マルウェア感染とは?最新の被害例と対応についてわかりやすく解説

マルウェアとは?種類・特徴や感染経路・感染した際の対策を解説
近年、企業や個人を狙ったマルウェアによる被害が相次いでいます。
業務システムの停止や顧客情報の流出、スマートフォンの不正操作など、被害の形はさまざまです。しかも、巧妙化・多様化する攻撃は年々増加しており、「自分には関係ない」とは言えない状況です。

この記事では、実際に報告されているマルウェアの被害事例を取り上げながら、感染の仕組みやリスク、そして今日から実践できるマルウェア対策の例をわかりやすく解説します。

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マルウェアとは?基本の仕組みと感染リスクを解説

インターネットを通じてパソコンやスマートフォンを利用する現代では、「マルウェア感染」という言葉を耳にする機会が増えています。
マルウェアとは、悪意をもって作られたソフトウェア(malicious software)の総称で、デバイスやネットワークに侵入し、情報の盗難や破壊、システム障害などの被害を引き起こす存在です。

感染経路はメールの添付ファイルや偽サイト、USBメモリなど多岐にわたり、一度侵入すると検知・駆除が難しいことも少なくありません。ここでは、マルウェアの基本的な定義と目的、ウイルスとの違い、そして実際に起こりうる被害について解説します。

 

マルウェアの定義と目的

「マルウェア(malware)」は「malicious(悪意のある)」と「software(ソフトウェア)」を組み合わせた言葉で、コンピュータやネットワークに損害を与えることを目的としたプログラムを指します。

その目的は多岐にわたります。例えば、

  • 個人情報やクレジットカード情報などを盗み出す
  • 企業や政府機関のシステムに侵入し、業務を妨害する
  • 感染した端末を踏み台にして別の攻撃を行う
  • 勝手に広告を表示させ、攻撃者に不正な収益をもたらす

など、攻撃者の意図に応じて動作が変わります。
最近では「金銭目的」の攻撃が主流となっており、ランサムウェア(データを暗号化し身代金を要求するマルウェア)や情報窃取型マルウェアが企業を中心に大きな脅威となっています。

 

ウイルスとの違いと代表的な特徴

マルウェアとウイルスは同じ意味で使われることがありますが、正確には異なる概念です。
マルウェアは「悪意を持って作られた有害なソフトウェア」を総称した言葉であり、その中のひとつが「コンピュータウイルス」です。つまり、ウイルスはマルウェアの一種にあたります。

ウイルスは、既存のファイルやプログラムに寄生して感染を広げる特徴を持っています。感染したファイルを開いたり実行したりすることで別のファイルにもコピーが作られ、パソコン内部で増殖していくという仕組みです。そのため、ウイルス感染ではファイルの破損やデータの消失など、目に見える被害が起こりやすい傾向があります。

一方で、マルウェア全体では、ウイルス以外にもさまざまな感染方法や動作パターンが存在します。メールに添付された不正ファイルや、偽のダウンロードページ、USBメモリなどを通じて侵入するケースもあり、ユーザーが何の操作もしなくても感染するものもあります。

また、マルウェアには共通していくつかの特徴があります。まず、感染してもすぐに異常が現れない「潜伏性」が高いこと。次に、感染経路が多様で、普段の業務やネット利用の中で知らないうちに侵入を許してしまう点です。そして、検出を避けるために正規ファイルを装ったり、暗号化された通信を利用したりするなど、非常に巧妙な手口を用いる点です。

このように、ウイルスは「自己増殖して感染を広げるタイプのマルウェア」であり、マルウェア全体はそれよりも広い範囲の脅威を含んでいます。違いを正しく理解することで、今後のセキュリティ対策をより効果的に行うことができるでしょう。

 

企業や個人に起こる主な被害

マルウェア感染による被害は、企業と個人のどちらにも深刻な影響を及ぼします。感染した瞬間に目立った異常がなくても、内部ではすでに情報の窃取や外部からの不正操作が始まっているケースも少なくありません。被害の内容や規模は状況によって異なりますが、ここでは代表的な例を紹介します。

