2020年3月25日働き方改革

GOOD ACTIONアワード2019:主人公は働くあなた


2020年2月4日、リクナビNEXT主催の「第6回GOOD ACTIONアワード(2019年度)」が開催されました。GOOD ACTIONアワードは、働く個人と企業のフラットな関係性による”SHOKUBA”の共創に光をあて、表彰するプロジェクトです。

6年目を迎えた今回は、多数の応募の中から計7社の取り組みが受賞されました。「ライフワークバランスの実現」や「働き手の多様化」など働く環境が日々変化している中、受賞された企業の取り組みは、まさにこれからの働き方や企業の姿といえます。

今回は受賞された7社の中から、さらに4社に絞った取り組みを紹介。記事後半では2社の取り組みをピックアップしインタビュー。より良い職場環境や制度の参考にしみてください。

【大賞/ワークスタイルイノベーション賞】エーデル土山の超働き方改革

見事、第6回GOOD ACTIONアワード大賞ならびにワークスタイルイノベーション賞を獲得したのが、特別養護老人ホームを運営する社会福祉法人あいの土山福祉会エーデル土山(滋賀・甲賀市/介護/82名)です。

取り組み内容

介護施設の主な離職理由「残業」「腰痛」「メンタル不調」の3つを改善するべく、「トリプルゼロ」を実施。長時間労働の原因となる課題の洗い出しから、間接業務のワークシェア、専用器具を導入したノーリフティング(抱えないケア)を行いました。また、毎月の役職者による個人面談で、仕事やプライベートの悩みまでを把握相談しています。

【効果】

・過去には40%にも登った離職率が、現在では7~8%にまで減少
・年平均残業時間は0.02時間と、介護業界では驚異の数字を実現

受賞ポイント

1. 「スタッフファースト」を訴え続けて風土を変えた施設長の思い
2. 一律ではなく個別にスタッフと向き合い悩みを解決したこと
3. 介護施設としては異例の「残業ほぼゼロ」を実現したこと

【特別賞】日本活性化プロジェクト

特別賞を獲得したのは、家庭用・業務用計量器などの製造・販売を手がける株式会社タニタ(東京・板橋区/健康機器メーカー/1,200名)です。

取り組み内容

社員を対象に、雇用から業務委託契約をベースとした「個人事業主(フリーランス)」に切り替える取り組みを実施しました。独立時の不安を軽減するために、契約期間を3年間とした仕事の安定性を確保。日本の“雇用ありき”の常識を変えたいという想いのもと、会社と個人が対等な信頼関係を持って働く環境を目指しています。

【効果】

・独立した8人の社員は、初年度に手取り収入が平均28.6%増加
・2019年には3期目となり、これまでに計18名が仕組みを利用するなど取り組みが浸透

受賞ポイント

1. 従来の日本の雇用システムに一石を投じる画期的な取り組みであること
2. 安心して独立できる環境が新たなチャレンジを生みだしていること
3. 「社員か個人事業主か」という生き方を自分で選べること

【審査員賞】社内ラジオ「パネラジ」

審査員賞を獲得したのは、次世代型エネルギー流通基幹システムを運営開発、小売電気事業をする株式会社パネイル(東京・千代田区/エネルギーシステム/78名)です。

取り組み内容

急激な事業拡大に伴い、社内コミュニケーションを活性化させるための施策として社内ラジオ「パネラジ」を開始。社長自らがメインパーソナリティを務め、会社のビジョンを語る場とは切り分け、ラジオではフランクにプライベートのことも語ります。社員からの鋭い質問にも答え、社員をゲストに招くなど、双方向のコミュニケーションツールとして活用。

【効果】

・東京本社だけでなく、名古屋・大阪・福岡の各拠点メンバーからも積極的な投稿
・3ヶ月に一度の全社総会では、ラジオをきっかけに初対面のメンバーが打ち解けられるようになった

受賞ポイント

1. 社内ラジオという手法で社内コミュニケーションを変えたこと
2. 音声コンテンツのトレンドをうまく社内に取り入れていること
3. 「自分も出演したい」という社員の思いにも応えられること

【ワークスタイルバリエーション賞】発達障がい社員のインクルーシブ経営

ワークスタイルバリエーション賞を獲得したのは、ゲーム事業、ライブエンターテイメント事業等を行うグリー株式会社/グリービジネスオペレーションズ株式会社(神奈川・横浜市/ITサービス/1,729名*グループ全体。2019年9月末現在)です。

