相手を尊重し、自分も主張する「アサーティブネス」なコミュニケーションとは?

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新型コロナウイルスの流行をきっかけにテレワークが急速に普及しましたが、テレワークであるがゆえの悩みも聞かれるようになりました。特に大きいのがコミュニケーションの問題で、今まで以上に上司や部下とのコミュニケーションに課題を感じている方は少なくないようです。今回は、相手を尊重しながら自分の意見もしっかり伝える「アサーティブネス」なコミュニケーションについて解説していきましょう。

アサーティブネスとは?

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ミスをした部下に言い過ぎてしまったり、会議で上司に思うように意見を伝えられなかったり、下請先についつい攻撃的な言い方をしてしまったり・・・。そんな経験のあるビジネスパーソンは少なくないでしょう。このようなみなさんが、コミュニケーションを改善するヒントになるのが「アサーティブネス」です。

アサーティブネス(Assertiveness)とは、端的に言えば「相手にも配慮した自己主張」のこと。相手の意見を尊重しながら、対等に自分の言いたいことを表現することは「アサーティブネスなコミュニケーション」であると言われます。

相手に感情をぶつけるのが「攻撃的なコミュニケーション」で、自分のなかで感情をぐっと押し殺すのが「受身的なコミュニケーション」だとすると、この2つの中間に存在するのが「アサーティブネスなコミュニケーション」だと言えるでしょう。

アサーティブネスでないコミュニケーション

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「アサーティブネス」のニュアンスを理解するために、その逆である「アサーティブネスでないコミュニケーション」についてご説明します。アサーティブネスでないコミュニケーションは、「攻撃的タイプ」「受身的タイプ」「作為的タイプ」の3つに分類されます。

攻撃的タイプ

自分の意見を主張することがもっとも重要であり、相手を尊重できないタイプです。自分の言いたいことをはっきり伝えますが、相手の意見に耳を貸すことはありません。常に自分が正しく相手が間違っているという考えがあるため、相手を見下したり軽視したりして、威圧的な態度をとることがあります。

たとえば、自分に対する上司の評価が低かった場合、攻撃的タイプは感情的になって上司と言い争いをして、評価が正しくないことを主張します。

受身的タイプ

相手の意見に合わせ、自分の意見を主張できないタイプです。根底には「争いを避けたい」「関係悪化を避けたい」「嫌われたくない」といった気持ちがあり、自分さえ我慢していれば丸く収まると考えて自分の感情を押し殺し、相手に譲ることを選択します。

たとえば、自分に対する上司の評価が低かった場合、受身的タイプは自分の言いたいことを抑え、「上司の言うとおりかもしれない」「仕方がない」と評価を受け入れます。

作為的タイプ

言いたいことがあっても直接的に口には出さず、態度や雰囲気で感情を示すタイプです。相手と言い争うことはありませんが、その代わりに皮肉や嫌みを言ったり、ため息をついたり不機嫌になったりして相手をコントロールしようとします。

たとえば、自分に対する上司の評価が低かった場合、作為的タイプは上司と口を聞かなくなったり、わざと仕事の手を抜いたりします。

アサーティブネスなコミュニケーション

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アテーティブネスなコミュニケーションとは、自分の気持ちや意見をはっきりと伝えると同時に、相手の気持ちや意見を尊重するコミュニケーションです。

アサーティブネスの4つの柱

アサーティブネスなコミュニケーションを支えているのは、「誠実」「率直」「対等」「自己責任」という4つの柱です。この4つの柱を意識することで口から出る言葉が変わり、コミュニケーションは自然とアサーティブネスなものになっていきます。

・誠実:自分自身に正直になることで、相手にも誠実になれる
・率直:遠回しではなくストレートに、相手に伝わる言葉にする
・対等:上から目線でも卑屈でもなく、態度も心の中も対等に向き合う
・自己責任:言った責任、言わなかった責任は、自分が引き受ける
※参考:特定非営利活動法人 アサーティブジャパン

アサーティブネスなコミュニケーション例

具体的に、どのようなコミュニケーションがアサーティブネスだと言えるのか、2つほど例をご紹介します。

●上司に急に仕事を頼まれたとき
帰り際に、上司の鈴木さんから「この仕事、お願いできるか?」と頼まれた山田くん。実はこの後、プライベートな約束をしていました。この場合、山田くんはどう答えれば、アサーティブネスになるでしょうか?

①「今日はできないので、別の人に頼んでください」
②「分かりました・・・」(予定をキャンセルして残業する)
③「今日は予定があるので退社します。明日の午前中なら仕上げられると思いますが、それでも大丈夫ですか?」

①は攻撃的タイプ、②は受身的タイプ、③がアサーティブネスなコミュニケーションだと言えます。山田くんは上司の主張を尊重しつつ、自分の主張を上手く伝えています。「YES」か「NO」で答えようとすると、コミュニケーションが窮屈になりがちです。常に「答えは無数にある」ということを頭に置いておきましょう。

●部下から仕事が間に合わないと報告を受けたとき
渡辺さんは、部下の田中さんから「明日の提案資料が間に合いません」と報告を受けました。この場合、渡辺さんはどう答えれば、アサーティブネスになるでしょうか?

①「明日、どうするつもりなんだよ!」
②「俺がやるからいいよ」(作りかけの提案資料を受け取り、作成を引き継ぐ)
③「田中ならできると思って任せたけど、ちょっと量が多すぎたかもしれないな。申し訳ない。今から酒井と分担することにするから、田中は◯◯の部分を明日までに終わらせてくれ。次回からは、間に合わないと思ったらもう少し早めに報告してくれよ」

①は攻撃的タイプ、②は受身的タイプ、③がアサーティブネスなコミュニケーションだと言えます。アサーティブネスの4つの柱に基づいた内容・表現をすると、このようになります。

アサーティブネスを意識してストレスのないコミュニケーションを

テレワークの拡大によって、今まで以上に「コミュニケーションの質」が求められるようになりました。対面でのコミュニケーションにおいても、遠隔でのコミュニケーションにおいても、相手を尊重しながら上手に自己主張をおこなう「アサーティブネス」は非常に重要です。

アサーティブネスなコミュニケーションは、心がけ次第で身につけることができます。4つの柱を意識して、ストレスのない有意義なコミュニケーションを推進していきましょう。