まず、企業で発生する被害として最も多いのが「情報漏えい」と「業務停止」です。マルウェアが社内ネットワークに侵入すると、社員や顧客の個人情報、取引先データ、機密資料などが外部に送信される危険があります。また、ランサムウェアのようにシステムやサーバを暗号化して使用不能にするタイプのマルウェアでは、復旧作業に長時間を要し、事業そのものが一時的に停止してしまうこともあります。さらに、被害拡大の調査や再発防止の対応に多額のコストがかかり、企業の信用を大きく損なう可能性もあります。

一方、個人に対する被害も決して軽視できません。代表的なのは、ネットバンキングやショッピングサイトのログイン情報、クレジットカード情報などが盗まれるケースです。SNSのアカウントが乗っ取られ、不正な投稿や詐欺行為に利用される事例も増えています。また、スマートフォンが感染すると、カメラやマイクを通じて利用者の行動を監視されたり、端末を遠隔操作されたりする危険もあります。

近年では、テレワークの普及により、個人の端末が企業ネットワークに接続される機会が増えています。そのため、家庭用パソコンや私用スマホの感染がきっかけとなって、企業全体のシステムトラブルに発展するケースも少なくありません。マルウェアは単なる個人の問題ではなく、社会全体に影響を及ぼすリスクを持つ外的脅威と言えるでしょう。

マルウェアの種類と特徴を理解しよう

マルウェアにはさまざまな種類があり、それぞれ感染方法や目的、被害の形が異なります。ここでは代表的な5つのタイプを紹介します。特徴を理解しておくことで、感染リスクの早期発見や適切な対策につなげることができます。

 

ワーム|自己増殖して拡散するマルウェア

ワームは、マルウェアの中でも特に拡散力が高いタイプです。感染したコンピューターからネットワークを通じて、ユーザーの操作なしに自動的に他の端末へ広がるという特徴を持っています。これがウイルスとの大きな違いです。

ウイルスは他のファイルやプログラムに寄生して感染を広げますが、ワームは単独で動作し、自らのコピーを生成して拡散できます。そのため、一度感染すると短期間で多数のシステムに被害が及ぶおそれがあります。

過去には、企業ネットワーク全体がワーム感染によって停止し、業務が麻痺する事例も発生しています。感染を防ぐには、OSやソフトウェアを常に最新の状態に保ち、信頼できるセキュリティソフトを導入することが重要です。

 

トロイの木馬|無害を装って侵入する手口

トロイの木馬は、見た目は正常なプログラムやアプリに見せかけて侵入するマルウェアです。名前の由来は、ギリシャ神話の「トロイの木馬」にちなんでいます。敵に贈り物として見せかけた木馬の中に兵士を潜ませ、夜になると中の兵士たちが出てきて城を攻撃したという逸話から来ています。

このマルウェアも同様に、ユーザーをだましてパソコンやスマートフォンに侵入し、裏で不正な動作を行います。自己増殖の機能はありませんが、システム設定の改ざんや情報の抜き取りなどを行い、削除してもシステムに深刻なダメージを残すことがあります。

感染を防ぐには、フリーソフトやメール添付ファイルなど、出どころの不明なプログラムを不用意にダウンロードしないようにしましょう。

 

バックドア|不正アクセスの裏口を作る

バックドアは、攻撃者が外部から自由にコンピューターを操作できるようにする「裏口」を作り出すマルウェアです。通常、コンピューターにアクセスするにはIDとパスワードが必要です。その一方、バックドアはこの認証をスキップして直接アクセスできるようになります。

バックドアは、本来は開発者が製品の機能テストを行うために使うものです。製品が出荷される前には通常、この機能は取り外されます。

しかし、悪意のある攻撃者がこれを悪用すると、感染した端末を完全に遠隔操作できるようになります。具体的には、バックドアはコンピューターの「勝手口」や「裏口」にあたります。ほかのマルウェアが不正に侵入できる道を作り出すのがバックドアの役割です。

バックドアそのものが直接ファイルを破壊することは少ないものの、その裏口を通じて新たなマルウェアを送り込むなど、さらなる被害の起点となる点が非常に危険です。感染を防ぐには、OSの脆弱性を放置せず、常に最新のセキュリティパッチを適用することが欠かせません。

 

ランサムウェア|身代金を要求する脅迫型マルウェア

ランサムウェアは、感染したコンピューターやファイルを暗号化し、アクセスを制限することで身代金(ランサム)を要求するマルウェアです。
感染後、画面に「データを元に戻したければ金を払え」といったメッセージが表示されるのが典型的な手口です。

