セキュリティインシデント対応について解説!リスクや事前の対策も紹介
セキュリティインシデント発生時に落ち着いて対応するには、対応方法の理解や事前対策が重要です。
そこで本記事では、セキュリティインシデント対応について解説します。併せて、リスクや事前の対策方法についても紹介します。
セキュリティインシデント発生時に、適切な対応で被害を最小限に抑えたいとお考えのISMS担当者やセキュリティ責任者は必見です。
セキュリティインシデントとは
セキュリティインシデントの主な発生ケース
セキュリティインシデントの原因は3種類
セキュリティインシデント発生時の対応フロー
インシデントを未然に防ぐ、今すぐできる事前のセキュリティ対策
セキュリティインシデントに対応できる環境を整えよう
セキュリティインシデントとは
セキュリティインシデントとは、企業の情報資産やシステムに被害を与える、または与える可能性がある状況を表します。具体的には、情報漏えいや不正アクセス・マルウェア感染など、業務や信頼に影響を及ぼす出来事が含まれるのです。
そこで、以下3つの観点からセキュリティインシデントについてさらに解説します。
- セキュリティインシデント対応が重要な理由
- 巧妙化するサイバー攻撃の脅威
- セキュリティインシデントがもたらす深刻な被害とリスク
セキュリティインシデントへの理解を深めていくことが重要です。
セキュリティインシデント対応が重要な理由
セキュリティインシデント対応は、被害の拡大防止と信用回復に直結します。初動が遅れると、情報漏えいによるリスクが拡大し、顧客や取引先との関係悪化、法的責任の発生など深刻な被害をもたらします。
そのため、セキュリティインシデントへの迅速かつ適切な対応体制を整えることが、企業価値の維持や事業継続のために重要です。
巧妙化するサイバー攻撃の脅威
近年のサイバー攻撃は巧妙化が進み、その脅威が年々増しています。
標的型攻撃やゼロデイ攻撃など、従来の防御策をすり抜ける手法が増え、AIを悪用した攻撃も登場しているのです。これにより、企業規模を問わずサイバー攻撃による被害が発生しています。
そのため、最新動向を踏まえたセキュリティインシデント対応が方法の理解や事前対策が重要です。
セキュリティインシデントがもたらす深刻な被害とリスク
セキュリティインシデントは、以下のようなさまざまな被害やリスクをもたらします。
- 情報漏えいによる損害
- 事業活動の停止
- 経済的損失
- 法的責任・行政処分
- 企業価値の毀損
このように、被害は金銭的損失だけでなく、ブランド毀損・顧客離れ・法的制裁など、多岐にわたります。特に個人情報漏えいは社会的非難を受けやすく、長期的な業績悪化を招く場合もあります。
また、セキュリティインシデント対応や復旧にかかる時間やコストは莫大であるため、事業継続にも影響するのです。
セキュリティインシデントの主な発生ケース
ここでは、主なセキュリティインシデントが発生するケースを解説します。
- 不正アクセス・情報漏えい
- マルウェア感染・ランサムウェア
- フィッシング詐欺・なりすまし
- デバイスの紛失・盗難
- 内部からの情報漏えい・ヒューマンエラー
それぞれ発生原因や経路が異なり、必要な対策も変わるため、確認しましょう。
不正アクセス・情報漏えい
不正アクセス・情報漏えいは、外部からの不正侵入により顧客情報や機密データが盗まれるケースです。脆弱なパスワードや未更新のソフトウェアが狙われやすく、侵入後に内部情報が不正に送信され、漏えいする場合もあります。
不正アクセス・情報漏えいに対しては、多要素認証やアクセス制御によるセキュリティ対策の強化が効果的です。
マルウェア感染・ランサムウェア
近年、メールの添付ファイルや不正サイト経由でマルウェアに感染し、データ破壊や暗号化を行うランサムウェアの被害が増加しています。暗号化解除のために身代金を要求される事例も多くみられますが、要求を受け入れてもデータが戻ってくる保証はありません。
マルウェア感染・ランサムウェアに対しては、データのバックアップと定期的なセキュリティ更新が不可欠です。
フィッシング詐欺・なりすまし
フィッシング詐欺・なりすましは、実在する企業や知人を装ったメール、もしくはSNSのメッセージで、IDやパスワードを入力させる手口です。リンク先の入力画面が巧妙に偽装され、本物と見分けがつきにくい場合もあります。
フィッシング詐欺・なりすましにおいては、送信元確認や公式サイトからのアクセスを徹底することが被害防止につながります。
デバイスの紛失・盗難