取り組み内容

2012年に障がい者雇用を推進するために特例子会社を設立。特に発達障がい者を積極的に採用し、障がい者の方が持つ能力を最大限に発揮できるための環境作りを推進しています。特例子会社代表との1on1面談やカウンセリングも実施。個人の意見を反映した休憩室の設置や聴覚過敏用のイヤーマフ、光過敏用のサングラスなど、働く環境を支援しています。

【効果】

・現在はグリービジネスオペレーションズ株式会社で働く56人の社員のうち、37人が発達障がい者
・障がい者の方が、グリーの事業戦力として貢献し、継続的な価値の共創を実現

受賞ポイント

1. 発達障がい者の力を最大限発揮できる環境を作っている
2. 社長との1on1をはじめ、個性と向き合う機会を多数設けている
3. 事業に貢献し、特例子会社の枠を超えたつながりが生まれている

取り組み背景や企業メリットをインタビュー!

今回まもりの種では、受賞された7社の中から、「パネラジ」を実施している株式会社パネイル様と、障がい者雇用を推進しているグリー株式会社/グリービジネスオペレーションズ株式会社様に取り組み背景と企業へのメリット・効果についてお話を伺いました。実施時の課題や現場で働く社員の反応はどうだったのか、リアルな声に迫ります。

「パネラジ」株式会社パネイル

・株式会社パネイル
・社内コミュニケーション活性化のために、社内ラジオ「パネラジ」の実施
・コーポレート本部 管理部 広報IRG マネージャー/村岡侑紀氏

――パネラジを開始した取り組み背景について教えてください。
村岡侑紀氏(以下・村岡氏):社員数が拡大するにつれ、お互いの顔や名前が一致しなかったり、社長との距離が遠くなってしまうという課題を抱えていました。社内コミュニケーションを活性化する施策を検討する中で、以前より実施していた社内報で「社長への質問コーナー」を設けたんです。質問を匿名で募集してみたところ「休みの日何しているか」とか「飲み会時のジョーク」など、意外とカジュアルな質問が多く集まりました。そこで広報の方で社長に社内報の盛り上がりを含め相談したところ「これラジオっぽくない?」という発言が出てきたんです。
同時に発覚したのが、社長が大のラジオっ子だったこと(笑)。
中学校の時にはいわゆる「ハガキ職人」で毎日のようにラジオへ質問を書いて送っていたようです。そういった経緯もあり、社内報の延長からラジオの実施が決まりました。

――社内コミュニケーションは社員同士、上司と部下など複数考えられますが、なぜ社長との対話を選択したのですか。
村岡氏:起業当初は社長との距離が近い会社だったんです。ただ今ではその距離が離れてしまっていて、まずは社長との距離を縮めることで、会社全体の雰囲気も活性化するのではと思いました。現在はラジオにゲストとして毎回社員を呼んでいるので、社員同士のコミュニケーションの場にもなっています。

――パネラジに対する、社員の反応はいかがでしたか。
村岡氏:反響は大きかったですね。ただ、全てがポジティブな意見ではなく、ネガティブな意見もありました。そもそも聴く時間がなかったり、面倒臭かったり。そんな声もありつつ、逆に聴くタイミングのない開発部の人をゲストに招待すると、そのチームや周りの方々は聴いてくれるので、ネガティブな声が多い人ほどゲストに招いて実施したんです。
いい意見は、ラジオって対話を耳で聴くので、仕事しながらのながら聴きでも、まるで自分がその対話に参加しているような感覚になるらしいんです。まだ社長との距離が遠い方でも、ゲストで呼ばれた際に話しやすい、すでに話したかのような感覚になるようです。

――会社としてどのような効果を感じていますか。
村岡氏:社長の実感値としては、以前より社員から気軽に話しかけてもらえるようになったそうです。あとは社員同士でも話しやすくなったというのもあります。最近は新入社員もゲストに呼ぶため、自己紹介がてらラジオで話してもらうと、東京にいながら支社の方に認知していただいて、総会で実際に会った時も、初対面ですが話が盛り上がったりするんですよね。チャット上でしか関わりがなく、硬いイメージを抱いていた社員にも、イメージの改善というか、打ち解ける要因となっています。

――パネラジの主人公は社員ですか。
村岡氏:もちろん社員が主人公の取り組みです。社長が先導して実施しているものでもあるので、ネガティブな意見もある中、積極的に社員を引っ張りながら全員で作り上げています。