企業がランサムウェアの被害を受けると、業務データが使えなくなり、業務停止に追い込まれることもあります。個人の場合も、家族の写真や大切な書類などが暗号化され、取り戻せなくなるケースがあります。

身代金を支払ってもデータが復旧する保証はなく、支払うことで新たな犯罪を助長するリスクもあります。ランサムウェアは特殊な暗号化プログラムを持っているため、感染すると自力で元に戻すことは困難です。専門業者の助けが必要になる場合が多く、それでも完全に復元できるかはわかりません。

被害を防ぐためには、信頼できるセキュリティソフトを使用し、定期的にバックアップを取ることと、不審なメールや添付ファイルを開かないことが最も効果的です。

 

スパイウェア|情報を盗み出すマルウェア

スパイウェアは、ユーザーの知らないうちにパソコンやスマートフォンに入り込み、入力情報や閲覧履歴などを外部に送信するマルウェアです。スパイウェアがアクセスしようとする情報には、ID・パスワード、クレジットカード番号、住所など、悪用されると非常に危険な個人データが含まれています。

感染すると、攻撃者は被害者の行動を遠隔で監視できるようになり、インターネットの利用履歴やキーボード入力の内容までも取得されることがあります。こうした情報は闇市場で売買され、詐欺やなりすましなどに利用されるケースも多く報告されています。

スパイウェアの中には、保護者の見守りや企業のセキュリティ監視など合法的に使われるものも存在しますが、本人の同意なく情報を収集する行為は、プライバシー侵害にあたります。

マルウェアの感染経路と主な手口

マルウェアは感染経路ごとに使われる手口が異なり、それぞれに応じた対処が必要です。ここでは、特に多く見られる感染経路と、その代表的な手口について詳しく解説します。

 

メール・添付ファイルを悪用した感染

メールは依然として最も多い侵入経路の一つです。攻撃者は信頼できる送信者を装ったり、業務で使われる書式や件名(請求書、納品書、会議招集など)を真似たりして、受信者に添付ファイルを開かせたり、本文内のリンクをクリックさせたりします。添付ファイルが実行ファイルやマクロ付きの文書ファイルである場合、開いた瞬間にマルウェアが動作を開始することがあります。さらに最近は、メール本文にあるリンク先で偽のログイン画面へ誘導し、認証情報を盗む「フィッシング」も多発しています。

対策としては、出所不明のメールや添付を不用意に開かないこと、メール内リンクはブラウザでURLを慎重に確認すること、メール gateway やアンチウイルスでのスキャンやマクロの無効化を徹底することが有効です。業務では二要素認証(2FA)を導入すると、たとえ認証情報が盗まれても被害を限定できます。

 

Webサイト・広告経由でのドライブバイダウンロード

改ざんされたWebサイトや攻撃者が仕込んだ悪質な広告(マルバタイジング)経由で、ユーザーが何も操作しなくても脆弱なブラウザやプラグインを突かれてマルウェアをダウンロード・実行されることがあります。これを「ドライブバイダウンロード」と呼びます。見た目は普通のニュースサイトや動画サイトでも、埋め込まれたスクリプトが脆弱性を利用して裏で不正コードを流し込むことがあるため、被害が発見されにくく広がりやすいのが特徴です。

現実的な防御策は、ブラウザやプラグイン(Flash、Java、PDFリーダーなど)を最新に保つこと、不要なプラグインを無効化または削除すること、広告ブロッカーやスクリプト制御(コンテンツセキュリティポリシー等)の導入、アクセス制御やサンドボックスでブラウザを隔離することです。また、Webフィルタリングで既知の悪質サイトをブロックすることも有効です。

 

USBメモリや外部デバイスからの感染

USBメモリや外付けHDDなどのリムーバブルメディアは、物理的に媒介してマルウェアを広げる典型的な経路です。感染ファイルを保存したUSBを共有したり、紛失したデバイスを拾った第三者が開いたりすることで、容易に別の端末に侵入します。また、デバイス自身に自動実行スクリプト(autorun)などが仕込まれていると、接続しただけで感染が始まることもあります。

