2025年7月31日情報セキュリティ

ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)の基礎を解説!

ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)は、情報セキュリティのリスクを組織的に管理し、企業の大切な情報資産を守るための仕組みです。情報漏えいやサイバー攻撃のリスクが高まる現代において、ISMSの構築は企業の信頼性を維持するために不可欠と言えるでしょう。

本記事では、ISMSの基本から、導入するメリット、具体的な導入手順までを分かりやすく解説します。ISMS認証の取得を検討している方にも役立つよう、認証のメリットや取得・維持の方法も紹介します。この記事を読めば、自社でISMSに取り組むべきか、どのように進めればよいかが明確になります。

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ISMSとは

ISMSの目的

ISMSに関するISO規格・JIS規格

情報セキュリティの3要素

ISMS導入のメリット

情報資産を守る

信頼を高める

網羅的にセキュリティ対策が実施できる

ISMSの導入手順

1.Plan

2.Do

3.Check

4.Act

ISMS導入のポイント

トップマネジメントの関与

リスクアセスメント

従業員への教育と意識向上

継続的改善

ISMS認証とは

ISMS認証を取得するメリット

ISMS認証の取得方法

ISMS認証の維持方法

ISMSの導入を進めよう

ISMSとは

ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)は、組織が情報資産を適切に管理し、漏えい・改ざん・紛失などのリスクから保護するための仕組みです。

具体的には、自社のリスクを評価・把握し、対策を練って資源を分配することでシステムを運用します。これにより、情報セキュリティの維持や改善を行い、リスク管理をきちんと行っていることを利害関係者へ証明できるのです。

ISMSの目的

ISMSの主な目的は、組織の情報資産をリスクから守ることです。リスクを特定・評価し、適切な管理策を講じて情報漏えいやサイバー攻撃などへの対応力を強化します。

近年、情報の重要性が高まっており、機密情報の漏えいは企業に大きな損害を与えます。そのため、ISMSを導入し、情報セキュリティを強化する必要性が増しているのです。

ISMSに関するISO規格・JIS規格

ISMSは国際規格ISO/IEC 27001に基づき、日本ではJIS Q 27001として制定されています。2022年の改訂版ではリスクへの柔軟な対応や最新の脅威を踏まえた管理策の更新が行われました。

2022年の改訂については『【2024最新版】ISMS(ISO27001)改訂の概要とポイントを解説』の記事で解説しています。気になった方は、参考にしてください。

情報セキュリティの3要素

ISMSの根幹をなすのは「機密性」「完全性」「可用性」という情報セキュリティの3要素です。

  1. 機密性:認可された者のみが情報にアクセスできる
  2. 完全性:情報が正確かつ完全である
  3. 可用性:必要なときに情報へアクセスできる

ISMSではこれら3つの要素を満たすために、物理的・技術的・人的な対策をバランスよく組み合わせる必要があります。

また、これらと合わせて以下4つの追加要素を含めるケースもあります。

  1. 真正性:情報の確実性を保証する
  2. 責任追跡性:誰がどのような処理を行ったか追跡できる
  3. 否認防止:行った操作を否認できないようにする
  4. 信頼性:システムが正常に動作し意図した処理ができる

これらの要素を網羅的にカバーし、ISMSを運用しましょう。

ISMS導入のメリット

ISMSを導入するメリットは、以下の3つです。

  1. 情報資産を守る
  2. 信頼を高める
  3. 網羅的にセキュリティ対策が実施できる

ISMSの導入により、組織内の情報セキュリティ管理が体系化され、情報資産を守ることができます。また、セキュリティリスクへの耐性が向上するため、顧客や取引先への信頼獲得にもつながります。

それぞれのメリットについて事例とともに紹介します。

情報資産を守る

ISMSの導入により、情報資産を守ることができます。

クラウド医療サービスでは、クラウド型電子カルテやオンライン診療を提供する組織としてサービス信頼性を担保するため、2018年にISO/IEC 27001:2013を取得しました。また、クラウドセキュリティ認証であるISO/IEC 27017も取得し、安全性の向上と顧客安心感の両立に成功しました。

このように、ISMSの導入により情報資産を守り、第三者へ安心感を与えることも可能です。

信頼を高める

顧客や取引先からの信頼を高められる点も、ISMSを導入するメリットであるといえます。

地図情報企業では住宅地図やカーナビデータなど「膨大で機密性の高い地図情報」を管理する必要があり、2018年にISO/IEC 27001(JIS Q 27001)認証を取得しました。これにより、企画段階からセキュリティを考慮する仕組みが定着し、全社員の情報意識が向上したのです。