「障がい者の雇用促進」グリー株式会社/グリービジネスオペレーションズ株式会社

・グリー株式会社/グリービジネスオペレーションズ株式会社
・障がい者の方が働きやすい環境づくりと、企業との継続的な共創関係の構築
・グリービジネスオペレーションズ(株)代表取締役社長/福田智史氏

――障がい者の雇用促進を実施した取り組み背景について教えてください。
福田智史氏(以下・福田氏):近年、少子高齢化などを背景とした人手不足はどこの会社も経営課題だと思います。なので一番は、シンプルに人材としての活用です。もちろん、会社として障がい者雇用率を満たさなければならないという背景も当初はありました。しかし今、グリーグループとしてはそういった雇用率を満たすためではなく、完全に事業の戦力となる人材として採用することを重要視しています。

――障がい者の雇用推進にはどのような課題がありましたか。
福田氏:それぞれの障がい特性を把握することです。我々が普通に働いている環境でも、障がい者にとっては不便な点が多くある。そこに配慮した働く環境作りが一番の課題で大変でした。物理的な環境もそうですし、面談などの精神的なケアも制度としてどう設計していくのかが、ここ4~5年で一番力を入れました。

――取り組みのポイントを教えてください
福田氏:会社としてはお金もかかるので、できるだけ効率的に「配慮の枠を決めてしまって」進めるのがいいとは思いますが、それではうまくいかない。一人ひとりが能力を発揮できるようにしっかり面談をして、どういった要望があるのかをヒアリングし、それは最初だけでなく定期的に実施する。個に向き合うというのが一番時間を使いました。

――具体的な取り組み内容を教えてください。
福田氏:たくさんあります。現在の職場はほとんどそうです。
時間単位の有給が取れたり、デスクトップパーテーション(机の仕切り)を設けるとか。あとは実際に社員の声からアナログ時計だけでなくデジタル時計も設けるであったり、細かい要望もすくい上げ実施しています。基本的には社員の声を聞きながら、継続的に環境を改善しています。

――取り組み当初、周囲からの理解度はいかがでしたか。
福田氏:最初は現場でやっている仕事の一部を障がいのある方にアウトソーシングする形でしたが、周囲からは本当に仕事ができるのかという不安の声はありました。私自身もこの会社の代表をやる前はそう思っていたんです。しかし実際は、障がい特性に配慮した環境を構築できれば、周囲と変わりなく仕事ができるので、途中からは障がい者に対する先入観もなくなっていきました。やはり仕事なので、一緒に協力して成果を出してもらえれば、お互いに尊敬し合う関係性が構築されていく。今となっては現場にいる社員間に壁はありません。

――会社として、障がい者の雇用促進にどのようなメリットを感じていますか
福田氏:明確に、人手不足の解消です。あとはCSR(企業の社会的責任)という観点はもちろん持ってますし、採用上もダイバーシティとブランドになる場合もあります。今まではグリーグループが外注していた仕事も、グループ内でできるようになったので、利益にも貢献できています。利益があるからこそ、グリーの障がい者雇用が継続できている面もあると思っています。

――個の多様性を受け入れる、ダイバーシティ経営促進についてアドバイスをお願いします。
福田氏:まずは、外国人の方や障がい者の方を「雇用すること」が目的となってはいけません。そこが目的になってしまうと長続きせず、双方にとっていい結果にならないと思っています。なので、企業が課題とする人材不足の対象業務を明確にし、そこに外国人や障がい者の方など、今までなかなか働く機会の少なかった人たちに雇用機会を作るというアプローチが重要なんじゃないかなと思いますね。
ダイバーシティは無理に作るものではなく、大事なのは持続可能なこと。障がい者が利益に貢献できる部分に採用をし、いわゆる営利企業としてのメリットをきちんと結びつけてあげることが、大事だなと思ってます。働いている側がやりがいを感じられないと、能力を感じられない。Win-Winの関係が大切です。

GOODな取り組は働く個人、企業によって様々

今回紹介した4つの取り組みは、必ずしも全ての企業で活用できるものではありません。社員が100人いれば、100通りの働き方が存在します。大切なのは企業が“個人”に寄り添い理解すること。まずは社員の声を反映した取り組みを検討し、チャレンジすることが、結果的にイキイキと働ける職場の共創「GOOD ACTION」につながります。

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