対策は、社内で私的なUSBの使用を制限するポリシーを設けること、autorun機能を無効化すること、外部デバイスを使う場合は事前にウイルススキャンを実施すること、重要な環境ではUSBアクセスをハード的・ソフト的に制御することです。重要データは専用の管理されたメディアやクラウドで共有する運用に切り替えるとリスクを下げられます。

 

ソフトウェアの脆弱性を狙った攻撃

OSやミドルウェア、業務アプリ、サードパーティ製ライブラリなどに存在する未修正の脆弱性を突く攻撃は、近年ますます標的になっています。攻撃者は既知の脆弱性情報(CVE等)を利用して自動スキャンを行い、パッチが当たっていないシステムを見つけるとリモートからコードを実行してマルウェアを侵入させます。脆弱性を突く手口はメールやWebに依存しないため、ユーザーの操作に依らずに大規模な感染を引き起こす危険があります。

継続的な対策としては、OS・ソフトウェアのセキュリティパッチを迅速に適用する運用、IT資産の棚卸と脆弱性管理(脆弱性スキャンの定期実施)、不要なサービスの停止や最小権限の原則に基づくアクセス制御、侵入検知やログの監視による早期検知などが効果的です。さらに重要システムはネットワーク分離や仮想化・コンテナ化で影響範囲を限定することも検討してください。

【最新事例】2024〜2025年に発生したマルウェア/ランサムウェア被害

この数年、マルウェアやランサムウェアによる被害は国内外で急増しています。2024年から2025年にかけては、大手企業や大規模サービスを狙った攻撃が相次ぎ、情報漏えいだけでなく、業務停止や出荷遅延、サービス停止といった重大な影響が報告されました。
ここでは、特に注目された被害事例を取り上げ、それぞれの攻撃がどのように起きたか、どのような影響があったか、そしてそこから学べる教訓を整理します。
これを読むことで、自社や個人のセキュリティ対策を見直すきっかけになるはずです。

  

アサヒグループホールディングスが Qilin を名乗るグループの攻撃を受ける

2025年9月末、アサヒグループホールディングスは社内システムへの不正アクセスを確認し、ランサムウェアによる攻撃を受けたことを公表しました。攻撃者は「Qilin(キリン)」を名乗っており、複数の内部文書がダークウェブ上で公開されたと主張しています。企業側は影響範囲を特定するため緊急調査を実施し、システムの一部が利用困難な状態に陥りました。
この攻撃により、国内グループ企業の生産ラインや受注・出荷業務、コールセンター業務などにも影響が及びました。復旧作業は段階的に進められ、外部専門機関と連携しながら調査と再発防止策の検討が進められています。サプライチェーンにも影響が波及したことから、事業継続計画(BCP)の重要性が改めて認識された事例となりました。
今回の攻撃から分かることは、企業規模に関係なくランサムウェア被害は突発的に発生しうる点です。多要素認証の導入、脆弱性管理、定期的なバックアップが不可欠であり、被害発生時の初動対応手順を事前に整備しておくことで影響を最小化できます。
参考:アサヒグループホールディングス – サイバー攻撃に関する発表(公式リリース)

 

KADOKAWA/ニコニコ動画が BlackSuit ランサムウェアによる大規模攻撃を受ける

2024年6月、ニコニコ動画を運営するドワンゴおよびKADOKAWAグループは、複数サービスで大規模障害が発生したと公表しました。原因は「BlackSuit」と名乗るランサムウェアグループによる攻撃で、同社が提供する動画サービス・プレミアム会員向けサービスなどが一時的に停止しました。サービス停止は長期にわたり、ユーザーの閲覧・投稿・決済など多方面に影響が及びました。
流出したとされるデータには、利用者情報や取引先関連情報が含まれる可能性が指摘されました。復旧には相当な期間とコストがかかり、出版・物流・ECなどグループ全体に影響がみられました。企業は攻撃を受けた原因の調査と、被害拡大防止措置としてサーバー分離・アクセス制限などを実施しています。
この事例は、一般ユーザー向けサービスを提供する企業でも高度なサイバー攻撃の対象となることを示しています。バックアップ体制の強化、内部ネットワークのセグメント化、早期検知システムの活用など、複数の対策を組み合わせることが求められます。
参考:ITmedia NEWS – KADOKAWA/ニコニコ動画 サイバー攻撃の続報

