約では契約1件あたり4,000円程度の印紙税が発生することがありますが、電子契約は「文書の作成」に該当しないため非課税となります(印紙税法第3条)。また、郵送費や封入作業の人件費も不要となり、契約件数が多い企業ほど削減効果が大きくなります。
さらに、紙の使用量を減らすことで印刷コストや保管スペースの維持費も削減でき、経理や総務部門の業務負担軽減にもつながります。特に年間数百件単位で契約を取り扱う企業では、年間で数十万円規模のコスト削減が見込めます。
契約書保管スペースの削減メリット
電子契約を導入することで、紙の契約書を保管するためのスペースが不要になります。例えば、数百冊分の契約ファイルをデジタル化すれば、オフィスの書庫やキャビネットをまるごと削減でき、賃料コストの削減にもつながります。
さらに、災害や火災などのリスクからも契約書を守ることができ、BCP対策の一環としても有効です。物理的な保管から解放されることで、より柔軟で安全な文書管理体制を構築できます。
2. 業務効率・生産性向上を伝える
書面契約の時に必要だった工程を電子契約では省くことができるので、業務効率や生産性が向上します。コスト削減と同様に、未導入の取引先に対して伝えておきたい重要なポイントです。
契約締結までのスピードアップ
電子契約では、従来の紙契約で必要だった印刷・押印・郵送といった工程をすべて省略できます。これにより、郵送や返送にかかる数日間のタイムラグがなくなり、契約締結までの期間を平均3〜5営業日短縮できるケースもあります。承認プロセスをオンライン上で完結できるため、複数拠点間のやり取りや海外取引でもスピーディーに対応可能です。
結果として、発注・納品・請求といった後続業務の開始時期を早められ、全体の取引サイクルを短縮する効果があります。
電子管理による検索性と再利用性
電子契約を導入すると、過去の契約書をキーワード検索で瞬時に探し出せるようになります。紙のファイルを探す手間がなく、担当者の検索時間を1件あたり数分から数秒に短縮できるのが大きなメリットです。
また、過去の類似契約をテンプレートとして再利用できるため、新規契約書の作成工数を削減できます。検索条件を契約期間や取引先別に絞り込むことで、監査対応や契約更新業務も効率化でき、契約管理全体の精度向上につながります。
3. セキュリティとコンプライアンス強化
書面契約に慣れている取引先だと、電子保管の安全性に懸念を示す方もいるかもしれません。
しかし、電子契約に切り替えることで、セキュリティとコンプライアンスの強化につながります。
改ざん防止とログ管理機能
電子契約は暗号化されており、容易に改ざんされる心配がありません。さらに、誰がどの契約書を締結したか、誰がいつ閲覧したかといった操作履歴を記録・管理するログ管理機能があるので、セキュリティ強化、ひいてはコンプライアンス強化につながります。
BCP対策としての電子契約の有効性
電子契約は、災害やシステム障害といった予期せぬ事態への備えとしても有効です。クラウド上に契約データを保管しておけば、地震や火災などでオフィスが被災した場合でも、遠隔から契約書を確認・再発行できます。
また、テレワーク環境でも契約業務を継続できるため、事業継続計画(BCP)の観点からも非常に有効です。データのバックアップやアクセス制御を適切に行うことで、災害時でも重要な契約情報を守ることができます。
電子契約導入に不安がある場合の相談先
電子契約は便利な一方で、初めて導入する企業にとっては「法的対応は大丈夫?」「運用ルールはどう定めれば良い?」といった不安もつきものです。こうした場合は、電子契約に精通した専門サービスを活用すると安心です。
ここでは、専門サービスを利用するメリットと、導入支援に強いおすすめサービスを紹介します。
専門サービスを活用するメリット
電子契約を自社のみで導入・運用する場合、法務・情報システム・経理など複数部門の調整が必要になり、負担が大きくなりがちです。専門サービスを活用すれば、契約書作成から署名、保管、管理までの流れを一元化でき、法的要件も満たした状態でスムーズに運用できます。
最新のセキュリティ技術やサポート体制を備えている点も安心材料です。専門家の知見を活かすことで、初期段階の不安やトラブルを未然に防ぐことができます。
日本パープルの電子契約サービス「ConPass(コンパス)」
本記事では、数あるサービスの中から日本パープルの電子契約サービスをご紹介します。
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まとめ|電子契約の導入は企業間取引をスムーズにする第一歩
近年、電子契約を求められる場面は増えており、電子契約が可能な契約書も増加傾向にあります。電子契約には、コスト削減や業務効率・生産性の向上などの多くのメリットがあります。相手方から電子契約を求められた場合は、前向きに導入を検討してみてはいかがでしょうか。
電子契約の導入にあたっては適切なサービスの導入が必要です。自社に最適なサービスや導入方法を選択するためには、上記でご紹介した日本パープルを始めとする外部サービスを巻き込んで進めていくことをおすすめします。