サプライチェーン攻撃対策で企業を守ろう!攻撃手法やリスクを解説
現在、経済産業省では「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度」が2026年度の制度開始を目標に整備が進められており、サプライチェーンの一部を担う企業にとっては取引上の要件としてサプライチェーン攻撃への対策を求められるケースが今後増加していくことが予想されます。
そこで本記事では、サプライチェーン攻撃の仕組みやリスクを紹介します。あわせて、ベンダー管理・契約書の見直し・セキュリティ監査など、具体的な対策を詳しく解説します。
サプライチェーンを構成する大手企業や、その一部を担う中小企業のセキュリティ担当者は必見です。
サプライチェーン攻撃とは
サプライチェーン攻撃の種類
サプライチェーン攻撃によるリスク
サプライチェーン攻撃への対策
サプライチェーン攻撃の対策ロードマップ
サプライチェーン攻撃は関連する企業にとって最大級の脅威
サプライチェーン攻撃とは
サプライチェーン攻撃とは、企業と取引関係にある外部業者(サプライヤー)や、サービス提供者を経由して攻撃するサイバー攻撃です。直接的に標的企業へ侵入するのではなく、セキュリティ体制が比較的脆弱な取引先を狙い、間接的にシステム内部へ侵入する攻撃手法です。
近年では、ソフトウェアのアップデートやクラウドサービスを悪用する形で被害が拡大しており、世界中の企業に深刻な影響を与えています。
サプライチェーン攻撃には、以下の特徴があります。
- 直接攻撃よりも侵入しやすい
- 被害が広範囲に及ぶ
- 発見が遅れる傾向にある
サプライチェーン攻撃の特徴について、理解を深めましょう。
直接攻撃よりも侵入しやすい
攻撃者にとってサプライチェーン攻撃は、標的企業への直接侵入よりも成功率が高い手法です。大企業のセキュリティは強固でも、取引先や外部委託先の防御が甘い場合、そこを突破口にできます。
一見関係のない小規模なベンダーを経由して情報網へ侵入できるため、発見も難しく、攻撃者にとって効率的な手段となっています。
被害が広範囲に及ぶ
サプライチェーン攻撃の恐ろしさは、被害が単一企業にとどまらない点です。1社が侵害されると、その取引先や顧客、関連企業にまで影響が波及します。
特に、ソフトウェアやクラウドサービスなどを多くの企業が利用している場合、攻撃の影響範囲は一気に拡大し、業界全体に混乱を招くケースも少なくありません。
発見が遅れる傾向にある
サプライチェーン攻撃は、侵入経路が複雑で特定しにくいため、発見が遅れやすい傾向にあります。
攻撃者はまず取引先システムに潜伏し、標的企業のネットワークに少しずつ侵入します。そのため、異常な挙動が見つかる頃には、すでに内部情報が流出していることも多く、早期発見・対応が難しいのが実情です。
サプライチェーン攻撃の種類
サプライチェーン攻撃には、攻撃対象や侵入経路によって、以下の3種類があります。
- ソフトウェアサプライチェーン攻撃
- サービスサプライチェーン攻撃
- ビジネスサプライチェーン攻撃
それぞれ攻撃の形態が異なりますが、共通しているのは「信頼関係を悪用して侵入する」という点です。各攻撃手法の特徴を詳しく見ていきましょう。
ソフトウェアサプライチェーン攻撃
ソフトウェアサプライチェーン攻撃とは、開発元やアップデートプロセスを狙い、悪意のあるコードを混入させる攻撃です。ユーザーは正規のアップデートを実行したつもりでも、実際にはマルウェアをインストールしてしまうことになります。
代表的な例として、2020年の「SolarWinds事件」が挙げられます。この攻撃では、世界中の政府機関や大企業が影響を受け、ソフトウェア供給網のリスクが一気に注目されました。
サービスサプライチェーン攻撃
サービスサプライチェーン攻撃は、クラウドサービスや外部委託先のインフラを通じて侵入する手口です。SaaSやクラウドストレージ、API連携サービスなど、他社のプラットフォームを利用している企業は特にリスクが高まります。