 

レゾナック株式会社がランサムウェア攻撃で一部システム障害

2025年5月、レゾナック株式会社は外部攻撃によるランサムウェア感染を受け、一部の業務システムで障害が発生したと公表しました。企業は直ちに対象サーバーを遮断し、外部専門機関と協力しながら原因調査と復旧作業を進めました。現時点で個人情報の流出は確認されていないとされていますが、影響範囲の調査が継続されています。
この攻撃を受け、生産管理や社内ネットワークの一部機能に遅延が生じ、システム停止に伴う業務影響が社内外で発生しました。企業は緊急対策チームを設置し、システム復旧に向けて段階的な対応を実施。インシデント発生時の報告体制や事業継続計画の見直しも進められています。
本事例は、ランサムウェアによる直接的な業務停止のリスクを示す典型例です。脆弱性の早期対処、ゼロトラストを意識したアクセス設計、ログ監視の強化など、平時からの継続的なセキュリティ運用が被害抑制につながります。
参考:レゾナック株式会社 – ランサムウェア被害に関するお知らせ(公式リリース)
レゾナック株式会社 – 続報/個人情報への影響について(公式リリース)

マルウェアに感染したときの対応手順

マルウェアが端末やネットワークに侵入してしまったと判明した場合、そのまま放置すると被害が拡大し、復旧にかかるコストや時間が飛躍的に増す危険があります。感染直後は混乱しやすいため、何をどの順番で行うかを明確にしておくことが重要です。ここでは、被害の拡大を防ぐためにぜひ押さえておくべき3つの初期対応ステップをご紹介します。

 

ネットワークを遮断し被害拡大を防ぐ

マルウェアに感染している可能性がある端末やサーバーを発見したら、まず行うべきはネットワークからの隔離です。
有線LANで接続されている場合、LANケーブルをパソコンから外しましょう。

感染端末が社内ネットワークや外部インターネットにアクセスを続けていると、マルウェアが他の端末へ横展開したり、外部コマンドを受け取ってさらなる悪事を働いたりするリスクが高まります。

例えば、社内ファイル共有サーバーにアクセスできる状態であれば、ワーム型マルウェアなら一気に広がってしまう可能性があります。 このため、疑わしい端末をネットワークから切り離し、影響範囲を限定することで被害の拡大を防ぐことが初動として非常に重要です。

 

情報セキュリティ担当へ迅速に報告する

隔離と同時に、社内の情報セキュリティ担当部門やインシデント対応チームへ速やかに連絡・報告することが次の重要なステップです。

攻撃の発生を把握するために必要な情報(いつ、どこで、どの端末が、どんな挙動を示したか)を整理し、関係者と共有することで、一次対応、被害範囲の特定、関係部署への通達がスムーズに進みます。報告が遅れると、攻撃の手が及んでいる範囲を見誤ったり、対応を後手に回したりする危険があります。また、法的義務が生じる可能性もあるため、法務・広報・上層部と連携できる体制が整っていることが望ましいです。

 

専門業者やセキュリティツールで駆除・復旧する

ネットワークの遮断と報告を終えたら、マルウェアの駆除とシステムの復旧へと移行します。ここでは、単なるアンチウイルス実行だけでなく、感染経路の特定、マルウェアの種類・挙動の把握、ログ調査、被害が及んだデータの確認、そして安全性を確保したうえでのシステム再起動・復元が必要です。

例えば、影響を受けたシステムを「安全な環境に収納」してフォレンジック分析を行ったうえで、感染の原因を突き止める手順が推奨されています。
また、専門のセキュリティベンダーやフォレンジック業者に調査を依頼することで、攻撃の“痕跡”や“侵入の手口”を明らかにでき、再発防止に重要な情報が得られます。

マルウェア感染を防ぐための予防対策

マルウェア感染を未然に防ぐには、日常的な注意とシステム管理の両面からの対策が重要です。ここでは、個人や企業で実践できる基本的な予防策を解説します。

 