ISMSの導入をきっかけに信頼が高まったため新規受注も拡大し、対外的な評価も向上しました。

網羅的にセキュリティ対策が実施できる

ISMSの導入は、技術的な対策だけでなく、ルール作りや人の意識まで含めた網羅的なセキュリティ対策の実現に繋がります。

ある中小企業では、特定の担当者に依存していた情報管理体制(属人化)に課題を感じ、ISMSを導入しました。その過程で、セキュリティ規程やインシデント発生時の対応フローを文書化して全社で共有。これにより、誰が担当でも一定のセキュリティレベルを保てるようになり、組織全体で網羅的な対策が実現しました。

結果として、情報セキュリティが会社の強みとなり、事業の安定性を高めることに成功しています。

ISMSの導入手順

ISMSの導入は、Plan(計画)・Do(実行)・Check(点検)・Act(改善)の4段階を繰り返すPDCAサイクルによって進められます。ISMSの導入手順について、具体的にPDCAサイクルをどのように回せばよいかを解説します。

手順を確認し、PDCAサイクルの流れを把握しましょう。

1.Plan

Planとは、ISMSを導入するための計画を立てる段階です。

まず、情報セキュリティ方針を策定し、保護すべき情報資産の洗い出しとリスク評価を行います。例えば、顧客データベースや業務システムなどが保護すべき情報資産に該当します。

評価結果をもとに、ISMSの導入に必要な目標を計画段階で明確に定めましょう。その後、定めた目標を達成するための実行計画を策定します。

2.Do

Doとは、策定した管理策を実施に移しISMSを運用する段階です。

ISMSに必要な資金や物資、人材を用意し、これらを活用して担当者がアクセス制御・暗号化・バックアップの実施などを行います。システム的対策と人為的対策の両面からセキュリティを構築しましょう。

次に行うCheckやActの段階に備えて、ISMSの実行内容を文書に残すことも大切です。また、従業員への教育や運用体制の整備もこの段階で行います。

3.Check

Checkとは、ISMSの運用に伴って得られた効果を評価する段階です。

実施した管理策の有効性を監視や測定、分析します。内部監査を通じて、計画通りに実施されているか、リスクが軽減されているかを評価しましょう。併せて、トップマネジメントの定期的なマネジメントレビューも必要です。これらを通じて不適合が発見された場合は、速やかな是正措置を講じることが求められます。

Checkの段階においてもDoと同様に、評価の方法や結果を文書に残す必要があります。

4.Act

Actとは、評価結果をもとに継続的な改善を行う段階です。

Checkの段階において発見された不適合の管理や修正を行います。このとき、不適合により引き起こされた結果に対して適切に対処する必要があります。

また、新たな脅威や業務の変化に対応できるよう、管理策を見直しPDCAサイクルを繰り返すことも大切です。例えば、新しいクラウドサービスの導入に合わせて認証方式を更新することなどが挙げられます。

ISMS導入のポイント

ISMSの導入を成功させるためには、以下に挙げる4つのポイントを押さえることが重要です。

  1. トップマネジメントの関与
  2. リスクアセスメント
  3. 従業員への教育と意識向上
  4. 継続的改善

それぞれ詳しく解説するため、ISMS導入のポイントを把握し、スムーズな運用を目指しましょう。

トップマネジメントの関与

トップマネジメントがISMSの運用に関与し、企業の方針としてセキュリティ文化を定着させることが大切です。

製造業を行う企業では、毎月の朝礼で役員が「セキュリティ最優先」を掲げました。トップマネジメントが率先してISMSの方針を全社に浸透させたため、従業員のセキュリティ意識が大きく向上し、内部不正も激減しました。

このように、トップマネジメントの関与は導入のスムーズさや社内理解を深めるうえで不可欠です。組織の文化として根付く鍵となり、社員も自発的に協力するようになります。

リスクアセスメント

リスクアセスメントとは、企業の情報資産がさらされるリスクを特定し、分析や評価を行う工程を指します。

ソフトウェア開発企業では、顧客情報の取り扱いに関するリスクアセスメントを実施しました。脅威と脆弱性の洗い出しを行い、優先順位付けされた対策が講じられたのです。リスクアセスメントにより情報漏えいを防ぐ体制を確立しました。