攻撃者は、正規のアカウントを乗っ取る、あるいは権限を悪用してデータへアクセスするケースが多く、近年はゼロトラスト環境でも防御が課題となっています。
ビジネスサプライチェーン攻撃
ビジネスサプライチェーン攻撃は、業務委託や共同開発などのビジネス関係を悪用する攻撃です。
例えば、請求書メールを装ったフィッシングや、取引先ドメインを偽装したBEC(ビジネスメール詐欺)が代表例です。攻撃者は信頼できる相手を装うことで、従業員の警戒を解き、内部情報や資金を奪います。
技術的な攻撃に比べて心理的な要素が強く、ヒューマンエラーを突く点が特徴です。
サプライチェーン攻撃によるリスク
サプライチェーン攻撃が発生すると、被害は単なる情報漏えいにとどまりません。サプライチェーン攻撃によるリスクは、以下のように多岐にわたります。
- 金銭的損失
- 信用失墜
- 法規制リスク
- 取引停止リスク
- 国際的影響
サプライチェーン攻撃は、企業経営全体に大きな影響を及ぼすのです。
金銭的損失
サプライチェーン攻撃によるシステム停止やデータ復旧、顧客対応、調査費用などは、直接的なコストが発生します。
また、業務中断による売上減少も深刻です。特に製造業などでは、供給網が止まるとサプライチェーン全体に損失が波及し、1件のインシデントが数億円規模の被害につながるケースもあります。
信用失墜
サプライチェーン攻撃により取引先や顧客の情報が流出した場合、企業の信頼は一気に失われます。再発防止策を講じても、一度失った信用を取り戻すのは容易ではありません。
BtoB取引では「セキュリティ管理が甘い企業」と見なされ、今後の契約機会を失うリスクもあります。
法規制リスク
個人情報や顧客データが漏えいした場合、個人情報保護法やGDPRなどの法規制違反に問われる可能性があります。違反が認められると、罰金や行政指導だけでなく、企業名の公表という社会的制裁も受けます。
特に海外企業との取引では、各国の法制度に対応する体制整備が欠かせません。
取引停止リスク
サプライチェーン攻撃の被害に遭った企業は、セキュリティ上の懸念から取引停止となるケースもあります。
特に大手企業や官公庁は厳しいセキュリティ基準を設けており、インシデントを起こした企業は再契約が難しくなります。これにより、長期的なビジネス損失につながるおそれがあるのです。
国際的影響
グローバルに事業を展開している企業では、サプライチェーン攻撃が国際的な影響を及ぼす場合もあります。海外の拠点や提携先にも被害が波及し、現地の法規制対応や報告義務に追われるケースも考えられるのです。
特に、多国籍サプライチェーンを持つ企業では、国境を超えた連携体制が求められます。
サプライチェーン攻撃への対策
サプライチェーン攻撃を防ぐには、技術的な防御だけでなく、組織的・契約的な対策が必要です。ここでは、主な5つの対策について解説します。
- ベンダー管理の強化
- 契約書の見直し
- セキュリティ監査・評価
- 技術的対策
- インシデント対応体制の整備
サプライチェーン攻撃の対策では多層的な防御が求められるため、それぞれ確認しましょう。
ベンダー管理の強化
まず重要なのは、取引先(ベンダー)のセキュリティレベルを把握し、ベンダー管理を強化することです。
企業はベンダー登録時や契約更新時に、情報セキュリティチェックリストを用いて評価する仕組みを導入する必要があります。定期的なリスク評価やアンケート調査を行って脆弱なベンダーを特定・改善し、攻撃経路の最小化を行いましょう。
契約書の見直し
契約書には、セキュリティ要件や責任範囲を明確に定義することが欠かせません。今一度、契約書を見直しサプライチェーン攻撃に備えましょう。
契約書には、万が一情報漏えいが発生した場合の報告義務や損害賠償条項、再委託制限などを盛り込み、リスクの連鎖を防止します。
特にクラウドや外部委託契約では、SLA(サービス品質保証)の中にセキュリティ項目を追加するのが効果的です。
セキュリティ監査・評価
取引先のセキュリティ監査や評価は、サプライチェーンリスク管理の要です。書面審査だけでなく、必要に応じて現地訪問や第三者評価を実施し、実態を確認しましょう。