OS・ソフトウェアを最新状態に保つ

マルウェアは、古いOSやアプリケーションの脆弱性を狙って侵入することが多いため、常に最新のアップデートを適用することが基本です。

OSやアプリケーションのアップデートには、バグ修正やセキュリティホールの修正が含まれることが多いです。これにより、ソフトウェアの動作が安定し、セキュリティが強化されます。公式サイトで定期的にアップデート情報を確認して、常に最新バージョンを維持することで、知らぬ間に脆弱性を突かれるリスクを大幅に減らせます。

一部のOSやソフトウェアは自動更新を設定できる機能があり、また、ユーザー登録をすると更新情報がメールで届く場合もあります。セキュリティパッチや更新プログラムを自動で適用できる設定にしておくと、手動での管理漏れを防げます。

 

不審なメール・リンクを開かない

マルウェア感染は、不審なメールや添付ファイル、リンクから発生することが多いです。メールは簡単に大量に送信できるため、攻撃者が頻繁に拡散手段として利用します。

身に覚えのない送信者からのメールや、取引先や顧客を装った怪しいメールは、フィルタリング機能を使って迷惑メールフォルダに振り分けて開かないことが重要です。添付ファイルは開く前に必ずスキャンし、未知のURLはクリックせず、怪しい内容はIT部門やセキュリティ担当に確認する習慣を持ちましょう。不審なウェブサイトで個人情報を要求するもの、金銭に関わる内容のメールは特に注意が必要といえます。

また、外部から持ち込まれたUSBなどのリムーバブルメディアも使用前にスキャンし、安全性を確認してから使用することが大切です。

 

定期的にバックアップを取る

マルウェアに感染してしまうと、完全に駆除できずにデバイスを初期化する必要がある場合があります。初期化すればマルウェアは消えますが、ハードディスク上のデータもすべて削除されます。そのため、定期的にバックアップを取っておくことをおすすめします。

バックアップは外付けハードディスクやクラウドなど、マルウェア感染の影響を受けない安全な場所に保管します。特にランサムウェアに感染した場合でも、バックアップがあればデータを復旧できる可能性があります。

どうしても失いたくないデータがある場合や、自分で対処するのが難しい場合は、マルウェア対策を専門とする企業に相談するのが安心です。

 

従業員教育と社内ルールの徹底

マルウェア対策は技術だけでなく、人の行動にも依存します。従業員教育や社内ルールの徹底によって、感染リスクを大幅に減らすことが可能です。定期的な啓発や訓練も有効です。

まず、従業員一人ひとりがマルウェアのリスクを理解し、不審なメール・添付ファイルやリンクを安易に開かない習慣を持つことが重要です。また、USBや外部デバイスの使用ルールを明確にし、利用制限を設けることも感染リスクの低減につながります。

社内ルールについては、パスワード管理、ソフトウェア更新の徹底、データ取り扱いの指針、報告手順の明文化など、具体的な運用手順まで落とし込むことがポイントです。これにより、万が一マルウェア感染が発生しても、被害を最小限に抑え、迅速に対応する体制を整えることができます。

企業が実践できるマルウェア対策の取り組み


企業規模の組織では、個人の予防策に加えて、組織全体で取り組むセキュリティ対策が必要です。ここでは、企業が実践すべき具体的な対策を紹介します。

 

セキュリティポリシーとインシデント対応体制の構築

マルウェア感染に備えて、明確なセキュリティポリシーとインシデント対応体制を構築する必要があります。ポリシーには、以下のような内容を含めると効果的です。

  • 社内で許可されたデバイス・ソフトウェアの利用ルール
  • メールや添付ファイル、外部リンクの取り扱い方
  • USBや外部メディアの持ち込みに関する規則
  • パスワード管理の基準

さらに、感染発覚時の報告経路や初動対応の手順を明文化しておくことで、迅速かつ統制の取れた対応が可能になります。

 

マルウェア対策ソフト・EDRの導入検討

企業では、アンチウイルスソフトに加えて、EDR(Endpoint Detection and Response)など高度な検知・対応ツールを導入することが推奨されます。これにより、未知のマルウェアや攻撃の兆候を早期に検知し、被害拡大を防ぐことができます。
EDRは、感染前の防御だけでなく、感染後の検知・駆除にも役立ちます。具体的には次の機能がポイントです。

  • リアルタイムでのマルウェア検知
  • 不審な挙動や異常通信の自動通知
  • 感染した端末の隔離・駆除支援
  • ログ収集によるインシデント対応の記録

導入にあたっては、社内の端末数や運用体制に合わせて最適な製品を選定することが大切です。

 