デバイスの紛失・盗難による情報漏えいは、外回りの多い業務で起こりやすいケースです。また、リモートワークの普及にともなうパソコンやスマホの紛失・盗難も増加しています。
デバイスの紛失・盗難による被害は、暗号化やリモートワイプ機能の活用により抑えられます。もちろん、デバイスの持ち出し記録を残すなど、物理的な管理体制の強化も欠かせません。
内部からの情報漏えい・ヒューマンエラー
内部からの情報漏えい・ヒューマンエラーも深刻な被害をもたらします。従業員が故意にデータを持ち出したり、誤送信や設定ミスによって情報が漏れたりするケースもあるのです。
これらの内部犯行は発覚しにくいため、監視体制も重要です。アクセス権限の適正化、送信前確認のルール化、従業員への教育・訓練を行い、対策しましょう。
セキュリティインシデントの原因は3種類
セキュリティインシデントの原因には、大別して以下の3種類があります。
- 外部からの攻撃(外的要因)
- 組織内部の脆弱性(内的要因)
- 予期せぬトラブルと環境要因(災害・外部環境要因)
これらの原因は単独で発生するケースもありますが、複合的に作用し被害を拡大させる場合もあります。それぞれの特徴を理解し、適切な対策を講じましょう。
外部からの攻撃(外的要因)
外部からの攻撃は外的要因とも呼ばれ、サイバー犯罪者やハッカーによる不正アクセス・マルウェア感染・DDoS攻撃などが含まれます。外部からの攻撃は、金銭的利益や情報窃取・サービス停止を目的とする場合が多く、近年、手口が高度化・巧妙化しています。
特に、ゼロデイ攻撃や標的型攻撃は防御の隙をつかれやすく、事前の検知が難しいのが特徴です。そのため、最新のセキュリティ対策や監視体制の整備が重要です。
組織内部の脆弱性(内的要因)
組織内部の脆弱性は内的要因とも呼ばれ、従業員の不注意や誤操作、アクセス権限管理の不備、情報管理ルールの未整備などが含まれます。悪意のある内部関係者による情報の持ち出しや、不適切なパスワード管理も大きなリスクです。
組織内部の脆弱性は外部からの攻撃に比べて発見が遅れやすく、被害が長期化する傾向があります。定期的な従業員の教育やアクセス権限の見直し、内部監査の実施等によってリスクを減らしましょう。
予期せぬトラブルと環境要因(災害・外部環境要因)
予期せぬトラブルと環境的要因には、災害や外部環境要因が含まれます。災害として地震や洪水・火災など、外部環境要因として停電や通信障害、サプライチェーンの混乱が挙げられ、セキュリティインシデントの原因になります。
予期せぬトラブルと環境要因は人的要因と異なり予測が難しいため、被害を前提とした事業継続計画やデータのバックアップ体制が必要です。また、クラウドサービスや複数拠点を活用して重要な業務やデータを多重化させることも、リスク軽減に有効です。
セキュリティインシデント発生時の対応フロー
セキュリティインシデント発生時の対応フローは以下の通りです。
- 早期発見と正確な報告
- 被害を最小限に食い止める初動対応
- 原因究明と影響範囲の特定
- 適切な通知と公表
- 復旧対応と再発防止策の実施
- 事後対応
セキュリティインシデント発生時に適切な対応を行うことで、被害を最小限に抑えられます。事前に対応方法を整備し、スムーズに対応できるように準備しておきましょう。
早期発見と正確な報告
セキュリティインシデント対応で始めに行うべきなのは、異常をいち早く検知し、正確に報告することです。ネットワーク監視システムや侵入検知システムを活用し、日常的なログ監視を行いましょう。これにより、セキュリティインシデントの兆候を捉えやすくなります。
報告時は「いつ」「どこで」「何が起きたのか」を明確に伝えましょう。また、証拠となるデータを残しておくと、その後の対応がスムーズになります。
被害を最小限に食い止める初動対応
セキュリティインシデントが発生したら、被害を最小限に食い止めるための初動対応が重要です。初動対応では、該当システムやネットワークを隔離したり、関連アカウントの停止・パスワードの変更を行ったりする必要があります。
セキュリティインシデント対応の中でも、初動が一番大切です。いかに素早く適切な対応をできるかによって、被害の大きさが決まるといっても過言ではありません。
初動対応はスピードが命であり、迷いなく動けるよう事前にマニュアル化しておきましょう。また、初動対応の判断基準を定めることが、現場担当者の迅速な行動につながります。
原因究明と影響範囲の特定
セキュリティインシデントの発生後は、原因の究明と影響範囲の特定を行います。