また、ISO27001等の認証の有無も判断材料になります。監査結果の継続的な更新や、改善状況を追跡する体制の構築が求められます。
技術的対策
技術面では、アクセス制御・暗号化・多要素認証の導入がサプライチェーン攻撃対策の基本です。さらに、EDR(Endpoint Detection and Response)やXDRなど、高度な検知システムを活用し、不審な挙動を早期に検知します。
取引先との通信にはVPNやゼロトラストネットワークを導入し、安全なデータ連携を実現することが効果的です。
インシデント対応体制の整備
攻撃を完全に防ぐことは困難なため、万が一に備えたインシデント対応体制が必要です。CSIRTの設置や外部専門機関との連携体制を整備し、発生時の初動対応を迅速に行えるようにしましょう。
また、対応手順を文書化し定期的な訓練を実施することで、実践する力を身につけられます。
サプライチェーン攻撃の対策ロードマップ
効果的な対策を実行するには、段階的なロードマップの構築が重要です。そこで、以下のロードマップを参考にしてください。
- 外部ベンダーの可視化と評価
- 契約書とSLA(サービス品質保証)の見直し
- 継続的なセキュリティ監査と評価
- インシデント発生時の対応体制構築
- 最新の技術的対策(EDRなど)の導入
対策の流れを可視化し、継続的に改善していく仕組みを整えましょう。
①外部ベンダーの可視化と評価
最初のステップでは、外部ベンダーの可視化と評価を行います。すべての外部委託先・取引先をリスト化し、セキュリティレベルを評価しましょう。
具体的には、取引金額やデータアクセス権限などのリスク指標を設定し、優先順位をつけて管理します。評価については、ガバナンス整備、取引先管理、リスクの特定、システムの防御、攻撃等の検知、インシデントとの対応・復旧、などの対策事項・要求項目を定めて、ランクに応じた評価を行うことが重要となります。
②契約書とSLA(サービス品質保証)の見直し
次に、契約書とSLA(サービス品質保証)の見直しを行います。既存の契約を見直し、セキュリティ関連項目を明文化しましょう。
データ管理・アクセス制御・再委託禁止・事故報告などを契約に含めることで、責任範囲が明確になります。また、SLAに「障害発生時の対応時間」「報告期限」を設定し、迅速な対応を可能にしましょう。
③継続的なセキュリティ監査と評価
継続的なセキュリティ監査と評価も、サプライチェーン攻撃対策に欠かせません。
一度の監査で安心せず、定期的にセキュリティ監査および評価を実施する必要があります。年次監査や四半期レビューを通じて、改善の進捗を確認しましょう。
また監視を続けるために、AIや自動化ツールを使った脆弱性スキャンを組み合わせると効率的です。これにより、常に最新のリスクに対応する体制を維持できます。
④インシデント発生時の対応体制構築
攻撃が発生した際の対応を明確化し事前に訓練を行って、インシデント発生時の対応体制を構築しましょう。
初動対応・被害範囲の特定・報告・復旧までの流れを決め、関係部門間の連携をスムーズにします。さらに、被害拡大を最小限に抑えられるよう、外部委託先にも連絡フローを共有しましょう。
⑤最新の技術的対策(EDRなど)の導入
最後に、技術的防御を最新化することが不可欠です。EDRやSIEMを用いて端末挙動を監視し、脅威を早期発見しましょう。
さらに、ゼロトラストやSASEなどの新しいセキュリティアーキテクチャを採用し、境界防御に依存しない仕組みを実現します。これらの技術を定期的に見直すことが、持続的な防御につながります。
サプライチェーン攻撃は関連する企業にとって最大級の脅威
サプライチェーン攻撃は、企業単体の問題ではなく、関連する組織全体を巻き込む連鎖的脅威です。ベンダー管理や技術的防御、契約見直し、迅速な対応体制の構築などで対策し、企業の信頼と継続性を守りましょう。
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