定期的な脆弱性診断と訓練

社内システムやネットワークの脆弱性を定期的に診断し、従業員向けの模擬攻撃や訓練(フィッシングメール訓練など)を実施することも有効です。
脆弱性診断では以下の項目をチェックします。

  • OSやソフトウェアのアップデート漏れ
  • ファイアウォールやアクセス制御の不備
  • 外部からの侵入経路や公開サーバのセキュリティ状態

脆弱性診断で未対応の問題を把握し、訓練で従業員の対応力を高めることで、感染リスクを最小化できます。訓練後には、実際の対応や判断に関するフィードバックを行い、従業員一人ひとりのリテラシー向上を図りましょう。
これらの取り組みを継続的に行うことが、企業全体のセキュリティ水準を向上させます。

セキュリティ強化に役立つサービス紹介

近年、国内でも企業を狙ったマルウェアやランサムウェアの被害が急増しています。
業務停止や情報漏えいなど、被害の規模は中小企業から大手企業まで広がっており、迅速かつ的確な対応が求められます。
こうした状況下で、企業の情報セキュリティを強化し、マルウェア被害を最小限に抑えるための専門サービスが注目されています。

次に紹介する「Coach MAMORU」は、情報セキュリティ分野に精通したコンサルティングサービスで、最新事例を踏まえた具体的な対策支援が可能です。

 

情報セキュリティコンサルティング「Coach MAMORU」

企業の情報資産を守るためには、単にセキュリティツールを導入するだけでなく、組織に合わせた運用体制と教育・規程整備を含む包括的な支援が求められます。そんなニーズに応えるサービスが、「Coach MAMORU(コーチマモル)」です。

日本パープルが提供する「Coach MAMORU」は、マルウェア感染リスクやその他のサイバー脅威に対するコンサルティングを行うサービスで、既に300社以上の企業で導入実績があります。特に見落とされがちなリスクを洗い出し、企業ごとの業種や規模、既存の取り組みに応じて最適な対策の提案や対応支援を提供しています。

また、単発の講義形式ではなく、eラーニングやワークショップ形式を含む定期的かつ実践的な研修を提供しており、導入企業から「現場の実状に即した研修内容」が高く評価されています。

さらに、規程作成にとどまらず、運用後のチェックやフォローアップ、改善提案まで含めた支援を行うことで、長期的なセキュリティ文化の醸成を目指しています。

対応可能な業種・規模の範囲も広く、医療・金融・製造・物流・サービス業など、多岐に渡ります。対応地域も国内はもちろん、海外拠点を持つ企業にもサポート実績があり、グローバルな情報セキュリティ体制構築にも対応可能です。

これにより、マルウェアや情報漏えいといったサイバー脅威に対し、「どこから手を付けていいかわからない」という企業に対しても、明確なロードマップ設計から運用定着まで支援することが可能です。
セキュリティに関する不安や疑問を抱かれている場合は、専門家のサポートを受けることをおすすめします。

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まとめ|マルウェアの脅威を正しく理解し、企業を守るために

マルウェアやランサムウェアは、企業の業務停止や情報漏えいなど大きな被害をもたらす脅威であり、日々巧妙化しています。感染経路や手口を正しく理解し、日常的な注意や社内ルールの徹底が被害防止の第一歩となります。

万が一感染してしまった場合は、ネットワーク遮断や情報セキュリティ担当への迅速な報告、専門業者やセキュリティツールを用いた駆除・復旧が重要です。また、OSやソフトウェアの最新化、定期的なバックアップ、不審なメールやリンクへの注意、従業員教育の徹底などの予防策を組み合わせることで、リスクを大幅に低減できます。

さらに、企業のセキュリティ体制を強化するには、マルウェア対策ソフトやEDRの導入、脆弱性診断、インシデント対応体制の整備といった組織的な取り組みが欠かせません。必要に応じて、情報セキュリティ分野に精通したコンサルティングサービスを活用することで、運用の定着や教育、規程整備まで包括的な支援を受けることが可能です。

今日からでも対策を一つずつ取り入れ、あなた自身や組織の安全をしっかり守っていきましょう。

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