このように、リスクアセスメントによってトラブル防止に向けた具体策を実行できるようになります。また、リスクは状況や時代に合わせて変化するため、定期的な見直しも重要です。

従業員への教育と意識向上

従業員への教育と意識向上もISMSの導入・運用において非常に重要です。

製造販売を行う企業では、従業員への教育と意識向上のため、定期的なセキュリティ研修とeラーニングを導入しました。最初は訓練メールに引っかかる従業員も多くいましたが、セキュリティ教育により標的型攻撃のメールを見分けられる従業員が増加したのです。

また、従業員のセキュリティ教育を通じて、ヒューマンエラーによる情報漏えいリスクの軽減にもつながります。

継続的改善

ISMSの導入後も運用にあたり、継続的な改善が求められます。

ある金融機関では、従来手動で行っていたファイアウォールの設定変更やセキュリティポリシーのレビューを自動化しました。これにより、コンプライアンス遵守を証明するための作業が大幅に効率化され、担当者はより高度な脅威への対応に時間を割けるようになりました。

このようにPDCAサイクルの中で業務を見直し効率化することで、運用の質を維持しつつ、変化する脅威に対応し続けることができます。

ISMS認証とは

ISMS認証とは、第三者機関によって組織のISMSが国際規格ISO 27001、もしくは日本国内で作成されたJIS Q 27001に適合していると認められる制度です。ISMS認証を取得する際には、どちらか一方の規格に基づいてISMSの導入や運用を行います。

ISMSの運用自体はこれらの認証を受ける必要はありませんが、ISMS認証の取得は客観的にISMSの有用性を示す手段となります。

ISMS認証を取得するメリット

ISMS認証を取得するメリットは、客観的な評価により対外的な信頼を獲得できることです。

実際に、IT企業ではISMS認証の取得により取引先との契約がスムーズになった例があります。業績回復のために信頼を獲得したいとISMSを取得した結果、直接取引が増加し売上高も純増したのです。

このように、ISMSの取得により社外からの信頼性が高まり、競争優位性を得られるほか、採用活動や資金調達の面でも好影響が見られます。

ISMS認証の取得方法

ISMS認証を取得するには、ISO 27001やJIS Q 27001の基準に沿って自社の情報セキュリティ体制を整備し、第三者認証機関による審査を受ける必要があります。

まずは、経営層が情報セキュリティを確保するために具体的な目標を設定します。その目標達成に向けて責任を持って取り組むことを明確にし、情報セキュリティ方針を策定しするのです。その後、情報資産の洗い出しを行い、リスクアセスメントによって脅威や脆弱性を特定・評価し、適切な管理策の選定や実施を行います。

次に、規程や手順を文書化し、従業員への教育や運用体制を整備します。一定期間の運用を経たのちには、内部監査の実施により見直しも必要です。

そして、認証機関に申請し、文書審査と現地審査を受けてください。文書審査では提出したISMS文書の適合性が評価され、現地調査では審査員によるISMS運用の状況確認が行われます。これらを経て、基準を満たしていればISMS認証が付与されます。

ISMS認証の取得後も継続的な改善が求められ、定期的な更新審査やサーベイランス審査によって、ISMSの有効性の維持が必要です。

ISMS認証の維持方法

ISMS認証を維持するためには、継続的な運用と改善が不可欠です。

継続的に観測や測定を行い改善する期間については内容によりさまざまです。取得時については、ISMS運用開始から内部監査、是正処置、マネジメントレビューまでの期間としては2~6ヵ月程度が一般的であるといえます。

取得後は、月次チェックや毎年の内部監査により観測や測定を行います。検出された不適合や改善事項の対応については内容により期間が変わるため一概にはいえませんが、指摘事項の対応についてはレビューする仕組みがあるため継続的に改善が図れる仕組みとなっているのです。

ISMS認証取得後の運用は、一過性のものではなく企業の情報セキュリティ対策の中心となるため、維持することが大切です。継続的な改善により、企業の情報セキュリティを高めましょう。

ISMSの導入を進めよう

ISMSは組織の情報資産を様々なリスクから保護し、事業を安定させるための重要な経営基盤です。PDCAサイクルを回しながら継続的にセキュリティレベルを高めることで、顧客や取引先からの信頼を獲得し、企業の競争力強化にも繋がります。

「何から手をつければ良いかわからない」「認証取得のプロセスを効率的に進めたい」とお考えなら、専門家のサポートを活用するのも有効な手段です。

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