技術部門や外部専門家と連携し、ログ解析やフォレンジック調査を行うことで攻撃経路や侵入方法を解明します。併せて、影響を受けたデータやシステム、関係者を特定し、今後の対応方針を明確化しましょう。
迅速な原因究明と影響範囲の特定は、再発防止にも直結します。
適切な通知と公表
個人情報漏えいなどの法令やガイドラインに基づく報告義務がある場合は、速やかに監督官庁や関係機関、影響を受けた顧客・取引先へ通知します。
公表の際は事実を正確に伝えると同時に、誠意を持った対応方針や補償内容を提示することが信頼回復につながります。情報開示の遅れは企業の信用を失う可能性があるため、通知と公表の準備が整い次第、速やかに行いましょう。
復旧対応と再発防止策の実施
次に、復旧対応と再発防止を行います。
復旧作業では、特定した原因を除去し、システムや業務を正常な状態に戻します。バックアップデータの復元やセキュリティパッチ適用、設定変更などを迅速に実施しましょう。
併せて、再発防止策を実施します。運用ルールやシステム構成の見直し、新たなセキュリティ対策の導入などを行い、同様の被害が繰り返されないよう体制を整えます。
事後対応
セキュリティインシデントの復旧・再発防止対策が終わっても、事後対応が必要です。
セキュリティインシデントの全容を振り返り、対応の妥当性や改善点を整理しましょう。これらをまとめて報告書を作成し、経営層や関係部門と共有して、組織全体の対応力向上につなげます。
また、今回の教訓を踏まえてマニュアルや訓練内容を改訂し、将来のリスク低減を図ります。
インシデントを未然に防ぐ、今すぐできる事前のセキュリティ対策
セキュリティインシデントを未然に防ぐためには、セキュリティ対策が重要です。ここでは、今すぐできる事前のセキュリティ対策を紹介します。
- セキュリティ体制の構築
- IT資産の管理
- 最新の脅威に対応するソフトウェア更新
- セキュリティツールの導入
- 従業員の教育・訓練
これらをバランスよく実施することが、予防の鍵となります。
セキュリティ体制の構築
まず、セキュリティ体制の構築を行いましょう。専任の情報セキュリティ責任者や担当部署を設置し、権限と責任を明確化します。これにより、迅速な意思決定が可能になります。
また、経営層がリーダーシップを発揮して情報セキュリティポリシーを策定し、組織全体で共有することが大切です。インシデント対応チームの設置も、初動対応の質を高めるための有効な手段であるといえます。
IT資産の管理
すべてのIT資産を正確に把握し、台帳で管理しましょう。IT資産として、以下のものが例として挙げられます。
- サーバー
- デバイス
- ソフトウェア
- ネットワーク機器
不要になった機器やアカウントは速やかに廃止し、利用状況を定期的に監査することも大切です。資産管理が曖昧な場合、セキュリティホールや不正利用の温床となり、セキュリティインシデント発生時の調査や復旧も遅れます。
最新の脅威に対応するソフトウェア更新
OSやアプリケーション、セキュリティソフトは、常に最新の状態を維持しなければなりません。ソフトウェアの更新を怠ると、脆弱性を悪用されるリスクが高まるのです。
自動更新機能の活用や、更新作業のスケジュール化を行い、対応漏れを防止することが重要です。特に、ゼロデイ脆弱性が公開された場合には、迅速な対応が求められます。せっかくセキュリティソフトをインストールしていても、きちんと更新していなければ脅威となる可能性があるのです。
セキュリティツールの導入
セキュリティツールの導入も、セキュリティインシデントを防ぐ有効な手段の一つです。ファイアウォールやウイルス対策ソフト、侵入検知システム、侵入防止システムなど、複数のセキュリティツールを組み合わせて多層防御を構築しましょう。
セキュリティツールは、導入後も設定や運用の見直しを継続し、最新の脅威に対応できるように保つことが大切です。
従業員の教育・訓練
全従業員を対象に、情報セキュリティの基礎知識から最新の攻撃事例までを網羅した教育を定期的に実施します。
また、デバイスを操作するのは従業員であるため、フィッシングメール訓練やインシデント対応演習を通じて、実践的なスキルを習得することが求められます。
人的ミスは多くのセキュリティインシデントの原因となるため、継続的な意識向上が欠かせません。
セキュリティインシデントに対応できる環境を整えよう
セキュリティインシデントは対応次第で被害を減らせるため、環境を整えることが大切です。事前にセキュリティインシデント対策を行い、スムーズに対応できるようになりましょう。
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