正直なところ業務に支障はないの?面白法人カヤックに「ユニークな社内制度」の裏側を聞いてきた

サイコロの目で給料を決めるサイコロ給制度や、全社員が人事部に所属するぜんいん人事部制度など、ユニークな社内制度で有名な面白法人カヤック(株式会社カヤック)。

しかし、ユニークな制度を複数導入することで、日々の業務に支障はないのでしょうか。また、それらの制度はどういった考えに基づいて作られ、社員の方々にどのような影響を与えているのでしょうか。

今回は、面白法人カヤック(株式会社カヤック)のヨコハマ展望支社で、ユニークな制度の数々やそれらが生まれた背景、そして、それらの制度が会社の経営や、社員の方々にどんな影響を与えているのかをお聞きしました。

“面白いことをしたい”全てはその想いから、プロダクトも社内制度も生まれていた


ーそもそも、カヤックさんは何故ユニークな制度が多いんですか?

「元々、うちの会社の代表取締役である柳澤貝畑久場の3人は、学生時代の友人だったんです。その3人が”何をしたいかっていうのはないけど、とにかく面白いことやりたいよね“という考えの元に作った会社がカヤックです。

でも、会社を作る時に色々な先輩方に相談して”友達同士で会社なんてやっても絶対上手くいかないよ“って言われたそうで…。理由を聞くと”お金のことでもめるから“という答えが多かったそうです。

面白いことをやるために会社を設立するのに、お金のことで面白くなくなってしまうなら、お金にまつわる楽しい制度を作ればいい“ということで生まれたのが、サイコロで給料を決めるサイコロ給です。

他人の働きぶりを他人が評価して給料を決めるのって限界があるじゃないですか。人間なのでどうしても評価しきれない部分があるし、少なからず感情もあるし、完璧に公平な評価はできないですよね。
それがもめる原因になってしまうなら、いっそのことサイコロで運とか天とかに任せてしまった方が面白いし、もめないんじゃないかって。」

ー”ユニークな社内制度を作ろう”という始まりではなく、”面白い会社を作るにはどうしたらいいか”という観点から、結果としてユニークな社内制度が生まれたんですね。
他にも、設立当初からある制度はありますか?

ぜんいん社長合宿ですね。
年に2回、社員全員で行う1泊2日の合宿なんですが、社員全員がカヤックの社長になったつもりで、その時出されたお題についてひたすらブレストするんです。最終的にはチームごとにプレゼンし、優勝したチームには、次のサイコロ給でサイコロの目が2倍になる権利などが与えられます。

お題は新しい社内制度を考えるなど、その時によって様々です。」

ーぜんいん社長合宿…面白いですね(笑)。
年に2回そういった機会があると、自然と日々の仕事も社員の方一人ひとりが”自分ゴト化”するクセがつきそうです。

サイコロ給とぜんいん社長合宿は設立当初からあったとして、その他の制度はどうやって生まれているんですか?

「先ほど言ったように、ぜんいん社長合宿で「新しい社内制度を考えてください」というお題がでたときは、そこで優勝したチームが考えた制度は基本的に導入されます。
さらに、柳澤との定期的なミーティングの場では、新しい制度やキャンペーンの提案が頻繁に挙がっています。

あと、ぜんいん社長合宿の影響もあるでしょうし、元々カヤックに入ってくる人たちの人柄もあるんですが、基本的にみんな何事も”自分ゴト化“することが当たり前になっているんですよ。なので、業務内容についても、働き方についても、”言われたことをそのままやる“というよりも”自分だったらこうする“と考える人が多く、そこから新しい制度が生まれたりすることもあります。」

ーすごく良いサイクルができているんですね。

ただ、一人ひとりが自分の意見を持っていると、それがぶつかったり、弊害となってしまうことはないんですか?
例えば、業務が忙しくて制度が重荷になってしまったり、良かれと思って導入した制度に対して「やりたくない」って人もいたりしないんですか…?

「どうでしょう…うちの会社、”やりたくない“と思った人は”やらない“ので何の問題もないと思います(笑)。

会社全体でルールを作って”こうしなさい、ああしなさい”って強制することがあんまりないんです。もちろん”お客様が第一“であることと”面白いものを作ること“は絶対なんですが、それが守られるのであればそのやり方は自由です。自由ですが、自分で選択した分そのやり方で結果を出さないといけないので、それ相応の責任もつきまといます。」

面白さと自由さと、それにつきまとう責任の見え方が良いバランスで成り立っており、とても良いサイクルができているようです。

働くことが面白くなる!面白法人カヤックの社内制度

実際にどんな社内制度を導入しているのか、いくつかの事例もお聞きしました。

基本給+αをサイコロで決める、「サイコロ給」

毎月の給料をサイコロを振って決めるというサイコロ給制度

基本給×0.01×サイコロの目

がその月の基本給+αになります。
例えば、基本給30万円の人がサイコロで1を出したら3000円がプラスされ、その月は30万3000円が給料に。

月に1回、「サイコロ時間ですよ〜」というアナウンスが流れ、全社員がサイコロを振るというサイコロ給。その時間、仕事の関係でサイコロが振れない人は、あらかじめ他の人に頼んでおく代振りもできるそうです。

ちなみに、同じ目が3回続くと3回目は数字が2倍になるのだとか。つまり、1が3回続いても、3か月目は2に。各自がサイコロ給で出した目の平均は、カヤックのHPでランキング形式に掲載されています。

会社の課題を自分ゴト化、「ぜんいん社長合宿」

年に2回行われるという1泊2日の合宿。
全社員が”自分がカヤックの社長だったら…“という観点で、用意されたお題についてチームごとにブレスト・プレゼンを行います。

上司も部下も関係ない、お互いの働きぶりを評価する「月給ランキング(社員の相互評価)」

同じ職種の社員同士の相互投票でランキングを決める月給ランキング。この結果が月給に反映されます。

自分が社長になったつもりで社員を報酬順に並べてください」という問いの元各メンバーを評価し、それを元に各自の固定給が決定されます。

「社長になったつもり」というものは、すなわちそれぞれの主観です。主観の集まりは意外に正しく、主観の集まりが、その組織がいちばん大切にしている価値観であり、いちばん納得感・公平感が出るという考え方だそうです。

長く働く楽しみのひとつ、「のこるん同期旅行手当」

転職の多いIT業界。5年間働いた社員をねぎらうために作られたというのこるん同期旅行手当は、入社5年後(新卒入社の場合)に何%の同期が残っているかで会社が費用を負担してくれる同期旅行の旅行先が変わります。

具体的には、

離職率10%以下の場合…世界一周旅行
離職率40%以下の場合…1週間ハワイ旅行
離職率70%以下の場合…2泊3日北陸の旅
離職率70%を超えた場合…日帰り健康ランド

といった具合に、旅行先が分かれています。一緒に成長してきた同期と、会社のお金でねぎらい合えたら最高ではないでしょうか。
同期みんなで世界一周旅行…行ってみたいものです。

給料明細を開く楽しみがちょっと増える、スマイル給・こぶし給

相手の良いところを文章にして褒めるのがスマイル給。反対に、改善してほしいところを文章にして伝えるのがこぶし給です。

毎月ランダムに「この人にメッセージを書いてください」と届くので、その人に向けてスマイル給やこぶし給を送ります。

最初も最後もブレストが大事!入社前のファーストブレスト・退社前のファイナルブレスト

とにかくブレストが多いというカヤック。入社前の社員も、退社前の社員もキャリアが近い現場社員と一緒にブレストを行います。

入社前のファーストブレストでは、まず新入社員となる人に人生プランや今度の夢などからやりたいことを3つほど書いてもらい、それらを実現するためには何をすればいいのかみんなでブレストをし合います。

反対に退社前のファイナルブレストではどうしたら辞めずに済んだのかをブレストします。退社=悪という考え方ではないカヤック。本人が決めたことなら基本的には応援するそうですが、退社を決めた人から会社の改善点などを聞くのはとても良い機会です。

“会社の理念”を共有することで、全員が良い社内制度を生み出すことができる

とにかく面白いことをやろうよ“という創業者たちの想いもあり、好きなことに全力で向き合う人が多いというカヤック。

社員のモチベーションを上げたり、業務の効率化をはかるため社内制度に注目する企業が多い中、設立当初から面白いことをするためにユニークな社内制度がある企業は少ないのではないでしょうか。

カヤックでは、創業者の方々がしっかりとした曲げない理念を最初から持っており、その理念の解釈は個々に任せられています。しかし、根底の理念をしっかりと共有できているからこそ、日々の働き方や業務内容を自由にしても、会社の軸がをぶらさずに各々が個性を発揮できる環境が成り立つのです。

もし、今自分の会社を成長させるために新たな社内制度が必要だと考えている方は、カヤックのように会社の理念に基づいた働き方からアイディアを出してみてはいかがでしょうか。社内制度は手段にしか過ぎません。社員間で目的をしっかりと共有することで、それを達成するための様々な手段が見えてくるでしょう。